米空軍トップが記者クラブで変化の必要性訴え

National Press Clubで国民に問いかける
中国で発見の100個のICBMサイトで目を覚ませ
2035年には中国が軍事優位を奪われる

Brown Press C2.jpg6日、米空軍参謀総長のBrown大将がNational Press Clubで講演し、7月末にエコノミスト誌が衛星写真で紹介した中国の新しいICBMサイト約100個の事例をあげ、GBSD(新型ICBM)開発に理解を求めるとともに、一部米議員の反対で進まない旧式装備の早期退役と将来装備への予算配分に理解を求めました

Brown Press C3.jpgBrown大将は普段の軍事記者相手ではなく、プレスクラブとのより一般国民相手に語るチャンスをとらえ、中国が旧式装備から新型装備への入れ替えを積極的に進めていることも取り上げ、現状のままでは2035年頃には軍事力で中国が米国の優位に立つとの危機感をアピールしつつ、選挙区への利益誘導のため老朽装備の早期退役に反対する米議会の姿勢を浮き上がらせる手法で語っています

更に同参謀総長は戦闘機を例に挙げ、装備品の開発ペースが以前に比べ極端に低下していることを紹介しつつ、軍事予算が良くて横ばい状況が続いている状況では、「規模が大きくても空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢を望む」と語り、その変革を迅速に進める必要があると強調しています

6日付米空軍協会web記事によれば同参謀総長は
China ICBM silo.jpgエコノミスト誌が7月31日付で衛星写真を基に、中国の新たなICBMサイロ約100個の設置を報じているが、米国民が敵国の急速な変化を知るうえで良い機会となったと思う。米軍人が訴えても聞き入れてもらうのが難しい事実を、写真で明確に示してくれたことで国民の理解が深まることに有効だと思う
核抑止3本柱のICBM更新に関し、50年以上使用されているMinuteman IIIの延命使用を主張する議員がいるが、その主張の根拠には、中国の核戦力が大きくないとの仮定がある。しかし中国の新ICBMサイロ画像は中国の核増強姿勢を指摘している

私が空軍士官になった1984年当時は、2.5年に1機の割合で新型戦闘機開発が行われていたが、それ以後現在まで4機種しか新たに開発されていない状況が示すように、米空軍の変革は停滞しており、このままでは2035年頃には中国に軍事優位を奪われる
Brown Press C.jpgただ私は、空軍の規模が大きければよいの言っているのではなく、中国を撃退するためには適切な戦力構成が必要だと主張しているのだ。つまり、政治により旧式装備を大規模に保有させられている現状を捨て去らなければ変革は出来ない

一方で中国は、将来の戦いに関係が少ないと考えた装備を削減し、必要な新装備の導入を積極的に進めている。太平洋正面に最新の航空戦力を増強し、地域最大の通常兵器ミサイル能力を備えるに至っていほか、極超音速兵器部隊の構築も進めている
また中国は、南シナ海など緊要地域での基地増設を、目立たないように配慮しつつも着実に進め、中国本土の前進防衛拠点化を進めている

Brown4.jpg中国は最新のミサイルや航空機の数量を増強しつつあり、ミサイル射程も延伸しつつある。少なくとも中国と同等のペースで米空軍の変革を進めなければならない
米国は西太平洋で同盟国や友好国に頼っているが、それらの国に中国は経済的な嫌がらせを強化しており、そのような中で米軍は従来とは異なる不便で設備不十分な基地に分散して戦うことを習得する必要がある

米空軍は現在、歴史上で最も規模が小さく、かつ平均年齢が高い装備で運用しているが、「規模が大きくて空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢」を目指すべきであり、その中で中国に対抗できる新技術導入を追求すべきである
「小さくても能力の備わった態勢」を目指す過程では、A-10など単一任務しか遂行できない老朽装備を早期退役させ、厳しい環境でも多様な任務を遂行可能な新兵器に資源投入すべきである。またセンサーやシューターを繋ぐABMS構築にも精力を注ぐべきだ
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Brown参謀総長の率直な語りはいつも各方面と摩擦を生みますが、真実を率直に語ることを信条とする同大将の基本姿勢は不動で、まんぐーすも応援したいところです

Brown nomination.jpgただ、上記の主張が苦しいのは、それでも金食い虫F-35の大量調達(計1768機)姿勢を継続しているからです。

この点(戦闘機が装備調達の中心)に踏み込まないと、米空軍の真の改革は無いと戦闘機パイロット以外の誰もが考えており、これは戦闘機が支配する世界中の空軍に共通の課題です

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