米海軍がレールガン開発を事実上断念

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「2021年末で研究開発をPauseする」
2005年から15年開発を続けるも技術課題克服困難
極超音速兵器や電子戦装備に投資配分へ

Railgun10.jpg2日付Military.comは、米海軍が2005年開始のレールガン研究開発予算を2022年度予算から落としたことを受け、米海軍がレールガン開発を事実上断念したと報じ、「Pause:一時中断・停止」との表現で説明する米海軍関係者の言葉を紹介しています。過去に「Pause:一時中断・停止」状態から復活した例がないようですので、「終わった」ということでしょう

レールガンは、強力な磁界を砲身内に形成して金属の飛翔体を打ち出す兵器で、炸薬を爆発させて弾頭を飛ばす従来の大砲に比べ、安価に大量の飛翔体(弾頭)を艦艇に搭載でき、敵による各種ミサイルによる飽和攻撃を撃退したり、敵に対応の暇を与えない飽和攻撃を可能にするものと期待されてきました

railgun5.jpg具体的には、速度マック7以上、射程100nmで、連続発射が可能なものを目指していたようで、2018年時点で、少なくとも550億円以上を研究開発に投入した模様です

2006年に初期型のプロトタイプで試験が始まったものの、多くの技術的課題をクリアできないまま今日に至っており、主要な課題には、砲身が高速で射出される飛翔体との摩擦に耐えられず、耐久性が確保できないことや、更に必要とされる大電力の確保が容易でないこと等が挙げられていました

事実行開発断念の米海軍声明では
予算上の制約やレールガン戦闘システム構築の課題、更に他の開発兵器の技術的成熟度合いを総合的に勘案し、米海軍はレールガン(EMRG:Electromagnetic Railgun)の研究開発を2021年末をもってPauseすると決定した
このレールガン開発Pause判断は、国防省全体で進めている優先事業への資源集中や、エネルギー兵器・極超音速兵器・電子戦装備などの攻防能力強化改善に取り組む方針に沿ったものである

最後にご紹介した2017年7月末の時点では
Railgun-navy.jpg米海軍は、唯一レールガン用の大電力確保の可能性があるDDG-1000 Zumwalt級駆逐艦にレールガンを搭載する予定であったが、いつ実現できるかは定かでない
しかし米海軍研究室ONRは、夏から来年にかけ、飛翔体打ち出しパワーを「32 megajoules」にすることや、連続発射速度を1分間に10発発射可能にすることを目指している

開発責任者は、発射のパワーを「32 megajoules」にすることにより、発射された飛翔体の射程が「約110nm」にまで延びると説明している
発射機の砲身(barrel)に新たな複合材を準備し、射出パワーアップと時間当たりの発射弾数増加に備えており、「パワーと発射速度の目標達成は、来年には可能になるだろう」と語っている

Railgun7.jpg未解決の課題は、一つが飛翔体と砲身の摩耗に対するレールガンの耐久性が不十分なことである。開発責任者は、「システムのパーツをより長寿命なものに変えて取り組んでいる」と語り、「最初のころは数十発でダメになっていたが、最近では400発は射出可能で、将来的には1000発に耐えられるまでにできると考えている」と自信を見せた
もう一つの課題は、大量の電力確保である。レールガンが大量の電力を必要とするため、現時点ではZumwalt級駆逐艦にしか搭載できない

関係者は電力確保について、「レーザー兵器にも当てはまる課題」、「7月に着上陸用輸送艦Ponceにレーザー兵器を搭載して試験した際も、艦艇の電力でなく、特別な電源装置を持ち込んで発射を可能にしていた」と事例を紹介し、「発電と蓄電の課題は、我々の全ての研究開発計画の構成要素(課題)となっている」と語った

2018年にRichardson海軍作戦部長は米議会で
Railgun12.jpg(レールガンは)多くの関連技術開発を必要としているが、未だ完成をお約束できる技術レベルに成熟していない
飛翔体も制約事項を抱え、その製法や大電力や熱や圧力に耐える材料の面でも多くの課題を抱えている
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レーザー兵器と同様に、「いつまでたっても、あと5年で完成」と揶揄されてきたレールガン開発ですが、ついに決断の時を迎えました

Railgun11.jpgしかし2017年7月の記事での開発関係者の説明ぶりは、今の開発事業でも耳にするような表現で、変に「慣れ親しんだ言葉」に聞こえます

ちょっと気になるのが、2018年頃にSNS上で出回った「世界初のレールガン搭載試験艦」と名乗りを上げた中国海軍揚陸艦「黄山」の状況です。その後どうなっているのでしょうか?(最後の写真2枚)

レールガン関連の記事
「中国が世界初のレールガン搭載艦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-02-03
「依然、摩擦と電力確保が課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-30
「期待の星レールガンの現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-27
「Work副長官の指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「Zumwalt級駆逐艦を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-22

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