初飛行でいきなり130分間のフライト
Kratos社の試験機「Mako」にACSを搭載して
5日米空軍は、4月29日にフロリダ州Tyndall空軍基地を拠点とし、無人ウイングマン構想で当該無人機の頭脳となる自立飛行システム(ACS:autonomy core system)を搭載した無人機が、約130分の初飛行を実施したと発表しました
ACSを搭載しての初飛行を実現したのはKratos社の「UTAP-22 Mako」との試験用無人機で、同社が無人ウイングマン構想の試験機としてこれまで飛行させてきた「XQ-58A Valkyrie」より小型でシンプルそうな機体ですが、縦横6mx3m、高度5万FTまで飛行可能、機体内外に約800ポンドの搭載物が積め、更に両翼にそれぞれ100ポンド搭載可能との機体で、最高速度マック0.9、航続距離1400nmと立派な航空機です
米空軍は、F-35やF-15EXとチームを組んで、有人機にはリスクが高すぎる任務を遂行可能な「a family of Skyborg drones」の開発を計画しており、昨年12月にKratos社と共に、ボーイングとGeneral Atomicsの3社とそれぞれ別々に、同構想のデモ機開発契約を結んだところでした
米空軍は同様の飛行試験を今後数か月で行い、3企業と契約して並行作成させているデモ機が5月末には出来上がってくることから、デモ機も活用して更にACSを成熟させていくものと考えられます
5日付Defense-News記事によれば
●米空軍は初飛行について、「ACSは基礎的な飛行能力を披露し、地上からの指示にも対応しつつ、機体の飛行性能を考慮した地形対応の飛行を実現した」と表現し、担当のDale White准将は「開発初期段階のACSによる初飛行に興奮するとともに、今後のSkyborg技術(無人ウイングマン技術)確立に向けたマラソンのような道のりの第一歩だと認識している」と語った
●また、「自立型システムがその能力を示した初飛行となったが、今後も有人機である戦闘機と編隊を組んで作戦行動可能なレベルを目指し、複数の機体で能力を実証していきたい」と声明を出している
●今回ACS初飛行の受け皿となった試験機「UTAP-22 Mako」を製造したKratos社CEOのEric DeMarco氏は、「Mako はXQ-58A Valkyrieと並ぶ試験用無人機で、多様な顧客の多様なニーズに応え、様々な開発中の装置を搭載して試験飛行が可能で、電子戦センサーや妨害装置、様々なセンサーなど、攻防両方のシステムの試験に活用いただいている」、「MakoやXQ-58A Valkyrieで事前確認しておくことで、他の無人システムにも円滑に搭載することが確認できる」とアピールしている
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この初飛行には、多くのジャーナリストやシンクタンク研究者が招待された模様で、米空軍はその取り組みを懸命にアピールしています。
Skyborg構想(無人ウイングマン構想)については、4月上旬に多用途ドローンの投下試験に成功した際も、米空軍がメディア宣伝に力を入れていましたので、「秘密主義で米議や世論へのアピール・説明不足」との汚名挽回を期し、取り組んでいるのでしょう
また試験が行われたフロリダのTyndall空軍基地は、2018年10月に巨大ハリケーンの直撃で壊滅的被害を受けた基地でもあり、復興をアピールする狙いもあったと邪推いたしております
無人機ウイングマン構想
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-06
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-09
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-21
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3
「米軍が施設への自然災害で予算枯渇」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-24