皆が期待する国防長官最有力候補だったのに・・・
今もお元気そうで何よりです
29日、バイデン政権の国防長官最有力候補だったMichèle Flournoy女史(CNAS共同創設者)が、パネッタ元国防長官や陸海軍参謀総長と共にネットワークの重要性を議論するパネル討議に登壇し、どのように中国を抑止すべきかについて語っています
ご存じのようにFlournoy女史は、有力シンクタンクCNASの共同創設者で、その後オバマ政権下で国防省NO3の政策担当次官として活躍し、バイデン政権誕生決定時には、専門家の10人いれば9人は次期国防長官最適任者として名を上げていた人物で、実務能力及び見識及び経験を全て備えた史上初の女性国防長官確実と追われていた女性です。
しかし、なんかよくわからない理由で指名直前に候補から外れ、初の黒人Austin長官が誕生して以来、動静を耳にすることはありませんでした。フロノイ女史が候補から外された背景には、「米産軍複合体の闇を感じる」との噂や話をあちこちで耳にしたところです・・・
そんなFlournoy女史が久々に公の場に登場ですので、断片的ですが、対中国に関するお考えを改めてご紹介しておきます。
なお、同女史のお考えは、以下の二つの記事でもご紹介をし、多くの方にご覧いただいておりますのでご参考に。予算争いが激しさを増し、何が何かわからなくなっている、米国軍事戦略&戦術の方向性を示した、筋の通った考え方がそこにはあります
フロノイ女史の思考
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
29日付米空軍協会web記事によれば
●3月29日、The Hill主催のwebイベントに参加したMichèle Flournoy元政策担当国防次官は、中国は米国が国家として下り坂に入っていると確信しており、そのような考え方のもとに中国が誤った行動を起こさないよう、米軍内の連接性を向上させる等の未来志向の投資を活性化し、同盟国へのコミットを確かにしなければならないと訴えた
●そして、「米国は中国に対し、コロナ禍から立ち上がり、地に足の着いた歩みを取り戻したことを示す必要があり、このため先ず国内諸問題に対処しなければならない」、そして「早期にカギとなる米軍の近代化や改革につながる技術分野へ投資する姿を見せることで、米国が世界のリーダーシップから後退しているとの見方により強く対処しなければならない」と主張した
●更にフロノイ氏は、「最近行われた全てのウォーゲームやシミュレーションは、私の知る限り、現在の形態の米軍では次世代の軍事優位を維持することはできないことを示している。我々は抑止力を徐々に失っている状況にある」と警鐘を鳴らした
●また、「米軍は旧態然とした伝統装備に投資しすぎており、将来の厳しい戦闘環境下で生き残り、たくましく連携しながら機動し、戦い続けるような陸軍部隊や戦闘機部隊や海軍艦艇を生み出す次世代技術に十分投資していない」と問題点を指摘した
●中国の軍事ドクトリンは「我が指揮統制、移動、通信、目標照準能力をダウンさせることで、交戦前に戦いを決着させる方向を目指しており、米国はこれに対処するため、強靭な全ドメイン指揮統制ネットワーク網を求められている」と現状認識を示し
●最後に、「今後40年間の対中国抑止能力を確保しようとするならば、米国防省は今後4年間に賭けて、必要分野に重点投資しなければならない」と訴えた
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同webイベントでパネッタ元国防長官は、中国が莫大な投資を5GやAI分野に投資を行っているのを横目で見ながら、それらの重要性を認識しながら、米国として十分な投資を行ってこなかった現実を直視すべきと語り、米国は中国に5GやAI分野で明白に後れを取っていると現状認識を示しています
ただバイデン政権はその遅れを認識し、新技術への投資の必要性を認識しているとし、時間が必要だが、民間企業が国防上重要な分野に投資が進むようなインセンティブを与えるべきとの意見を述べています
残念ながら、陸軍と空軍の参謀総長は、遠方攻撃を巡る縄張り争いに関し、互いに議論に踏み込まない姿勢を示し、「それぞれに考えがあるが、4軍として一丸となって戦う」とその場しのぎの発言で終わっています
国防省内は混乱を極めており、中国の言う「下り坂の米国」を象徴するような状態ですが、本日は、良心的な政権外部の有識者から見た、米軍の対中国の現実とあるべき方向性をお伝えしました
フロノイ女史の思考:Biden政権の国防長官最有力候補だった
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06