新型トマホーク「Block V」を5つの視点で:まだまだ活躍

亜音速の大ベテラン兵器を馬鹿にするなかれ
この射程距離と低コストの魅力は捨てがたし

Tomahawk V.jpg14日Defense-Newsは、12月に米海軍が発射試験を行ったばかりの最新型トマホーク巡航ミサイル(Block V)の特徴を5つの視点で紹介し、極超音速兵器開発に米軍がこぞって全力を挙げる中でも、トマホーク、SM-6、Naval Strike Missileの3種類は、当面組み合わせて使用され、米海軍の貴重な戦力であり続けるだろうと紹介しています

開発中の最新型トマホークBlock Vは、Va型とVb型が製造される方向で、Va型が海上移動目標対処能力を備えるMaritime Strike Tomahawk (MST) で、Vb型はJMEWS弾頭を搭載して貫通力を強化したバージョンになるようです

以下では5つの視点から、亜音速でもまだまだ活躍が期待される、射程2000㎞越えのトマホークBlock Vをご紹介しておきます

14日Defense-News記事によれば
1.能力強化
Tomahawk Maritime.jpg上述のように、新しいシーカーや弾頭を搭載し、Va型とVb型となって、より広範な攻撃能力を提供する。水上艦艇のVLS垂直発射管からだけでなく、潜水艦からの発射可能な点も重要である
中国の中距離弾道ミサイルDF-21の射程が約2400㎞で、DF-24に至っては4500㎞と言われる中、米軍にとってトマホークの2000㎞級の射程距離は極めて重要

2.残存性強化
Block Vでは通信能力や航法能力が強化され、敵の電子妨害への対処能力が向上し、また電波放射を改善して敵から発見される可能性も低下でき残存性が向上する
また恐らく、Block Vは攻撃目標となる敵防空レーダーを妨害して、自らの残存性を高める機能を有している
更に、2017年にレイセオン社のBlock V責任者が、GPSがダウンした状態でも、優秀な航法システムで攻撃任務を完遂できると語っている

3.亜音速飛行の利点は
Tomahawk V3.jpg超音速や極超音速兵器が話題の中心にある時代にあって、トマホークを時代遅れのように見る向きもあるが、トマホークが今後も活躍するには理由がある
まず、亜音速飛行することで燃料消費が抑えられ、射程距離を伸ばすことが出来る点である。仮に超音速ミサイルでトマホーク級の射程を得ようとすると、ミサイル自体が巨大化し、扱いが難しくなる

4.低価格が大きな魅力
トマホークは1発1億円程度だが、音速の3.5倍の速度を持ち、将来は極超音速飛行を目指すSM-6の現在価格はその4倍で、なおかつ射程は検討中の射程延伸型でも300㎞程度である
Tomahawk V4.jpgトマホークの価格だと大量購入が可能で、敵の防空網での損耗があってもそれほど痛くはなく、低価格は最大の特徴であり、長射程と併せ、将来も米海軍が使用し続けると言われる最大の理由である

次の大統領が「あのテロ組織訓練キャンプを叩き潰せ」と命じたなら、米軍はトマホークを一番に用いるだろう

5.兵器の多様性
超音速や極超音速兵器が注目される中でも、安価で射程2000㎞越えのトマホーク(大型艦のVLS搭載)と、射程200㎞程度の対艦ミサイルNaval Strike Missile(沿岸戦闘艦や新型フリゲート艦に搭載) 、本来艦艇防空用のミサイルを対艦用にも使用可能としたSM-6の3種類混合体制が、多様な場面に対応するのに有効だろうと専門家はコメントしている

SM-6 2.jpg将来的には、3軍が協力して取り組む国防省優先事業の極超音速ミサイルが完成し、艦艇の垂直発射VSLに搭載できるようになれば、トマホークに頼る割合は低下するだろう
ただし、極超音速兵器の成熟にはもう少し時間が必要だろう事から、(予算的な制約もあり)、米海軍のミサイル3種ミックス体制は、従来想定されていたより長く続くだろう
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「Block V」というより、トマホーク自体の存在意義をご紹介した形になりました
SM-6とNaval Strike Missileの特徴や用途を把握していないので、舌足らずのご紹介となりましたが、B-52爆撃機のように、末永くトマホークは改良されつつ活躍するのかもしれません

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