米国防省の核戦略担当次官補代理が語る
B61-12でOK、後は潜水艦発射W76-2弾頭で!?
3か月前の9月2日、米空軍協会ミッチェル研究所主催のオンラインイベントに登場した米国防省のRobert Soofer核戦略担当次官補代理が、「米空軍は既に核兵器運用や核抑止に関して十分なシェアの役割を果たしており、空軍に核に関してこれ以上お願いする必要性はないと考える」と語りました
実際米空軍は、ICBMミニットマンⅢをN-グラマン社「Ground-Based Strategic Deterrent」への2020年代後半更新に着手し、2020年代半ば運用開始のB-21ステルス爆撃機の開発を進め、核搭載も狙う巡航ミサイルLRSOを2026年配備に向け開発中で、更に戦術核爆弾B61の後継B61-12(20キロトン以下)を2022-25年の間で調達する予定の大忙し状態です
ただ本音としては、欧州諸国にも保管をお願いしている現有の戦術核は政治的意味合いもあり機種更新して現状維持も、ロシアや中国の強固な防空網や攻撃能力を考えると、米空軍航空アセットからの戦術核投射リスクは高まるばかりで、代わりに2019年末に配備が始まった潜水艦搭載戦術核弾頭「W76-2 弾頭」(5キロトン)に期待するとの意味を込めた発言だと思います
以下では、同次官補の発言とあわせ、通常戦と核戦争の区分が益々あいまいになりつつある中で、米空軍の対応を検討している米空軍司令部のRichard M. Clark核戦略担当部長(中将)による8月19日の情勢認識説明もご紹介しておきます
2日付米空軍協会web記事は次官補発言について
●米国防省のRobert Soofer核戦略担当次官補代理は、「米空軍は既に核兵器運用や核抑止に関して十分なシェアの役割を果たしており、私としては空軍に核に関してこれ以上お願いする必要性を感じない」と語り、米海軍が2019年末から潜水艦への配備を始めた戦術核「W76-2弾頭」を補完するため、米空軍が追加で更に現在より小さい戦術核を保有する必要はないと示唆した
●ちなみに、米海軍が2019年末に配備を開始した戦術核「W76-2弾頭」は「5キロトン」で、SLBM用戦略核の「W76-1 90キロトン」や「W88 455キロトン」、空軍が今後製造する戦術核B61-12の20キロトン以下よりも小さく、広島・長崎に投下された原爆の1/4程度である
●なお、今後の核兵器については、使用の柔軟性を確保するため、状況に応じて破壊力を調整(dial a yield)可能な能力が重要になると言われている
8月19日付米空軍協会web記事はClark中将発言を
●8月19日、米空軍司令部のRichard M. Clark核戦略担当部長(中将)は同じくミッチェル研究所のイベントで講演し、通常戦と核戦争の区分が益々あいまいに流動的になりつつある中で、約1年半にわたり米空軍の新たな核兵器戦略を検討していると語った
●同中将は、30年前にはソ連との間の核抑止を考えればよかったが、核戦力を強化している中国や行動が読めない北朝鮮など、核兵器の使用を一つの兵器としか見ない考え方の台頭で、核戦略を取り巻く情勢が複雑になりつつあることを指摘し、「通常戦と核戦争の融合:conventional and nuclear integration」検討を迫られていると説明した
●ロシアは地域的な戦いの場で、そのドクトリンや能力、戦術核を蓄積している様子から、明らかに(戦術核の使用を)作戦計画や戦略プロセスに組み込んでいると同中将は分析した
●また中国に関し同部長は、核戦力の近代化更新を進めているが、これまで曖昧ながら基本としてきた「先制核攻撃はしない」姿勢から今後離れ、自身の防御のためには「Launch on Warning:我への危機が迫れば使用する」方向に向かうと見ていると述べた
●さらに北朝鮮については、通常戦に核兵器を持ち込むカードを切る考えを持っていると語った
●そして同部長は、核兵器を保有することで相手を抑止することが引き続き最優先であるが、中露北朝鮮などは通常戦力で米軍に圧倒されていると認識し、他の手段での対抗しようとしており、抑止が崩壊した場合に備える体制が米軍にとって重要だと説明し、核兵器運用に関する指揮統制、訓練、技術などすべてを刷新して複雑な情勢に対応する必要があると述べた
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これまで戦術核については、欧州の戦術核を、ドイツ軍のトーネード後継検討や在ドイツ米軍の削減などを絡めてご紹介してきましたが、やっと米海軍が潜水艦に新たに配備開始した戦術核「W76-2弾頭」の話にたどり着きました。
基礎知識不足で誤って紹介している部分がありそうですが、日本で核兵器の話となれば、被爆者団体や核実験反対団体しかメディアに登場しない「思考停止状態」なので、誤りを覚悟で取り上げております
「核兵器の時代に核兵器を持たないと馬鹿になる」と誰かの言葉を振りかざすつもりはありませんが、サイバー兵器も宇宙兵器も出現し、その影響が国家運営や国民生活に甚大な影響を与える時代です。核兵器も含めた実のある議論をしたいものです。健全な判断ができる国民の存在こそが、国家安定の最大の担保ですから・・・
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