国防省が2020年「中国の軍事力」報告書発表

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過去10年間で最も遅い時期の発表です

2020 China report.jpg1日、米国防省のChad Sbragia中国担当次官補代理がAEIで講演し、同日発表の中国軍事力に関する年次レポート(今年は昨年から33%増しの200ページ)の内容を紹介しました

私の知り限り、この重要なレポートの発表会見がペンタゴン以外で行われたことはなく、共和党系のシンクタンクAEIが場所に選ばれたのがなぜなのか不明です。「コロナ」の影響で、場所を選んだとでもいうのでしょうか?

200ページの報告書を読む気力がなく、日本時間の2日に幾つかの報道を見たのですが、中国海軍に関する記述が「艦艇数が350隻で世界一」との記述程度で、核戦力やミサイルや空軍に関する記事内容が多く、本日はとりあえず報道が取り上げた部分をご紹介します。今後中国海軍に関する部分が見つかれば追記します

1日付米空軍協会web記事等によれば
●中国の軍事費は22兆円で、昨年から6.2%増加している。中国のGDP成長率は10年前の9%から現在は7%に減速しているが、国防費は過去10年間で倍増している
Sbragia2.JPGなおかつ、米国の国防費の2/3が人件費や医療費や年金に投入されるのに対し、中国の国防費は大半が装備購入費や作戦運用費に投入され、更に米国製兵器システムが中国より高い人件費や開発費で高価な半面、中国は安価な労働力と不正な手段による技術入手による低い開発費の恩恵を受けている

中国が自身が2049年までに「世界レベルの軍隊」を持つとの目標を掲げている具体的意味は不明だが、ペンタゴンは、2035年までに中国軍の基礎的近代化を完了し、米国を今世紀半ばに凌駕するだろうと分析している。これには統合作戦能力向上や官民の軍需産業ベースの協力関係強化による国家としての「dual use」生産能力向上も含まれている
海外拠点に関し、中国はアフリカのジブチに拠点を確立しているが、その他にもMyanmar, Thailand, Singapore, Indonesia, Pakistan, Sri Lanka, United Arab Emirates, Kenya, Seychelles, Tanzania, Angola, and Tajikistanで拠点を確保すべく、「一帯一路」構想の推進に合わせ何らかの働きかけを行っている

中国海軍は「世界一の規模である」と同レポートは表現し、米国が293隻のところ、中国海軍は大型水上艦艇130隻を含む350隻を保有している点を強調している
H-6N.jpg地上発射の弾道ミサイルや巡航ミサイルに関しては、中国は500-5500㎞射程(INF全廃条約が規制していた範囲)の同兵器を1250発保有しているが、米国は300㎞以下のものしか保有していない

中国は空中発射巡航ミサイル能力にも力点を置き、H-6爆撃機改良型が搭載可能となり、無人偵察機の射出と合わせた能力向上を済ませている。またH-6N型は初の核兵器可能で空中給油能力がある機体であり、これにより中国も核の3本柱を得たことになる
関連で戦略ミサイル原潜SSBNに関し、中国海軍は094型原子力潜水艦(晋級)4隻をすでに運用し、新たに2隻が製造最終段階にあるとし、更に2030年までには開発中の096型(唐級)を合わせて8隻体制になる可能性がある

094 SSBN.jpgなお中国SSBNは射程7500キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪2(JL2)」を12発搭載でき、中国南部の海南島の亜竜湾海軍基地に配備されている。中国が南シナ海の支配を狙うのはSSBNの聖域を確保することが大きな理由の一つだと言われている
防空能力はロシア製S-300やS-400を配備することで世界最高レベルにあり、これに国産防空システムを加え、更にまもなく弾道ミサイル防衛能力も加わることになる。「強力でで重層配備されている」とレポートは表現している

中国海軍と空軍の戦闘機は、保有計約1500機の半分が4世代機に更新され、練習機なども含め5年程度で4世代クラスに置き換わる。他にステルス性を持つ攻撃機J-20の搭載兵器を拡大されつつ最初の部隊に増強され、ロシア製最新鋭機Su-35も20機以上購入済である
西側のF-35そっくりなFC-31/J-31は、国内用と輸出用が生産中であるステルス戦略爆撃機については国防省の評価は記載せず、外部専門家の「開発には10年以上かかるだろう」との言葉を紹介しているのみである

KJ-500.jpg無人機については多様なタイプが輸出用も含め製造されており、米軍のRQ-4やMQ-9そっくりなものも含まれるほか、米海軍が開発に取り組んだ無人ステルス艦載機X-47に似たGongji-11が昨年の軍事パレードに出現している。他に軍事パレードには、西側軍が保有しない電子戦や高速攻撃を想定した無人システムが登場していた
早期警戒管制機にも進展が見られ、従来のKJ-200やKJ-2000より処理能力や全天候性や探知距離が向上したKJ-500の導入が加速している

ロケット軍(以前の第2砲兵)は米軍の戦略軍に似た役割を持つが、2019年には中国以外の全世界の国が行った弾道ミサイルテスト数より多い発射試験を、中国ロケット軍が行っている。核搭載も可能な射程4000㎞級のDF-26などの中距離弾道ミサイル数も増えており、大陸間弾道弾も多弾頭化がさらに進んでいる
米本土を射程に収めるICBMに搭載可能な核弾頭数も、今後5年間で200発にまで増加し、「launch on warning」態勢に移行すると国防省は予測している

DF-26 4.jpg米国の民間企業SpaceXやBlue Originが軍事衛星打ち上げにも参入し、民間需要にもこたえている様子をまねるように、中国でも「Exspace」社がスタートアップとして出現し、官民両市場で頭角を現している
中国はまた、人工知能、量子コンピューター、自動化、量子情報科学、先端材料や生産技術にも大きな投資している
中国は、情報戦、心理戦、サイバー戦の融合を図り、一つのコマンド内に統合させようとしている。また、技術情報を窃盗するだけでなく、米国や西側の文化機関、メディア、企業や学会や政策研究機関にも巧みに接近し、「中国の代弁者」を確保し囲い込もうとしている。米国はこのような影響力作戦に狙われやすい
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ご興味のある方は、200ページの現物をご覧ください
https://www.airforcemag.com/app/uploads/2020/09/2020-DOD-CHINA-MILITARY-POWER-REPORT-FINAL.pdf

米空軍トップが「米軍は急いで変わらなければ勝てない」との冊子を発表配信したように、中国の軍事力は急速し増強され、南シナ海や尖閣付近での行動に見られるように行動も過激さを増しています
中国により近い日本は、「変わらなければ、何もさせてもらえない」ぐらいの状態に置かれていると考えるべきでしょう

米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2019年版」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-06
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません

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