米国のB-21次期爆撃機と極超音速兵器の開発状況

共に2021年に開発試験が山を迎える最重要装備です
B-21次期爆撃機と極超音速兵器(Hypersonic weapon)です

B-21 3.jpg余り明るい話題のない米国防省ですが、8月の夏休み前に、極めて重要な新装備開発である「B-21ステルス爆撃機」と中露に後れを取る「極超音速兵器(Hypersonic weapon)」に関する、期待を持たせる開発状況ニュースが入っていましたので、休み明けの憂鬱な皆様に提供させていただきます

次期爆撃機B-21は、F-35やKC-46Aと並ぶ3大重要事業と呼ばれ、2020年代半ばに運用開始予定、強固な防空網を突破可能な性能(ステルス等)、1機約600億円($550million)以下、80-100機製造、無人機もあり得る(正式にはoptionaly manned)、既存成熟技術を活用して開発リスクを避ける等々の方針で進められていますが、2018年12月に「重要設計審査:critical design review」を終了したとの発表がありましたが、細部については公開されていません

B-21 bomber.jpg2019年7月、開発を担当するNorthrop Grummanのフロリダ州の工場を視察した後、米空軍副参謀総長Stephen Wilson大将が講演で、初飛行は「863日後だ」(2021年12月3日)と語り開発の順調さをアピールし、2019年秋に格納庫らしき場所で撮影された写真1枚が公開されましたが、その後は再び秘密の闇に入っています

そんな中、13日付Defense-News記事によれば
米空軍RCO(緊急能力開発室:Rapid Capabilities Office)トップのRandall Walden氏は、コロナの影響を受けてはいるが、「全ての困難で重要な設計段階や、難しい製造問題は全て解決済みの過去の話となっている。現在は実際に機体を製造し、飛行試験に進むことに集中している」と計画の進捗に自信を示した
LRS-B NG.jpg同室長はコロナでいくつかのサプライヤーが影響を受け、例えば機体を担当する「Spirit AeroSystems社」は、ボーイングのB-737MAX製造中止を受け会社全体が危機に直面しているが、旅客機部門の人材をB-21に配置転換して全力対処しており、試験機の製造を進めていると説明した

8月3日、同室長はエスパー国防長官と共にB-21試験機が製造されている加州PalmdaleのNorthrop Grumman工場を訪問したが、国防長官は計画の進捗に大変満足していたと訪問を振り返った
同室長はまた、既にB-21搭載予定システムの一部を他の航空機に搭載して飛行特性やソフトの確認を開始していると説明したが、昨年7月に空軍副参謀総長が初飛行予定が2021年12月と述べたことに関しては、最も早い初飛行の可能性日程だと慎重に語って
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極超音速兵器(Hypersonic weapon)は、当初開発に取り組んだ2011-12年頃に予算不足もあり研究が頓挫した経緯があり、軍需産業側の態勢や運用部隊の整備などが遅れていました

hypersonic5.jpg中国やロシアが既に部隊配備を完了と主張していることから米議会や専門家から早期装備化要求が厳しく、米国防省として最優先事業として実用化を急ぎ、国防省が3軍でばらばらだった開発計画をまとめ、3軍が共通使用するボディー部分「C-HGB:Common-Hypersonic Glide Body」(弾頭、誘導システム、ボディー内配線、熱防護シールドで構成)の開発を全力で進めました

その結果2020年3月には、2017年10月に続く「C-HGB」の2回目の飛翔試験がカウアイ島で実施され、超超音速飛行で予定通り着弾して成功したと伝えられています。この成功を受け3軍はそれぞれに、地上・艦艇・航空用ランチャーや関連システム開発を進めており、それぞれ陸2023年、海2023年、空2022年配備を目指して開発が行われているところです

米陸軍の状況:5日付Defense-News記事によれば
Hypersonic3.jpg5日、米陸軍で極超音速兵器やエネルギー兵器等の迅速開発配備を担当するNeil Thurgood中将は、2023年部隊配備との野心的な計画を実現すべく、米海軍と協力し2021年には年間3回の「C-HGB」発射飛翔試験を計画しているとDefense-Newsに語った
同中将は「年3回の試験計画は非常に野心的なものであるが、中国やロシアの動向を見るに、我々は積極的に動かざるを得ない」と述べ、2023年に「Block I version」を配備するために全ての試験に明確な目的があり、飛翔距離、スピード、誘導正確性などを設定していると説明した

この野心的な試験ペースを成立させるため、国防省ミサイル防衛庁を含めた複数の他機関から応援を得て複数の試験チームを設け準備を並行して行わせている、と同中将は説明している
一方で本開発の資金面について同中将は、国防省がすべての資金を出してくれるわけではなく、開発リスクを局限するように見積もりつつ、陸軍の資源を有効活用できるよう、一つの試験で並行していくつかの課題に挑戦することになると説明した

米空軍の状況:10日付Defense-News記事によれば
Hypersonic2.jpg8日、米空軍がロッキードと開発を進めている極超音速兵器ARRW(AGM-183A Air-launched Rapid Response Weapon)に関し、最後の「captive-carry試験」を実施し、テレメトリーやGPS信号を地上に送信することに成功したと、米空軍第412試験飛行団が発表した
ARRWの「captive」弾はB-52爆撃機に搭載され、B-52とARRWの融合適合も併せて確認され、今年後半に予定されている最初の「Booster Test Flight」に向けた一つのヤマを越えた、と試験担当幹部は語っている

昨年6月、ARRWは同じくB-52に搭載され、空気抵抗や飛翔時の振動に関するデータを収集しており、8月5日の試験と合わせ、今年後半の初の空中発射試験に向けてチーム全体の士気が高まっていると関係幹部はコメントしている
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Hypersonic4.jpg米国防省全体としてネガティブなニュースが多い中、数少ない「順調」を伺わせる話題ですのでまとめてご紹介しました。共に計画通りなら、2021年末には初飛行や複数の発射試験の結果が出ているはずです。期待いたしましょう

ただし、B-21開発に関してRCO室長のWalden氏が、「試験飛行を行って初めて明らかになる問題点が、新型機には必ず存在するから、我々はそれを乗り越えなくてはならない」と述べているように、まだまだこれからが開発の山場です

極超音速兵器(Hypersonic weapon)に関しても、3軍共通のボディー部分「C-HGB」の飛翔試験が、2年半ぶりに3月に実施され、一度成功しただけですから、まだまだ道は長いと考えるべきでしょう。

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「2021年12月3日初飛行予告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-29
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「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
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「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
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「ロシア第3の超超音速兵器3M22 Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
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「プーチンが超超音速兵器を大自慢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-26
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
予算不足で中断した頃の過去記事
「PGSに少し光り??」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-18
「パネッタ長官はPGSに期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23

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