エスパー長官肝いりで年末までに
前線と後方の線引きをなくすが合言葉
14日付Defense-Newsが、米国防省がエスパー国防長官の肝いりで年末完成マストで精力的に取り組む「新たな統合作戦コンセプト:a new joint war-fighting concept」作成について取り上げ、将来の予算編成にも直結するコンセプトについて、John Hyten統合参謀副議長とVictorino Mercado戦略計画担当次官補の言葉を紹介しています
Hyten副議長が「私が軍人として経験した全てと相反するコンセプト」、「前線と後方の区別をなくす」と語れば、Mercado次官補は「過去4軍を束ねるような作戦コンセプトは一度も存在しなかった」、「(策定中の統合コンセプトは)各コマンドの見積もりを束ね今後の投資を形作るもの」と述べるなど、米軍の装備や作戦運用を予算制約がある中でも大きく変革しようとの意気込みを感じさせてくれます
ただ、完成したコンセプトを公にするかについては、広く変化を知らしめることのメリットと、中国やロシア等に知られることのデメリットの釣り合いをよく考えて今後検討されるだろうと述べるにとどまっており、想像をたくましくするしかないような気配もしますが、「同盟国」も巻き込むような話しぶりもありますので、日本で最近話題の「敵地攻撃(策源地攻撃)」との関係も邪推しながらご紹介します
14日付Defense-News記事によれば
●12日、ハドソン研究所での講演でJohn Hyten統合参謀副議長は「新たな統合作戦コンセプト」について、「私が軍人キャリアで行ってきた全てと全く異なる方向性のコンセプトで、一番大きな違いは、従来存在した前線と後方を区別するような境界線がなくなることだ」と表現し、数10年続いてきた伝統的な考え方を捨て去ることを要求する考え方だと述べた
●従来のコンセプトについて副議長は、「ここまでが作戦エリアで、前線ラインがここで、陸軍がここで、空軍はここで作戦すると区分して考えてきた」、「ラインを引いて地域を分割して全ての作戦を計画してきた」と説明した。
●しかし新コンセプトについて同大将は、今後の強固に防御され地域においては「地域を区分してきたラインが消え去る」と表現し、今後作戦に参加する全ての部隊は、統一された指揮統制を受けつつ、自ら自身を防御しつつ、同時に敵奥地を遠方攻撃(deep-strike)でき、敵をくぎ付けにする必要があるとし、「海軍部隊も、空軍部隊も、海兵隊部隊もだ」と述べた
●更に副議長は、同盟国もそうであるべきと述べ、多国籍編成は同盟国等も一体となって融合して行動できることで可能となるとし、このためには開発中の統合全ドメイン指揮統制能力の獲得が必要になるとも説明した
●Hyten副議長の講演に先立ち、13日にVictorino Mercado戦略計画担当次官補は記者団に対し、「これまで米軍は各軍種が別々のコンセプトを持って戦っていたようなもので、4軍が一体となって戦うようなことは一度もなかった」とまで表現し、新たな作戦コンセプトが画期的なものであることを強調した
●そして同次官補は新作戦コンセプトについて、我々の将来投資のいくつかを直接司り、各コマンドのレビューや米海軍の艦艇建造計画等も結び付けることになると述べ、指揮統制も、兵站要領も、ある程度共通のものを新コンセプトで規定し、ギャップを埋めるものだとし、今存在すればよかったのに・・・ともつぶやいた
●同副議長も同次官補も、エスパー長官が設定した年末までの新コンセプト完成に自信を見せたが、国防省が完成した新コンセプトの詳細を公開するかに関する質問に対して同次官補は、「新コンセプトを広く共有すべきとの観点はあるが、作戦上の秘密として扱うべきとの観点も踏まえ、慎重に発言すべきと考える」と対応した
/////////////////////////////////////////////////////////
9 月末までにまとめる米軍部隊の世界的再編検討と並行して、年末までの「新たな統合作戦コンセプト:a new joint war-fighting concept」検討が進められてきたものと推測します
また、同盟国にも「自身を守りつつ、敵奥地を遠方攻撃(deep-strike)」を求める方向の影響を受け、最近日本でも「敵地攻撃(策源地攻撃)」という議論が突然吹きあがってきたと邪推いたします。
米大統領が、米政権が、変わっても方向性は変わらないのか気になりますが、エスパー長官の決意は固いようです。
米国防省が実施中の「世界的な米軍再編」検討の一環で、ドイツ駐留米軍削減が発表され、在韓米軍削減検討も進む
「ドイツ駐留米軍削減が発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「在韓米軍削減検討も進む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-22