18か月間の「phase 1」開始
4つの分野に分け担当企業と契約
6日、米国防省の研究開発機関DARPAが取り組む空中戦に人工知能を活用するプロジェクトACE(Air Combat Evolution)の担当企業の一つに、「Dynetics」が選ばれたと同社が発表しました。
昨年5月、DARPAが説明したACE構想によれば
●空中戦を中心とした航空作戦全般に人工知能AIを導入し、操縦者の負担を軽減して他の大局的な判断に集中させることを狙いとするもの。また、有人機と無人機の連携を、様々な航空作戦シナリオにおいて可能にする技術開発にも重点を置く
●ACEでは、空中戦シナリオを、異機種、多数機、作戦レベルの多様なシナリオへと適応範囲を広げることを想定し、これらの過程を通じて、人工知能による自動化への人間の信頼感を高めることを狙っている
●ACEの目指すところは、一人の操縦者が複数の自律的に行動可能なAI無人機を従え、より大きな作戦を遂行可能なミッションシステム指揮官となることを可能にし、一人のパイロットが複雑で大きな交戦戦略を練り、目標を選定し、兵器を選択し、無人機の機動や行動を管理することを可能にすることである
ACE全体の計画やプロジェクト期間はよくわかりませんが、とりあえずDynetics社が担当するのは、ACEが今後18か月かけて取り組む「phase 1」の4つの分野の一つだということです。
いずれにしても、米空軍が進める無人ウイングマン構想のXQ-58 Valkyrieや、豪州とボーイングが先日初公開した「Loyal Wingman Advanced Development Program」や「ATS:Airpower Teaming System」構想の試験初号機とも密接に関連していると思われるので、ご紹介しておきます
18日付C4ISRnet記事によれば
●6日付でDyneticsは声明を発表し、「ACE全体に共通する狙いは、複雑で混とんとした空中戦場面にAIを挑戦させることで、AIが困難な場面でも人間を助けられることを示し、戦闘場面における人間のAIへの信頼感(trust)を高めることにある」との同社Tim Keeter担当責任者の言葉を紹介している
●ACEは4つの技術分野に分かれており・・・
—第1に、空中戦アルゴリズムを構築すること
—第2に、操縦者と無人機とアルゴリズムの間の信頼感を如何に構築し、信頼度を測定するか
—第3に、第1,2、4分野の進捗具合を把握し規模を拡大する(scale)する
—第4に、実際の有人機と無人機での融合(integrate)でデモ飛行
●ACEが今後18か月かけて取り組む「phase 1」で、第3分野を約13億円の契約で担当する同社は、他分野のチームが検討したアルゴリズムや手法を把握してより一般的な場面に拡大し、異機種多数機による空中戦シナリオでのAI活用を可能にする役割を担う。最終的には有人機と無人機を使用した実機での試験に結び付けるよう取り組む
●なお同社は、第3分野担当チームに「SoarTech」「InfoSciTex」「Intuitive Research and Technology Corporation」の3社も取り込んで担当する
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プログラムのイメージ説明(2分半)
DARPAでのACEプロジェクト担当責任者(program manager)は米空軍のDan Javorsek中佐で、「Animal」とのコールサインだそうです。
同中佐のYouTube映像での表現を借りれば、「トップダウンでなく、ボトムアップで様々な場面を積み上げ・組み合わせて」プロジェクトを進めるとのことで、当然といえば当然ですが、前線で操縦桿を握る大尉から少佐レベルの知見をインプットするのでしょう
「人間のAIへの信頼感(trust)を高める」との狙いが前面に出ていますが、それだけ前線パイロットには「AIに何ができるの?」的な疑問や「斜に構えた姿勢」が広くみられるということなのでしょう。
同じACEでも、太平洋空軍が取り組む「Agile Combat Employment」とは別物なので、注意しましょう
米空軍の計画
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3
豪州とボーイングの取り組み
「試験初号機を披露」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-05-1
「豪州とボーイングが共同で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-2
無人ウイングマンの位置づけ
「日米が協力すべき4分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
「戦闘機族ボスがNGADを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
別のACE:分散運用する新コンセプトACEへ
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08