2度選定をやり直して決定した企業にダメ出し排除
豪州企業も含む3社にデモ装置作成させ評価へ
語るに切ないグダグダ選定です
11日、米空軍は旧式の「AN/TPS-75」地上配備型警戒監視レーダーの後継機種選定のため、3つの企業にそれぞれ約5500万円を供与してデモ装置を9月末までに製造させて評価し、年末までに契約企業を選定すると発表しました。なおこの機種選定は、約6年前から2度の選定作業を経ても集結しない「なさけない」選定です
この新型レーダーは、3DELRR(Three-Dimensional Expeditionary Long-Range Radar)計画に基づくもので、米本土の沿岸部や北極圏沿岸部に配備し、主に領空に接近するロシア機や可能な範囲での巡航ミサイル探知追尾を担うもので、捜索範囲が500㎞程度で200目標の同時追尾能力が求められます。また同時に、僻地に配備することから安定性や維持整備に手間がかからないことも重要な要素になっているいわれています。
また、移動可能なシステムですが、有事には敵の最初の目標になるシステムですので、それほど高価格ではなく(初期契約が開発費込みで3台20億円程度)、レーダー監視範囲が重複するように多めに準備し、交代で電波を出して残存性を高める運用が想定されているようです
11日付C4ISRnet記事などによれば
●11日、米空軍は選定が延び延びになっている3DELRR計画を迅速に進めるため、「off-the-shelf」方式で調達するオプションを追求すべく、調達先企業にデモ機を作成させて判断する「SpeedDealer」との呼称の選定の対象となる3企業(Lockheed MartinとNorthrop Grummanと豪州企業CEA Technologies)を発表した
●この3企業選定にあたっては、3月2日に企業説明会を行い、4月15日締め切りで参加企業を募っていたが、締め切り後は当初予定の1か月間の選考期間をフル活用することなく発表が行われた。選ばれた3つの企業は、各企業約5500万円の資金を活用し、9月末までにデモ機を作成することを求められている。
●3DELRR計画は過去の2度選定を行っているが未だに決着していない。1度目では2014年10月にレイセオンが選ばれたが、競合企業からの不服申し立てで決着しなかったが、仕切り直しの2度目の機種選定でもレイセオンがNorthropとLockheedに勝利し、決着したかに思われた
●しかし今年1月米空軍は、レイセオン社が技術的課題を克服できず、期間を遅延してもレーダーを完成できない状態が続いていることから契約を解除し、レイセオン社を排除した「SpeedDealer」への切り替えを決断した
●米空軍は11日の発表で、「作戦運用上で対処が必要な環境と目標に対する能力と維持整備コンセプト、また他空軍システムとの融合性や量産可能性に基づいて評価する」、「最初から選定をやり直すのではない。新たな開発計画を開始するのではない。3月の企業説明会で提示した要求内容と企業側からの返答を見て、現存技術で製造可能なレベルのデモンストレーションが可能と確信した」と状況を説明している
●米空軍の3DELRR調達担当幹部は、米国企業に対してはプロトタイプ作成枠組みとしてよく利用される契約手法の「other transaction authority」を用い、豪州企業に関しては「Foreign Comparative Test project」の枠組みで準備資金を提供すると説明した
●対応企業の一つNorthrop Grummanの担当副社長は、「米空軍のニーズに応えるべく、費用対効果が高く、開発リスクが低い実証済のシステム技術で迅速に準備を行い、夏にはデモ装置を提供できるだろう」と自信を示した
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日本では、三菱電機とNECと東芝製レーダーが全国28か所のレーダーサイトに配備され、そのほかに被害時代替用に移動用レーダー部隊が全国に4個部隊に準備されていますが、弾道ミサイル探知追尾能力を付加するなどして、より高額なものとなっています
フィリピンに三菱電機製の警戒管制レーダーを提供する話もあるようですから、日本企業も参戦すれば良かったのでは・・・と勝手に思いますが、2014年に決着とお伝えした記事を、今頃振り返ることになろうとは思いしませんでした・・・。レイセオンも情けないですし、グダグダですねぇ・・・
おまけに、当初から3DELRRを争っているロッキードのレーダー技術が、中国側に漏れて「ステルス機探知用」の立派なレーダとして完成して配備済との話もあるらしく、ため息100倍の心境です。下の関連記事でご確認ください
2014年10月に決定したはずの3DELRR
「レイセオン製に決定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-10-09
上記機種選定に参加した別のレーダーのパクリ?
「中国製ステルス機探知レーダーが米国製にそっくり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-11-24
対ステルス関連の過去記事
「中国にステルス対処の受動レーダー出現」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-05
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09