普通は陸海空海兵隊が兵器を調達
要員養成や装備品維持整備も4軍が担当
地域コマンドは作戦運用に集中するはずですが・・・
10日、David Norquist国防副長官が2021年度国防省予算案について説明し、これまで種々の視点からご紹介してきたように、核兵器の近代化、宇宙、サイバー、マルチドメイン作戦など、国家防衛戦略NDSが求める対中国対ロシアの体制づくりなど将来に向け投資に焦点が当たる一方で、幾つかの有人・無人航空アセットを削減する案となっています
ちなみに副長官は発表ブリーフィングで、「この予算案は、明日の能力をもたらすものだ」、「陸海空、宇宙、サイバーなど全てのドメインで勝利を収める将来米軍を構築するため、全てのドメインをシンクロナイズさせつつ、現在の戦いも切れ目なく行ことを両立させる予算である」と説明しています
米空軍が、機体寿命が残っているにも拘わらず、運用及び維持経費を削減するために退役させたいと提案しているのは、17機のB-1爆撃機(現有62機)、24機のRQ-4無人偵察機(現有34機)、44機のA-10攻撃機(現有280機)、24機のC-130(現有310機)で、予備役や州軍所属機を優先するとの方向ながら、かなりの機数となっています
そんな中、軽攻撃機に関しては、A-29とAT-6を各2機購入して試験や要員養成に活用すると米空軍が昨年10月に発表していましたが、それに続く追加購入などの予算は2021年度予算案には全く含まれず、関係企業を落胆させ、米議会から「煮え切らない米空軍」との批判を集めそうな状況になっています
10日付Defense-News記事によれば
●昨年10月末、米空軍はAT-6 Wolverines契約を年末までに行い、機体は戦闘コマンドACCの戦術開発部隊があるネバダ州ネリス空軍基地に配備し、「軽攻撃機の戦術戦法や運用法開発を行い、併せて輸出可能な相互運用性を改善する戦術ネットワーク(AEROnet:Airborne Extensible Relay Over-Horizon Network)検討も行う」と発表している
●また、アフガン空軍用に既に米空軍と契約企業が訓練を行っているA-29 Super Tucanoについては、空軍特殊作戦コマンドSOCに所属するフロリダ州Hurlburt Field空軍基地に配属され、「急増するパートナー国等からの軽攻撃機ニーズ応えるため、教官操縦者養成プログラム開発に使用される」と説明されていた
●2月10日の予算案発表を受け、米空軍に軽攻撃機に関し質問したところ、空軍報道官から、軽攻撃機に関し具体的な調達の動きはないとの返答があった
●一方で南米コマンドは2月6日、現有偵察機U-28の後継機として、今後5年程度で75機の軽攻撃機を導入すると明らかにし、2021年度予算に「必要な機体と機材の調達、プロトタイプのデモ、特殊作戦用の特殊能力検証などなど」に約120億円を計上していると明らかにしている
●米空軍は2016年後半から軽攻撃機導入を本格的に検討開始しているが、昨年10月末に米空軍参謀総長は、「通常の機種選定や要求性能検討には5-10年が必要であり、判断のための種々のデータ収集にはそれぐらいが必要な期間だ。空軍はまだ2年しか検討を行っていない」と長期戦を示唆していた
●一方で、南米コマンド司令官のRichard Clarke大将は軽攻撃機導入を強く求めており、「南米コマンドには必要なんだ。米国のニーズなんだ」と訴えている
●2020年度予算関連議論で米議会は、米空軍が南米コマンドと軽攻撃機の扱いについてよく話し追うべきだと指示している。
●現状、米空軍はA-29とAT-6の2機種に絞り込んでいるが、南米コマンドは3月4-5日に軽攻撃機関連企業を集めた「industry day:企業説明会」を計画し、同コマンドの要望について企業側に説明して協力を求める予定である
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普通は、陸海空海兵隊が装備品を調達し、操作要員を育て、装備の維持整備を担当し、各地域コマンドは陸海空海兵隊から兵員と装備を差し出してもらい、具体的な作戦行動を行う・・・との整理ですが、南米コマンドが直接装備要求を行うとは奇妙な流れです
あくまで想像で邪推ですが、米空軍は予算の全体枠が限られていることから軽攻撃機関連予算を盛り込むことが出来ず、異例ながら地域コマンドに予算を積んでもらったのではないでしょうか?
南米コマンドが要求した約120億円の予算案を、米空軍の優柔不断を批判している米議会がどの様に扱うか予想出来ませんが、現場が望む装備が届くことを祈っております
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