初の空母艦載無人機MQ-25は地上で初飛行
一方KC-46重大不具合の解決策未だ見えず
共にボーイング社が担当する2つの明暗分かれる米海軍と米空軍の空中給油機事業についてご紹介いたします。
明るい方は、米海軍が当初運用開始予定だった2024年を前倒しするよう現場にはっぱをかけている、初の空母艦載無人機で空中給油機となるMQ-25で、19日にセントルイスの空港から初のテスト飛行を行い、約2時間の遠隔操縦フライトに成功したとのニュースです
暗い方は、2年以上運用開始が遅れている米空軍の最重要事業の一つKC-46空中給油機に関してで、運用を担当する米空軍輸送コマンド司令官が辛辣にボーイングを批判し「8か月経過しても課題解決につながる対策を提示してこない」、「ボーイングへの圧力を強める」と表現し、少なくとも3年は実戦に投入できないと怒りを爆発させたにゅーすです
KC-46の4つの重要不具合の中で特に司令官が問題視したのは、給油装置操作員が使用する相手機と給油ブームを確認する映像システムRVSで、太陽光などの光の確度によっては相手機が良く確認できないとか、相手機との距離感がうまくつかめずに相手機に給油ブームをぶつける等の不具合が出ている件です
気になったのはボーイング社の幹部の発言「システムの完成レベルの認識において、両サイドに誤りがある(Maybe we had some fault on both sides defining what the system should look like)」で、ボーイング側が開き直る恐れを感じさせる点です
明るいMQ-25初飛行の話題から
(19日付Defense-News記事)
●19日付のボーイング社発表によれば、同日同社が米空軍とプロトタイプ開発契約を結んでいる4機のMQ-25の内の1機が、セントルイスのMidAmerica St. Louis空港から約2時間の初飛行に予定通り成功した
●ボーイング社は発表で、「当該機は自律的に飛行場内をタクシーして離陸し、事前にプログラムされたルートを予定通り飛行して、航空機の基本飛行性能と地上管制システムの能力が問題ないことを証明した」、「米海軍との協力により、初の空母艦載無人機としてのプロセスを」と述べている
●同機は機種選定の上、2018年8月にボーイング社提案が採用され、5年後の2024年に初期運用態勢を達成する前提で、約900億円で設計&開発&最初のプロトタイプ4機製造を行う契約が結ばれています。また現時点で総経費約1.5兆円で72機を導入する想定となってる
●具体的な要求事項は明らかなっていませんが、同機は空母から500nm離れた場所で、14000ポンドの給油が可能な性能が求められ、同機導入によりFA-18の戦闘行動半径は現在の約450nmから追加で300~400nm延伸し、700nmを超えると言われる
暗い話題KC-46の実戦投入はす少なくとも3年後?
(18日付米空軍協会web記事)
●18日、米空軍輸送コマンド司令官のMaryanne Miller大将(女性)は、AFA航空宇宙サイバー会議の会場で記者団に対し、「米空軍が機体受領を始めてから8か月が経過するが、ボーイング社から全ての要求事項を満たすような解決法の提示を一度も受けていない。今後2か月程度の間に解決策が提示されると期待している」、「米空軍としてボーイングへのプレッシャーを強めていく」と述べ、
●一方で今後少なくとも3年程度はKC-46の実戦投入が難しいと判断されることから、「現有のKC-135空中給油機の退役時期を延期してもらうよう米空軍と協議している」と同司令官は述べ、米輸送コマンド司令官も「KC-46の遅れにより、28機程度のKC-135の退役時期を遅らせる必要がある」とコメントしている
●Miller司令官は、ボーイングが満たせていない9項目の要求事項があり、米空軍との協力で内7項目については進展があったが、残り2項目、RVSの操作員用モニターの鮮明さ(視力)と距離感把握の2点で解決策が見えず、給油ブームと相手機の距離感把握を困難にしていると現状を訴えた
●そして同司令官は「ボーイング側は9項目すべてを満たす必要性を認識している」と述べ、全てを満たすまで解決をボーイングに求めていくとして「プレッシャーを強める」と記者団に明言した
●ボーイングのKC-46営業上級責任者のMike Hefer氏は、「どの様にRVSを改修して要求事項を満たすかに関し、米空軍から青信号を得た。前進する方向は明確になった」と語る一方で、「システムの完成レベルの定義において、両サイドに誤りがある(Maybe we had some fault on both sides defining what the system should look like)」とも表現しており
●最近発覚した貨物拘束装置のアンロック問題についてHefer氏は、実際に貨物が機内で移動するような事態にはなっていないと強調し、暫定措置として貨物をストラップで固定して貨物搭載試験が可能な状態にKC-46を戻し、その間に根本原因を突き止めて恒久対策を明らかにすることを米空軍に提案していると説明した
●ボーイングから納入されたKC-46機体内に部品や工具やごみが残置されていた問題についてMiller司令官は、「最近納入を受けた19機目の機体で問題がないことが確認できた。対策が講じられたと確信している」と述べる一方で、「国防省と米空軍で引き続き監視していく」と述べた
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KC-46も、3度も機種選定をやり直したゴタゴタの後は、開発フェーズで途中まで順調でした。それが開発後半になってトラブル続きです
余計な心配であることを祈りますが、MQ-25には順調な道を歩んでいただきたいものです。
ともにボーイングが担っているというだけで不安要素いっぱいの2つの空中給油機ですが、対中国を想定した場合、極めて重要な役割を担うアセットですので、秋の青空に向かって祈りを深めてまいりましょう・・・
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