結局稼働率8割はF-16だけが達成見込み

マティス前国防長官の思いだったのに気合入らず?
米空軍作戦部長の言い訳をお聞きください
(海軍FA-18は恐らく5割を大きく割り込み
F-22Hawaii3.jpg4日、米空軍作戦部長のMark Kelly中将が講演し、昨年10月に当時のマティス国防長官から指示された「主要戦闘機の稼働率を8割以上に回復させよ。2019年度末(2019年9月末)までに」について、米空軍で達成可能なのはF-16だけだと明らかにしました
マティス国防長官が指示した主要戦闘機とは、空軍のF-16、F-22、F-35、そして海軍のFA-18で、2017年の各機種の稼働率は以下の通りでした
・ F-16C 786機 70%
・ FA-18 546機 約半分
・ F-22  187機 49%
・ F-35A 119機 54%
昨年12月にも同作戦部長は本件ついて語り
Kelly2.jpg●米空軍は必要な資源投入を行っている。既に整備員の不足解消には目途が立っている。一方で機体で部品確保が難しく、現状では必要数の半分の部品確保しかできていない
●また、ステルス機のF-22やF-35は、整備で機体内部の作業を行った後に、機体表面のステルスコーティングを「切り貼り」する必要があり、整備時間が長くなって稼働率を悪化させている。「通常6-7時間を機体表面の処理のために要している」と語り、稼働率アップの難しさを強調した
F-16に関しては、既に相当改善できており、目標の81%に近いレベルにきている。しかしステルス機については多くの整備所用を抱えていると認めた
整備員不足については、数の面では対応ができつつあるが、新しい整備員の技量向上には時間が必要であり、現時点では整備員数の増加が整備時間短縮に直接結びついていないと認めた
逆に、新しい整備員の現場での教育や監督にマンアワーととられ、短期的には負担となっている。1日12時間勤務のような状態がまだ続いている。整備員たちの滅私奉公(service before self)精神に依存しているのが現状だと認識している
9月5日付Military.com記事によれば同中将は
Kelly.jpg●Mark Kelly作戦部長は「2019 Defense News Conference」で、前国防長官が定めた稼働率基準を9月末までに満たせる主要戦闘機はF-16のみであると述べ、「正規軍のF-16は既に8割以上あり、州軍機も8割を達成できる見込みである」と説明した
●しかしF-22とF-35に関しては、それぞれの機種の異なる理由で8割の基準を満たすことはできないと述べ、F-22はステルス性維持のために多大な整備労力を要しており、F-35は依然として部隊立ち上げ段階であるが、中東への展開など前線ニーズや訓練参加ニーズが高い状態が続き、稼働率を上げるのが困難となっている
●昨年10月に当時のマティス長官から指示を受けて以来、米空軍は様々な観点から稼働率を左右する要因を分析し改善を図り、その過程で問題の所在や将来成すべきことを多く学んだ
●その上で極論を述べれば、主要戦闘機の飛行を停止すれば稼働率を上昇することが出来るのだが、現在の情勢ではそれは許されず、より多く飛行することを求められているのが現実である
8月にHolms戦闘コマンド司令官はF-22に関し
Holmes.jpgF-22のステルス機体表面処理施設を増やせば稼働率向上に貢献するだろうが、昨年のハリケーンでF-22要員教育部隊のフロリダ州Tyndall基地が壊滅的なダメージを受け、操縦や整備教育が継続できなくなっているほか、ステルス機体表面処理が出来なくなったのが大きな痛手
Tyndall基地のF-22は、分散してアラスカ、ハワイ、バージニア州Langleyの基地にとりあえず移動させたが、米議会はLangley基地に教育部隊を移動させよとしている。しかしLangley基地には十分なステルス機体表面処理施設がない点が問題である
●そこで米空軍はジョージア州の契約企業の施設を利用したり、ニューメキシコ州のHollomanの施設を再開することを検討している
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稼働率8割というのは高い目標で、当初から専門家で可能だと主張していた人はいませんでした
この指示が出た際、一部の専門家からは、稼働率は「使用可能機数と保有機数の比率」だから故障の多い老朽化機体を破棄して計算上の稼働率を上げるぐらいしか手段はない・・・との「裏技・奥の手」案も出ていたくらいです
しかしマティス長官は恐らく、米空軍や海軍内には数々の無駄があり、これを主要戦力の稼働率アップという誰にでも理解しやすい目的を示して是正させ、資源の再配分に結びつけることを促したのだと理解しています
F-35 clear.jpg結果としては、米空軍を支配しているはずの戦闘機族でさえも「辣腕」を発揮することが出来ず、資源配分のシェアに手を出せず、ほとんど実質的な改革に着手できなかったと言うことでしょう
もちろん、整備員の量と質の急激な改善や、ステルス表面処理施設の緊急増設は可能な選択肢ではありませんが、稼働率アップを目指す過程で「問題の所在や将来成すべきことを多く学んだ」との言葉を信じ、エスパー国防長官が新たに挑む決意をした「旧思考の事業中断検討」と「将来のための事業への再投資」に取り組んでいただきたいと思います
「エスパー長官がスクラップ&ビルドに強い決意」
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-31
「主要戦闘機の稼働率を8割にせよ」関連記事
「戦闘機稼働率8割への課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「マティス国防長官が指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11
「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3

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