次の米軍トップが中国脅威を議会で強調

今後50-100年は中国が一番の問題だ
Milley5.jpg11日、次の統合参謀本部議長候補であるMark Milley陸軍参謀総長が、上院軍事委員会の承認を得るためのヒアリングに臨み、中国脅威への対応を一番の課題として取り組むことが今後100年の米軍に課せられた課題だと強調しました
自身の韓国やハワイでの勤務経験も踏まえ同盟国等との協力関係が重要だとも主張し、国家防衛戦略NDSに沿った対応を語っています。それにしても、先日ご紹介した南米コマンド司令官の証言でもそうでしたが、中国脅威が米国安全保障の「真ん中」であることを改めて感じさせます
核兵器の3本柱維持と近代化の必要性を訴え、宇宙軍創設が無駄で重複のある官僚機構創設だとの非難にも公式見解で対応する落ち着いた対応で、プリンストン大学1980年卒業(政治学)とコロンビア大学大学院(国際関係修士)の知性を感じさせる受け答えだったようです
11日付米空軍協会web記事によれば
Milley.jpg4月上旬にトランプ大統領から指名されているMilley大将は、「今後50-100年間を見据えても、中国が米国安全保障が一番の課題になるだろう」と語り、中国が太平洋に向けて急速に影響力を強めていることに警鐘を鳴らした
●また同大将は、「100年後の2119年に歴史家が過去を振り返って21世紀の歴史をまとめようとしたら、そのメインテーマは米中関係になるだろう。私は中心が米中の軍事拡張競争でないことを願うが・・・」とも表現した
●上記の発言が示すように、Milley大将を迎えた軍事委員会は中国問題で埋め尽くされた。中国は米国を圧倒する資金投入で、全ての軍事ドメインで爆発的な拡張を続けており、同大将が事前提出した書面でも、中国の電子戦、サイバー戦、宇宙、核兵器分野での懸念が、米国を対応策に駆り立てていると説明されている
●同大将は米軍の対応について、米太平洋軍の戦力が航空機2000機や艦艇200隻、更にそれらを支える37万人の兵士で構成され非常に協力で能力が高いと表現し、抑止と有事の際の対応に万全を期してると述べた
Milley4.jpg●また自身の韓国とハワイでの勤務経験も踏まえ、極めて強固な同盟国等のネットワークに言及し、これらの国々が中国に対する懸念を共有し、南シナ海周辺国をはじめ、訪問先では皆が攻撃的な中国の動きを恐怖だと訴えていると語った
中国は世界中に、軍事訓練や教育、軍事技術提供や施設建設で言い寄り、更には5Gネットワークインフラの提供までも持ち出して関係を迫っている。南米コマンド司令官もお話ししたように、「世界の国々は、米国の各地域での継続的なプレゼンスとパートナー関係を望み、安全保障の保証人としての存在を希望している」とも表現した
●同大将はまた、核兵器3本柱の重要性にも触れ、「米国の防衛には、信頼でき、安全で、戦略的対処が可能な核兵器体系が不可欠だ」と述べ、ミニットマンⅢ後継ICBMや低出力核弾頭の開発などへの理解を求めた
●更に宇宙軍の新設について、宇宙での作戦に専念する人々の集団が必要だと述べ、宇宙軍の存在は宇宙での活動を補完し、決して無駄や重複を生むものではないと説明した
同大将をご紹介
●ボストン近郊の出身で1980年プリンストン大学出身。熱烈なMLBレッドソックスのファン。歩兵部隊士官としてキャリアをスタートするも特殊部隊指揮官を務めた経験もあり、パナマ侵攻、ボスニア紛争、イラク戦争で現場指揮をとっている
Milley2.jpg●最近では米陸軍戦闘コマンド司令官、アフガン駐留米軍の副司令官、第82空挺師団長、第5特殊作戦群司令官などを経験し、2015年8月に一般には「サプライズ」と言われながら陸軍参謀総長に就任した
誰にでも率直な意見を述べることで知られ、2017年に下院軍事委員会で予算決定が議会で遅れている状況を正面から非難し、議会を「professional malpractice:悪習慣のプロ集団」と揶揄して驚かせた
統合参謀本部では作戦幕僚として勤務経験があり、また国防省では国防長官の軍事補佐官のポストも経験している
太平洋軍隷下では、韓国駐留の第2歩兵師団部隊の指揮官(恐らく大隊長)やハワイの第25歩兵師団勤務を経験している。プリンストン大学1980年(政治学)とコロンビア大学大学院(国際関係修士)を卒業し、米海軍大学指揮幕僚コースでも学んでいる
●統合職では、アフガン展開のISAF副司令官、統合参謀本部J3作戦幕僚、国防長官軍事補佐官などを経験し、海外勤務はエジプトのMFO、パナマ、ハイチ、ボスニア、イラク、アフガン3度、ソマリア、コロンビアなど、陸軍のほぼすべての海外作戦に参加している
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Hyten.jpg国防長官が代理続きだったり、米海軍人トップ人事が直前で流れたり、統合本部副議長候補Hyten空軍大将のセクハラ疑惑が持ち上がったり・・・と、米軍を巡る人事がフラフラな中ですので、10月から登板が予期されるMilley大将には頑張っていただきたいと思います
また国防長官と国務長官が陸軍士官学校出身で、安全保障にかかわる上層部で一般大学出身が貴重な存在になりますので、プリンストン大学出身のMilley大将には、この点でも存在感を示していただきたいと思います
Mark Milley陸軍大将の公式経歴
→https://dod.defense.gov/About/Biographies/Biography-View/article/614392/general-mark-a-milley/
Milley大将関連の記事
「米国防省と米軍2トップが陸軍出身へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-20
「陸軍トップが米軍トップに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08
「次の米軍人トップは空軍から?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-21
「ダンフォード噂の記事」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-02
「デンプシー大将の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13

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