同時に4か国のF-35が飛行したわけではありません
2か国づつが南イタリアや地中海などで
3日付Defense-Newsは、3日、イタリア南部のイタリア空軍基地(Amendola)に配属されている8機のイタリア空軍F-35が、同基地に展開した米軍と英軍のF-35とともに飛行訓練を行い、共通のデータリンクMADLでスムーズな情報共有が行われたと紹介しています。
イタリア空軍は同国内に8機と米国内に訓練用で2機のF-35Aを保有していますが、キプロス島に英本国から展開中だった6機の英海空軍共有F-35Bの一部の4機と、そしてドイツの空軍基地に米本国から展開中だった12機の米空軍F-35の一部の4機とともに、訓練する機会を得た様です
整理すると、それぞれキプロスとドイツの基地で海外訓練中の英軍と米軍のF-35部隊が、イタリアまでさらに足を延ばしてイタリア空軍機と訓練したものです。
更にややこしくなりますが、キプロスに展開中の6機の英海空軍共有F-35Bは、6月中旬にシリア上空警戒任務飛行で初実戦を経験したのですが、任務の合間を縫って、イスラエル空軍F-35やドイツ展開中の米空軍F-35とも既に、2か国共同訓練を行ったようです
「F-35であれば、A型でもB型でも、飛び上がってしまえばシステムは同じで、MADL(Multifunction Advanced Data Link)を通じて瞬時に目標情報や戦域情報を共有できた」と参加した各国パイロットは語っており、また共に訓練したイタリア空軍Eurofightersとは「Link-16」を通じて情報共有し、相互運用性が確認できたとも証言しています
ポーランドやデンマークなどがF-35購入に傾く中、F-35の相互運用性をアピールするための「巧みに仕組まれた」2か国訓練集中実施と思われますが、情報共有が円滑に行われたことは結構なことです
3か国のF-35が終結したイタリア軍基地での訓練の様子と、同盟国間のネットワークの重要性を強調した欧州米空軍幹部の発言(6月末)もご紹介しておきます
3日付Defense-Newsは3か国F-35訓練について
●3日午前中、Amendola空軍基地を離陸した2機のイタリア空軍F-35Aは、初めて2機の英海空軍共有F-35Bと共同訓練を行った
●共同訓練を行ったイタリア空軍部隊の飛行隊長は、「英軍指揮官と前日に訓練打ち合わせを行ったが、わずか10分間ほどの会話で、旧型機では不可能だった訓練の打ち合わせが可能だった」と語った
●Amendola空軍基地司令官の大佐は、グローバルな兵站支援体制を目指すF-35にとって、他国のF-35基地に展開して運用することは自然なことだと語っている。一方で、多くの問題が指摘されている自動兵站支援システムALISについて訓練関係者は、「日々改善されている」と表現するにとどまった
●イタリア空軍F-35部隊は、既に6月に米空軍F-35部隊と地中海上空で共同訓練を経験済みで、英空軍機との訓練にもその経験が生きたようである
●英空軍側の指揮官も、「離陸してほんの数分で、共通の目標情報をデータリンクで共有でき、他の情報共有も極めて容易に可能だった」と、MADLを用いた意思疎通の容易性を強調していた
●同日午後には、4機のイタリア空軍F-35と4機の米空軍F-35が共同訓練を行った。午後の参加機はイタリア空軍KC-767空中給油機と給油訓練も行い、イタリア空軍Eurofightersと「Link-16」を使用した情報共有も行った
定期的な移動訓練を超え、常設のネットワークを
●6月末、パリ航空ショーの会場で欧州米空軍副司令官Steven Basham中将は、ロシアのクリミア半島併合後に開始された米空軍戦力のローテーション派遣は、同盟国との関係強化や練度向上に貢献しているが、国家防衛戦略NDSが目指す態勢確立には、更なる進化が必要だと語った
●そして同中将は、空軍参謀総長の「将来の戦いはネットワークの戦いでもある」との言葉を引いて、常設のネットワーク構築に向けた取り組みの重要性を強調した
●「欧州からアフリカにかけ、全てのレベルの指揮統制を支えるネットワークやデータリンク網を構築できるだろうか?」と自問した同中将は、「演習間だけの一時的なものではなく、日常的な活動で使用できる同盟国等を結んだネットワーク構築のロードマップが求められている」と語った
●また同中将は「演習間だけネットワークを構築し、普段は使用できずに使用法を忘れ、また演習時に思い出すような限定的な使用の繰り返しではダメだ。普段から使用して完熟しておく必要がある」とも述べた
●そして、「Arctic Challenge」演習で使用したJRE(Jay-ree:Joint Range Extension)は、見通し線範囲を超えた遠距離コミニュケーションを可能にするもので、受信した情報をリンクを通じて特定の戦域に送り、更にそこから別のリンクで異なるエリアに転送する技術だが、「このような技術はextremely, extremely valuableだ」と力説した
●一方で、昨年10月の演習「Trident Juncture」(1991年以来最大規模)で、ノルウェー軍がロシアからと思われるGPS妨害を受けた事例に言及しつつ、「ネットワークは妨害にさらされることを念頭に置き、ネットワーク構築時から代替案を考え、同盟国等と共に準備と訓練しておくべきだ」とも強調した
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複数の記事を無理やり一つに詰め込んだので話題が飛んでしまいましたが、まずF-35売り込みのため、相互運用性能力をアピールするため、米英伊イスラエルがF-35同士の訓練を集中的にやってMALDが活躍した(ALISには苦労させられているが・・)との話と、
ネットワークは同盟国との協力で戦う上で重要だが、相手が必ず行う妨害への備えも忘れてはならないとのお話でした。最近、GPS妨害の話がよく話題になりますねぇ・・・。
おまけで
6月21日までの2週間で、米英日韓タイから約3000名が参加した「 Red Flag-Alaska 19-2」が行われ、F-16とF-2、KC-135、C-130、UH-60、HH-60、A-10、MQ-9が参加し、681505ポンドの実弾を投下したそうです。こちらは頑張っても「Link-16」レベルですね・・・
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