国防省監察官が指摘:太平洋軍の演習場不十分

先に紹介した太平洋軍司令官の議会要望と一致
Inspector General3.jpg4月25日付米空軍協会web記事が、米国防省監察官による米太平洋軍に対する監察結果を報じ、同軍担当エリア内の演習場施設や装備が貧弱で、訓練を著しく阻害していることから、国家防衛戦略で対中国を重視する国防省として、早急に対策を採るべきだとの指摘を取り上げています
今、最も脅威に対する準備を迫られている太平洋軍ですが、Davidson太平洋軍司令官が先日議会に提出した「予算を認められていない重要事項一覧」 レターでも訴えていた演習環境整備を、国防省監察官からも同じタイミングで問題提起されたということです。
同軍担当エリアの演習環境が、「WW2当時から全く進歩していない」状況で、新たなアセットを導入してもその能力を使いこなす訓練を出来ない状況にあるとの指摘であり、内部外部からの同時指摘でその問題の重大性を感じ取っていただきたいと思いますし、自衛隊と米軍が狭いエリアを共同使用している日本も、何らかの対応を迫られる可能性があると認識すべきでしょう
4月25日付米空軍協会web記事によれば
F-16KoreaWalk2.jpg国防省監察官(Inspector General)が最近の報告書で、太平洋地域の演習場は特に最新鋭機パイロットの訓練を著しく制約しており、早急に改善する必要があると指摘した
●同監察官は、日本、韓国、ハワイ、アラスカ、ネバダ州、アリゾナ州の演習場をレビューし、演習場や演習空域がWW2や冷戦当時の任務対応の状態からそのままで、太平洋軍に配備されているアセットの即応態勢を維持し鍛える容量も能力も不足していると指摘した
例えば米空軍アセットや同盟国も交えた訓練で頻繁に使用されるアラスカの演習場・演習空域は、現状に即した電子戦システムがなく、パイロットに十分な訓練環境を提供することができない
●また、このアラスカの演習場・演習空域は、それを運営する明確な指揮管理枠組みがない問題も背景にあると指摘している。更に日本や韓国の演習環境は、ホスト国軍との共同使用で使用が制限される状態にある
alaska training range.jpg●このため太平洋軍航空機操縦者は国家防衛戦力が求めるような戦いの訓練ができず、求められる地域の作戦や作戦目的の達成に不可欠な準備が出来ない状態にある
監察官報告書は国防省に対し、各軍種の演習場管理改修計画を再確認し、それが実行可能性のある適切なものなのか国防省全体で確認すべきと指摘している。また更に国防省に対し、最新航空機などに配慮し、訓練環境の地域ギャップを埋めるため、全世界の米軍部隊を見渡しての対策を促している
●すでに太平洋空軍司令官は、実動とVRを効果的に組み合わせた演習環境整備の必要性を主張しており、アラスカ演習空域に新たな訓練装備を導入する方向で検討を行ってると昨年9月に語り、「全てを実環境で模擬して訓練することは困難であり、VR導入が訓練レベルアップに重要だ」と語ってる
///////////////////////////////////////////////////////
Inspector General2.jpg太平洋軍エリアは、特に西太平洋で作戦拠点となる場所が少ないうえに小さく、米本土からの距離も遠いため各種兵站輸送にも時間が必要で、おまけに多くが中国の各種ミサイル射程内に所在するという弱点を抱えており、中国のA2ADの前に成すすべ無しが現実です
そんな「泣きっ面」に演習訓練環境の不備まで指摘されては気持ちも萎えてしまいますが、ここは米国からの外圧で、電子戦も射撃訓練も自由にできる演習場・演習空域が日本で確保されることを期待いたしましょう
太平洋軍司令官が米議会に請願
ミサイル防衛体制強化や米陸軍クロスドメイン火力の増強を訴えると同時に、演習場の整備支援を要望
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

タイトルとURLをコピーしました