2019年版「中国の軍事力」レポート会見

全体の体裁は2018年版を引き継いでいます
担当次官補の発表会見でご紹介します
2019ChinaReport.png2日、米国防省が議会報告を義務付けられている報告書「中国の軍事力」を発表し、3日、Randall Schriverインド・アジア太平洋担当次官補が会見を開きましたので、会見の冒頭説明部分をtrannscriptからご紹介します
正確には、議会に報告する「非公開版」から公開可能な部分をまとめた「公開版」が発表されたということです。
昨年は冒頭のサマリー部分が2ページでしたが、今年は5ページに拡大され、より中身を見てもらいたいとの意気込みを感じますが、昨年から始まった政治、経済、文化面からのアプローチも含めた包括的な説明から入る丁寧(?)で、軍事オタクを煙に巻くような構成となっています
台湾が主目的である点は変わらないものの、中国軍事力近代化の目的は「高列度紛争に短期間で勝利:winning of short-duration, high-intensity regional conflicts」であるとの表現は、サマリーからは抜けたままです。
「一帯一路」や「中国2025」構想で、大きな戦略アプローチをとる中国については、軍事的な視点だけではだめだよ・・・とのメッセージなのかもしれません。
そんなことも考えつつ、担当技官補の会見冒頭説明発言をご紹介します
3日のtrannscriptによれば
Schriver.jpg中国は継続して米国の軍的優位を侵食し、影響力を獲得維持しようとしており、2049年までに世界レベルの軍事大国になることを目指して、膨大な資源を投入して能力と量の拡大に努めている
●幾つか軍事近代化の目立つ分野を取り上げると、まず対地及び対艦能力を持ち、西太平洋からインド洋を射程に収める、核兵器も搭載可能なDF-26中距離弾道ミサイルの増強が挙げられる
空母は遼寧に続き、国産第1番空母が2019年には前線艦隊に配属され、2番艦の建造も2018年に開始された
●また空母エスコート役を担う「Renhai級」ミサイル巡洋艦4隻が2017-18年に就航し、更に数艦が建造中である。本クラスの巡洋艦は長射程対艦巡航ミサイルを装備し、今年前線部隊に配備される見込みである
空軍では、第5世代機と考えられるJ-20が昨年10月の航空ショーでデモ飛行を披露した
Liaoning-Dalian.jpg●増備面だけでなく、中国は2018年に軍の訓練と評価に関する新た指針を示し、実戦的な統合訓練を全てのドメインを包括する方式で実施するよう強調し、強力な軍事的大国との紛争に備えるよう求めている
●また引き続き、軍民融合イニシアティブの元、民間分野が軍需分野に参入する動機付けを与えるよう中国指導層は取り組んでいる
サイバーによる窃盗も本報告書の重要なポイントである。本分野に重点投資がなされ諸外国の軍事技術へ中国人がアクセスすることを促進している。2018年には特に航空技術や対潜水艦技術への注力を確認している
●また、海外における軍事拠点設置を追及しており、2018年には中東や東南アジア、西太平洋地域にアクセスポイントや拠点を模索する動きを確認している
●以上のような大きな動戦略的に支えるため、中国指導者は外交力や経済力をてこに、総合力で中国を偉大な国としてインド・アジア太平洋地域に存在させようとしている
●「中国製造2015:Made in 2025」で中国は引き続き、外国企業等が中国の製造能力向上に利するように働きかけており、これには軍事分野も含まれている。また「一帯一路」構想では関連国を巻き込む姿勢を打ち出している
●「中国製造2015」や「一帯一路」に対する各国の警戒が高まったことで、中国指導者は若干アプローチをソフトに見せかける姿勢を示しているが、根本的な狙いは変化していない
DF-26.jpg●本報告書では特別なセクションを設けて、中国「influence operations:影響力作戦」を取り上げ、米国や諸外国のメディア、文化、ビジネス、学会、政策関係者にアプローチする中国の動きに警戒を示している
2018年に中国共産党軍事委員会が、国内治安を担当する人民武装警察を配下に置いた事は注目に値する。そして国内のイスラム教徒を強制収容所送りにしていることにも懸念を持っている
中国の地域諸国との紛争に関する姿勢に変化は見られず、引き続き規範に基づくルールを無視する動きを続け、利害追及のため摩擦を恐れない姿勢を貫いている。グレーゾーンで目的を達成しようとしている
●中国は2015年に習近平が南沙諸島を軍事基地化しないと約束したにも関わらず、2018年、南沙諸島に対艦巡航ミサイル、長射程地対空ミサイル、電子妨害装備を配備している
J-20groundgrew.jpg●中国は経済的手段においても、他国を弱体化させ、自身の利害を追及しており、例えば、豪州やパラオに対する貿易や旅行者を制限し、影響力を行使しようとしている
台湾に関しても、旅行者を制限し、投資を抑える等で硬軟取り混ぜた手法により独立阻止に向けた動きを継続している。昨年はブルキナ・ファッソとエル・サルバドルが台湾との国交を断ち、中国と国交を樹立した
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本報告書に関する報道では、中国の空中発射及び潜水艦発射核ミサイル開発に関して「あいまい過ぎる」とのコメントが出ています。完成しているのか、実配備されているのか・・・
また特別セクションとして「北極圏での活動」も取り上げています
米国防省は相手国に利するような情報公開はしない方針を最近徹底しており、各種レビュー文書も公開版と非公開版と分けられています。いつの間にか中国優位の西太平洋軍事環境を当然の音として受け入れている自分が悲しいです・
136ページの現物へのアクセスは以下より
→https://media.defense.gov/2019/May/02/2002127082/-1/-1/1/2019_CHINA_MILITARY_POWER_REPORT.pdf
米国防省「中国の軍事力」レポート関連記事
「2018年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
防研の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2
9回:一帯一路→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-11
10回:ユーラシア→サボって取り上げてません

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