750か、730か、700か、複雑な前提条件付きか?
9日、新年から臨時の国防副長官に就任している前国防省会計監査官David Norquist氏は記者団に、昨年10月から様々な数字が乱れ飛んでいる2020年度国防予算(2019年10月からの予算)について、予算枠が示されたと語った模様です
しかし同臨時副長官は、具体的な額やその条件などについては一切言及せず、3週間以上続いている一部政府機関の閉鎖(shutdown)の影響は不透明ながら、予算の案の細部については、議会に提示する国家予算案全体が明らかになる2月になると述べるにとどまりました
昨年末のクリスマス休暇直前の段階では、マティス国防長官の辞任の混乱の中で、まだ予算枠は示されておらず、2月までに予算案がまとめられるのか疑問視する声もありましたが、何とか期限までにまとめることになるようです
しかしこのモヤモヤ感・・・。例年は明らかになっている予算枠になぜ言及できないのか?・・・。トランプ大統領も議会も刺激せず、何とか必要なものを確保したい国防省と米軍全体の切なる思いの結果でしょうか・・・
以下では、これまでの経緯を振り返ります
●今年度国防予算(2019年度予算)は$716 billionで、来年度(2020年度)は $733 billionを国防省は予定して計画を立てていました。
●しかし10月16日に中間選挙の「風を読んだ」と大統領が突然、来年度予算は各省5%カットで、国防費は「$700 billionだ」と「ちゃぶ台返しの」指示を出し、反発する共和党議員や国防長官等は危機感を訴えてきました
●3者は11月末からマスメディアや講演で、「オバマ政権時の国防費カットで傷ついた軍の立て直しに着手したばかりなのに、来年度予算をカットしては、トランプ政権が定めた国家防衛戦略NDSが定めた、中国やロシアを念頭に置いた米軍の体制整備が中断し、米国を危険にさらす」とのキャンペーンやロビー活動を推進していたところでした
●そして昨年12月4日にマティス国防長官(当時)と両院軍事委員長がホワイトハウスを訪問し、国防費削減を見直すようトランプ大統領に直談判しました。
●会談後、上院軍事委員長は「国家安全保障目標に関する率直で建設的な意見交換ができた。我々は国家防衛戦略NDSを遂行するため、オバマ時代のダメージを修復し、米軍を再構築する必要があるとの目標を共有した」、「会談を通じて大統領は、我が国を強くし米軍に適切に投資し続ける決意をしたと確信している」とのコメントを出しましたが、細部は不明のままでした
●その後12月10日前後に各種メディアが、複数の筋からの情報として、 12月4日の4者協議で、トランプ大統領が「少なくとも$750 billion」にコミットした模様で、この方を受け議会のタカ派や国防省関係者は興奮に包まれたと報じました。
●一方で、既に米国の国防費は既に肥大しすぎ、他の必要な国家予算を圧迫していると主張している民主党関係者が今年1月から下院で多数派であることから、国防費を巡る攻防は簡単には決着しないと見られています
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この時期に国防省や米軍に勤務している皆様には、ご愁傷様・・・と申しあげるしかありません。
メキシコとの「国境の壁」費用に、国防省の災害対処予算を充てるとか、建設に軍隊を動員するとか、ため息のでそうな話が次々と・・・
トランプ大統領が「あっさり説得され」、「少なくとも$750 billion」にコミットしたなら喜ぶべきなのかもしれませんが、米議会「ねじれ状態」を考えると、また予算の強制削減法もいまだ有効な中、国防費だけ増が簡単に通るとも思えず、色々裏がありそうな予算枠提示です・・・
2020年度国防予算をめぐる記事
「一転、国防費増?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-11
「国防費巡り4者激突」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-05
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2