いよいよ米国がINF全廃条約離脱!

20日、トランプ大統領がアッサリ発表!
→https://news.yahoo.co.jp/pickup/6300724
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ボルトンだけでなくマティス長官も・・・
22日の週にも通告か?
西側を分断するロシアの高等戦略か?
SSC-X-8.jpg19日付Defense-Newsは、ロシアがINF全廃条約に違反して欧州正面に巡航ミサイルを配備していることに関し数年前から続く米国によるロシア説得も効果がない今、米国が同条約破棄に向かっていると報じ、10月初旬のNATO国防相会議で本件を取り上げたマティス国防長官が、NATOの意見を米国に持ち帰って決断に向けた米国内協議に入ったと伝えています
何度も取り上げた同条約ですが、
INF-USRU.jpg1987年12月8日、当時のレーガン大統領とゴルバチョフ首相によって署名された同条約は、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するもの。
●翌年6月1日に施行され、米側はGLCMとPershing IIミサイルを、ソ連側はSS-20中距離弾道ミサイル等を両国総計2689発廃棄することに合意した・・・ものです
細部は→INF条約の経緯とこれまでを解説
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
プーチン大統領は「周辺国のほとんどが中距離ミサイルを開発配備に着手している」、「同条約の在り方は、控えめに言っても議論の対象だ」と、自らを正当化するような発言をしており、違反を隠そうともしていない様子です
ロシアが2017年になって欧州正面のロシア領内に配備したのは、「SSC-X-8:9M729」と呼ばれていた最大射程3400km程度の巡航ミサイルで、米国はオバマ政権時代からこの違反を取り上げ、NATOとしても昨年12月にロシアに警告を送っていたところです
SSC-X-8 2.jpg一方でこれまでの米国の姿勢は、全てのオプションを検討するも、「同条約の規約を露に遵守させられないようであれば、他の全ての合意事項の拘束力も弱体化させかねない」との懸念から、「米国は同条約の規定範囲内の手段で、ロシアを同条約の枠内に引き戻し、核戦力の戦略的バランスを維持しなければならない」との考え方がベースになっていました
そのため、米国自身も中距離弾道ミサイル開発に着手するも、配備はしないとの姿勢を打ち出してロシア側の翻意を促そうとしていました。
しかし、当時の太平洋軍司令官だったハリス太平洋軍司令官は「米国が宗教戒律のように守っているINF全廃条約など破棄せよ」と厳しい言葉を発するなど、我慢も限界に近付いてきたようです・・・
そうです中国がグアムや西太平洋の空母を射程に収める弾道ミサイルの精度や能力を高め、拒否戦略を強化する中、米軍は「INF条約宗教戒律」に縛られ、何もできないのですから・・・
19日付Defense-News記事によれば
Bolton.jpg●「The Guardian」と「New York Times」は同時に、John Bolton大統領補佐官がINF条約の破棄を進言し、来週(22日の週)にもロシアに通告する方向だと報じている
●これまで同条約の価値についてあいまいな発言を続けてきたマティス国防長官も、NATO国防相会議を前にした2日、「米国だけが順守し、ロシアが無視している本条約の状況について説明し、どうすべきかについてNATO諸国の意見を聞きたい」
●「そしてNATO諸国の意見を米国に持ち帰り、DCで議論したい。どうなるかわからないが、米議会にも大きな懸念があり、我々がどうすべきか決めなければならない」と語っていた
Mattis8.jpg●そして4日に同長官は、「ロシアは条約順守に戻るべきだ。さもなければ、相手の条約無視に対応しなければならない」、「明確にしておこう。ロシアは堂々と大胆に条約違反行為を行っている。そして我々は時間をかけ、信頼できる同盟国国防相達と状況を議論したのだ」と表現した(最後通牒にも聞こえます・・・)
●米国が発表した核態勢見直しNPRで明らかにした、潜水艦配備(艦艇もか?)の核巡航ミサイル開発も、INF条約の範囲内だが、これらの動きに対応したもののひとつである。
条約破棄への反対論
SS-20.jpg●INF全廃条約を米国が破棄し、欧州に同種兵器を配備することは、中国などの国に対し、地上配備の核搭載巡航ミサイル配備を許容するとのシグナルを発することになる。これは、世界中がINF兵器を配備し、また対抗兵器を準備する新たなフェーズへ突入することを意味する
●また、INF条約破棄とINF兵器配備等巡る議論は、トランプ政権下で亀裂が広がる米国と欧州諸国との溝を更に深めることになり、プーチン政権が外交施策の主軸に置く西側の分断に結果的に寄与することになる
(まんぐーす注・・・日本にとっては、ロシアが極東正面に中距離核ミサイルを配備するという、新たな局面への対処を迫るものとなる)
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歴史を振り返る(デカップリング議論)
Pershing II.jpgソ連が80年代初め、SS-20という中距離ミサイルをソ連の欧州部と極東部に配備した。当時のドイツのシュミット首相が、ソ連がこのミサイルで欧州の諸都市を攻撃した場合、米はNYやDCを犠牲にする覚悟で、米本土からソ連の諸都市を攻撃してくれるのかとの問題提起をして、このSS-20の配備で米と欧州の安全保障がデカプリング(切り離し)されることを問題視した。
●米国は西ドイツの主張などを踏まえ、結局核搭載パーシングーⅡと巡航ミサイルの欧州配備に踏み切った。それを梃子にSS-20の廃棄をソ連に要求した。紆余曲折があったが、中距離核ミサイルをグローバルに全廃する(INF全廃条約)ことで米ソは合意した。
このような欧米の成熟した議論が、トランプ政権下の米国と、またEUを巡り紛糾する今の欧州諸国の間で可能でしょうか・・・?  西側分断を狙ったプーチンの罠にどっぷりはまるのか???
追記(当時の鈴木善幸首相)
●デカップリングが世界の首脳の大きな話題だった当時、能天気にもそんなことに全く関心がなく無知だった鈴木首相が先進国首脳会議に出席し、極東にも配備されているSS-20に関する意見を求められ、「SS-20て何?」と逆質問して世界の笑いものになったとの哀しい歴史・・・
ロシアのINF条約破り
「露の違反ミサイルをTake out」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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