スプートニクショック1957年を契機に創設され60年
5日、DARPA60周年の記念シンポジウムで、DARPA長官の Steven Walker氏が講演し、将来の60年間を見据えた「4つの戦略的必須事項」(four strategic imperatives)について語りました。
それほど具体的な中身について触れたわけではなく、60年もの長期を見通すことの無理もあると思うのですが、米国防省最高位の研究機関の現時点での見方ですので、Take Noteしておきましょう
それにしても・・・スプートニクショックとは歴史を感じずにはおれませんが、今の中国やロシアの状況などは、じわじわと明らかになるスプートニクショックに相当するのかもしれません
5日付米空軍協会web記事によれば
●Walker長官はDARPAのことを「最新科学技術の世界的な守護士」だと表現し、その任務である世界の安全保障を守る将来技術を生み出してきた伝統を引き継いでいくと語った
●一方でDARPAを取り巻く環境が絶え間なく変化し、「米国の優位性や世界の安定を脅かす、大きな技術的、経済的、地政学的な変化の存在」と、「これらの問題に対処する画期的な技術能力がない現状」を踏まえ、同長官は以下「4つの戦略的必須事項」を提示した。
●第1に、米国の生存にかかわる脅威から守ることで、これら脅威対処に必須なものには、自動化されたサイバー安保から大量破壊兵器センサーやアクティブ生物脅威防御までの多様な完全に新たな技術能力が含まれる。またこれら脅威には、敵対者の超々音速兵器への対応も含まれる
●第2に、DARPAが大国との大規模本格紛争を抑止・勝利できる能力を提供することも必須であり、長官は「我々は全てのドメインの戦力を分解し、我々の破壊力を増強する対応オプションに注力する必要がある」と表現した。また将来の紛争が新たな思考を要求し、特に宇宙や電磁波ドメインでの能力が一層重要になると語った
●第3に、米軍が引き続き対テロの役割を担う中で、DARPAとして「phase-zero conflict」や「大規模都市戦」に必要な能力提供に取り組む必要があり、また作戦行動を行う対象社会をよりよく理解するモデリング開発しなければならないとも表現した
●最後に長官は、最先端技術分野でのイノベーションにおいて世界のリーダーであり続け、世界の安全保障を守る将来技術を生み出す任務を全うすると語り、「今世紀の技術開発競争に勝利し、AI、先端極小エレクトロニクス、合成生物学、脳神経技術、新コンピュータ技術、そして社会科学の理解深化で優位でなければならない」と具体的分野を挙げた
●更に総括し、「我々はまず新たな技術を理解し、その将来的な用法や誤用について前線兵士や政策立案者に伝え、そして米国の価値と倫理を守るための国防能力に応用する必要がある」と結んだ
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DARPA創設の狙いには、「技術的奇襲の先駆者であるべきで、決してその犠牲者であってはならない」との言葉が含まれているようです。
DARPA創設当時の1950年代であれば、軍事分野が最先端技術を切り開いていたのかもしれませんが、今や民間企業やベンチャー企業が革新的技術を生み出しているのが現実です。そしてそんな技術がネットを通じて拡散しているのが実態です。
官僚的性格から逃れられないDARPAが、果たして今後も時代の最先端を維持できるのか・・・この点は内部の人も危機感を持っている事でしょう
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