中国を見習え
戦略議論がなされない現状に危機感
7日、米国を訪問中のGavin Williamson英国防相がワシントンDCのAtlantic Councilで講演し、聴衆からの大戦略の必要性や重要性に関する質問に答え、回答が難しい質問だが素晴らしい質問だとし、NATOや西側諸国の首脳や関係者間で行われている議論が、あまりに日々や目の前の事象にとらわれすぎており、もっと時間をかけて大戦略(grand strategy)を議論すべき時だと訴えました
特に同国防相は、大戦略の面で中国が優れていると評価し、「彼らは大戦略を持ち、将来に対する計画を持っている。我々もそういう形にもっていかなくてはならない」と表現し、トランプ政権と欧州諸国やNATO諸国との最近の乖離傾向にまでは言及していませんが、その課題を示唆しています
同時に英国防相は、中国が国際社会の中で、その規範やルールを乱すのでなく、その中で繁栄する事が中国のためであることを理解させるように導くことが重要で、中国の大戦略をそのように導くことが大切だと語りました
まだ42歳の若々しいWilliamson英国防相で、一般的な議論をしたまでかもしれませんが、大戦略の必要性は強調しても強調したりないことだと思いますので、これを機会にご紹介させていただきます
9日付Defense-News記事によれば
●英国防相はワシントンDCのシンクタンクで、西側諸国はより大きな視点で考えることを始めるべきで、NATOや西側首脳の会談で、昼間の会議の時間に日々の細かなことばかり議論し、夕食会ぐらいになってやっと大きな話題になってる現状を逆転させて良いのではないかと語った
●そして、現状の西側社会では、ロシアや中国の脅威に対応する長期的な取り組みや計画が不十分であると間接的に警告した
●同国防相は会場からの質問に答え、「ご質問のあった大戦略に関し、NATO加盟国間、西側主要国間、我が同盟国等の間では十分な話ができていない」と述べ、「我々はそのような話し合いを行わねばならない。なぜなら、もしそのような議論を行わず、将来計画を持たなければ、我々は将来事態に十分備えることができないからだ」と語った
●更に「これが西側の弱点であり、何とかしなければならない。そして早急にかつ迅速に対応しなければならない課題である」とも表現した
●大国との競争や紛争は、トランプ政権が国家防衛戦略で、ロシアと中国を基準として米国の成否を測る基準と表現してから、避けて通れない話題となっている。
●一方で識者の間では、大戦略実行の観点からすると、米中ロの3か国の中で中国が最も優れていると評価されており、数十年にわたる方向性を示し、全政府機関を挙げてその遂行を追及する姿勢が認められている
●しかし対中国の戦略に関して同国防相は、中国と対峙するだけでなく、中国を取り込み協同する方向性の戦略を推奨している
●「我々は、中国が世界の部隊で重要で価値があり肯定的な役割を果たすための方策を考えなければならない。恐らくこれは中国側も望んでいることで、そのような役割を果たしたいと考えていると思う。なので我々の大戦略の一部は、中国が世界の中で役割を果たすよう仕向けることである」と語った
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49分30秒くらいから関連する質問と回答
中国を国際秩序に取り組むことが容易ではないことは十分認識しつつも、大戦略の元、硬軟の策を組み立てることで、弱点もある中国に方向転換を図らせようとの考え方は重要です。
英国防相は質疑の別の部分で、抑止がまず第一番に重要なことを語っていますが、中国を組み込むことで不測の事態拡大を抑止する必要性も念頭にあるのでしょう
各国が協調すれば、できることはまだたくさんあるはずです!
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