北朝鮮が8月中旬に弾道ミサイル4発をグアム島周辺海域に打ち込むと発信し、トランプ大統領が今まで見たこともないようなことが北朝鮮に起こるとぶち上げ、お盆休みを返上させられた海上自衛隊や航空自衛隊の隊員の皆さんがイージス艦やPAC-3で緊急配備を命ぜられる中、11日付Defense-Newsが西太平洋を担当する米軍の実態とメディアが生み出す騒ぎとの「格差」を紹介しています
「外交上の誤った対応により始まった、第一次世界大戦開戦時の8月を思い出させる・・・」とは、記事に登場する匿名の米政府高官の発言ですが、何が起こるかわからない現代社会においても、足元の事実を押さえておく必要はあろうと考え、記事をご紹介します
少なくとも記事に登場する複数の匿名の米軍人や政府関係者は、ここ一週間ほどの北朝鮮とトランプ大統領の「口撃合戦」に危ういものを感じ、現場の実態を踏まえず加熱する報道に驚き・あきれている様です。
4月下旬に北朝鮮情勢が話題になった際、米空母カールビンソンが朝鮮半島周辺の急行して何かが起こると大騒ぎになりましたが、ふたを開けてみたら同空母は遥かに離れたインドネシア周辺で当初計画通りの訓練中で、信じられない情報スピンアウトが生じていた・・・との落ちが思い出されます
でも、USAの大統領があそこまで言うのだから・・・と「振り上げたこぶし」の落としどころに何かあるはずだと考えるのは自然なことで、サイバーなど非対称・不正規な手段が練られているのかもしれませんし、「平穏で変化なし」と記事内で語る関係者が「おとぼけ」をかましているのかもしれませんが、何となく感じる違和感を、この記事を通じてご紹介したいと思います
11日付Defense-News記事によれば
●ニュース専用TVや米大統領のツイッターをフォローしている人は、北朝鮮との戦争が迫っているとの印象を受けているかもしれないが、米軍関係者はその蚊帳の外にいる
●B-1爆撃機が北朝鮮のミサイル基地攻撃計画を完成させたとの9日のNBCニュースに接したワシントンDC周辺での盛り上がりとは対照的に、太平洋地域でそのような感覚を覚えることは決してない。
●米太平洋艦隊の拠点である横須賀では、空母レーガンと同艦隊の指揮官用艦艇ブルーリッジが静かに並んで停泊しているし、乗員が休暇を取り消されて召集されているようなこともない。イージス艦が急きょ周辺海域に出動したとの動きもない
●韓国でも、在韓米国人や在韓米軍家族に対し国外退去するような指示が出たわけでもない。ましてや、同地域の海兵隊員に、強襲揚陸艦に乗り込むよう命令だ出た気配もない。我々は3名の関係情報筋に確認したが、何も特別な動きはない
●公式に米軍関係者が質問されれば、「我々は常に高いレベルの即応態勢を維持しており、北朝鮮を含む、いかなる脅威にも対処する準備がある」と答えるが、個人的に話をすると、皆が4月の空母カールビンソン騒ぎに陥らないように注意しているのがわかる
●そしてある関係者は、「最近の北朝鮮関連の展開はショックだが、様々な発言や報道と現実は一致していない」「第一次世界大戦の開戦過程を描いた書籍「Guns of August」が指摘したように、一連の外交的対処の誤りが戦争を招いたシナリオの再来を恐れている」と話してくれた
●北朝鮮との軍事紛争を担当する太平洋軍情報筋も、「太平洋軍内には誰も髪を逆立てている者はいない。静かでプロの対応だ」「ワシントンDCが騒ぎを引き起こしているだけだ」とそっけなく答えてくれた
●そもそも今回の騒ぎは、北朝鮮が核弾頭小型化に成功してICBMに搭載可能になったとの新たな分析を米情報機関がまとめた、との8日付ワシントンポスト報道が引き金になり、トランプ大統領の「fire and the fury」発言につながったものだ
●その後のB-1爆撃機に関する報道など、憶測が憶測を呼んだ事例だ。北朝鮮の国営放送は9日、「北朝鮮に脅しをかけている戦略爆撃機の基地でもあるアンダーセン基地を含むグアム島の米軍を封じ込めるため、北朝鮮軍は態勢を整え、米国に警告を発する」と声明を発表している。
B-1爆撃機を「戦略爆撃機」と誤解する北朝鮮
●グアムに所在するB-1には、北朝鮮が「戦略爆撃機」と表現するような核兵器搭載能力はない。この声明を受け米国関係者の間には、更なるB-1爆撃機の朝鮮半島での飛行が、北朝鮮を刺激するトリガーになるのではとの懸念が生じている
●そんなタイミングの11日金曜日、米国防省が2機のB-1がアンダーセン基地を飛び立つ映像を公開したが、この映像を受けB-1が韓国に向かったとの情報がSNS上で駆け巡り、米国が北朝鮮を威嚇下したとの憶測が広がった。
●しかし実際にB-1が朝鮮半島で飛行したのは、トランプ大統領が「fire and fury」と発言する前日の7日が最後で、その後は特別な訓練等は行っていないのだ。米太平洋軍報道官が明確に7日以降の飛行は否定している
●情報筋は語ってくれた。「トランプ大統領の発言以外、何も情勢を変えるようなことは起こっていない」「核弾頭の小型化など長年北朝鮮が取り組んでいることであり、今更騒ぐことではない。今我々が目にしているのは、誇大報道がスピンアウトして朝鮮半島を戦争の危機にあるかのように煽っているだけだ。リーク情報のパワーとも言えるが」と。
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もう一度、このお盆休みに呼集され、休み返上で北朝鮮のミサイル対応に当たる自衛隊の皆さんに敬意を表します。
そして、書籍「Guns of August」が指摘した、一連の外交的対処の誤りが第一次世界大戦を招いたシナリオの再来がなきことを祈りつつ、ご先祖様に手を合わせたいと思います。
トランプがらみの記事
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「性同一性障害者を米軍排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28-2
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