詐欺まがい:数年後価格上昇で付加的経費も発生へ
お疲れ様で・・・見送りたかったのに・・・
25日に国防省F-35計画室長を離任し、6月に退役することになっているChristopher Bogdan空軍中将が、米空軍協会機関誌との離任インタビューに臨んでいます。
2012年12月に就任以来、強烈なリーダーシップと企業等との交渉で、何とかボロボロだったF-35計画をここまで支えてきた米国防省の大功労者でアリ、彼が去った後のF-35計画が心配なくらいです
だからF-35嫌いなまんぐーすも、Bogdan空軍中将の「人柄に惹かれて」、今日までチマチマと史上最大で最悪の兵器システム開発をフォローしてきたので、最後ぐらいは同室長の苦労話を暖かく紹介して終わりたかったのですが、最後になって飛び出した本音ベースの価格上昇話には寂しい気分になりました。やっぱり色々包み隠して発言してきたのね・・・と。
率直に正直で、正面突破のBogdan室長ならではの「正直発言」なのかも知れませんが、あまりに正直すぎて、過去の経緯も吹き飛ばしそうな内容に「口をあんぐり」です
後半部分の、クビを覚悟の仕事への取り組みや、国防省高官の強いサポート部分だけにしておけば、美しい退任会見になったのに・・・としみじみ思います。
皆さん、これからF-35価格はどんどん上昇し、追加改修や部品枯渇対策経費もうなぎ登りですよ・・・戦闘機命派の皆様はお覚悟を!(最初から知ってたのかも知れませんが・・・)
23日付米空軍協会web記事:発言要旨
●F-35の価格は過去5年間下がり続けており、今後3年間で1機90億円以下になるだろう。しかしその2~3年後には再び上昇に向かうだろう。なお、90億円以下との価格は、機体とソフトとセンサーからなるあくまで基礎価格(baseline)である
●また今後、製造機数が落ち込む(caveat)事があれば、最適な製造効率を保てずに価格に影響が出るという但し書き付(there’s a caveat)である。製造機数が減れば、最適価格になるのが遅れる(delay the most efficient rate)
●2020年時点までに製造された機体は不十分な機体で、それらには2022-2028年の間に能力向上改修を行う必要があり、追加経費が必要だ
●「ソフト3F投入」に続く「Block IV近代化」は、現在検討中だが、全ての側面でF-35の能力を向上させる。多くの現有兵器と使用可能にし、将来の兵器にも対応させる。試験を通じてF-35のセンサーが素晴らしいことが判明しており、これを兵器と結びつける必要がある
●F135エンジンの能力向上も保障したい。新たな部品を投入するか完全交換かは、米空軍研究所AFRLが取り組む研究成果次第だが、将来決定することになる
●F-35搭載の幾つかのセンサーについても、交換や改良が将来行われる。その中で確実なのが電子戦関連で、上空で予期しない新たな環境に対応できるような「see new threats and react」を目指す装備である
●F-35は膨大な「mission data files」に支えられているが、作戦対象地域の潜在的脅威を常にアップデートしておく必要がある。
●自動兵站支援システムALISの更新にも終わりは無い。ALISに関しては構成全体の変更を追求しており、いつか「クラウド」を活用し、中央集約型で飛行隊レベルの操作員のALIS維持やソフト更新業務を軽減・解放するような方向を目指している
約4年半の勤務を振り返り
●2012年12月に現職に就任したが、就任が決まっていたその年の9月、F-35計画に関わる全ての関係者、軍、議会、共同開発国、企業等に対し、新たな保安官が着任すると注意喚起するため、「ロッキード社と政府との関係は、私が知る限りで最悪だ」とあえて発言した
●国防省F-35計画室は、根本的にロッキード社との仕事のやり方を変えるべきだと主張し、また改善は見られるがその変化速度が不十分だと指摘した。そして約5年が経過した今でも、依然として同社との間に信頼関係に関する問題が存在する
●2012年9月の発言は事実に基づいた発言であったが、あまりに乱暴が言葉使いでもあり、事前に上司に相談すれば発言を止められると考えて許可は得なかった。
●何処で話をしても正しいことを話したが、言い過ぎだったこともあったかも知れないし、クビになる可能性もあっただろう。しかしそれで良かった。本計画を改善させるにはその様な姿勢が必要だと確信していたからだ
●F-35計画の根本的問題の一つは、業務に取り組む文化や態度であって、その変革が必要だったからだ。だから関係者全員に向け、修正すべき事の一つだと明示した
●私のやり方を許してくれた多くの上司に感謝している。米空軍省の調達幹部、米海軍のF-35準備室長、カーター前長官、Work副長官、ケンドール調達開発担当次官などなど、みんなが私を支えてくれた。
●何回も危険を冒し、クビを洗って議論を巻き起こした。グラスをたたきつけるようなことを何度もしたし、上司が私をクビすることも容易だったろう。しかし彼らはそうしなかったし、そのことに感謝している
●ロット5の15ヶ月間に及ぶロッキードとの交渉に苛立ち、「ロッキードは、国防省が同社から購入する最後の航空機であるかのように、再度の1ドルまで搾り取ろうとしている」と発言した際も、上層部から厳しい扱いを受ける可能性があったと思う
●18ヶ月間の交渉をしたロット9の協議でも、国防省首脳は完全に私を支持してくれた。オフレコにしないと話せない様な協議の末でも、何とか協議をまとめられたのは上司の援護を受けられたからだ
●過去5年間でロッキードと政府の関係は良くなったと言えるが、まだ十分ではない。意思疎通が明確で透明性が増したが、時には苦痛を伴い、懐疑的にならざるを得ない
●政府側は企業が前線兵士のことを最優先に考えていないと懐疑的だし、企業側も政府を信頼せず、長期的に政府が仕事を企業から引き上げるのではないかと懸念している。
●装備品調達の自然な流れで考えれば、例えば米空軍は自身の組織で航空機の維持整備や部品調達を実施できる基盤を持つべきで、それによりプライム企業に常にお願いするので無く、能力向上や改修が内部で完結できる
●決して企業を罰しようとしているのではない。しかし自身で出来ないと能力向上や改修費用を捻出できない事があるのだ。企業でさえも能力向上や改修が出来ない事も時にはある
●軍内組織で(能力向上や改修を)出来るようにするのが自然な流れだと思う。F-35計画でも、その流れを皆で共有して取り組めればより良いと考えるが、その様な関係には十分なっていない。
●(信頼を高める処方箋は?との質問に、)信頼というモノは、双方の行動や行為を通じて、時間をかけて醸成されるモノであり、話し合って直ぐ変わるモノでは無い。
Bogdan中将が語る思いで話はこちら・・
印象的なトラブル対処や結節(空軍機火災、HMD問題、着艦フック問題、ソフト3I開発、B型とA型のIOC、IOC後の世間の見方の変化)
→http://www.airforcemag.com/Features/Pages/2017/May%202017/Turning-Points-Convinced-Bogdan-F-35-Would-Succeed.aspx
///////////////////////////////////////////////
「しかしその2~3年後には再び価格が上昇に向かう」は分かりにくい部分ですが、製造機数減少や標準装備が完成して基礎価格が上昇等が原因だろうと読み取りました。
まだ最低限のソフトしか使用できず、最低限の機能発揮分の装備しか搭載していないから今は安価なのでしょう。
米軍でも追随できないような「能力向上や改修」や、もっと基礎的な「航空機の維持整備や部品調達」を、日本や諸外国はどうするのでしょうか?
前半部分でBogdan中将が次から次へと語った、手戻り改修や積み残し能力追加分を、いくら払って日本は行う必要があるのか、把握しているのでしょうか?
エンジンの改修や交換、センサー、「mission data files」からALISまで、何から何まで集金システムとして確立されているように思えてなりません。
後日、FMS契約の悲劇として防衛省が導入する「グローバルホーク」を取り上げますが、F-35はその10倍規模で「亡国」要素を持っているような悲しい確信を、改めて得つつあります
Bogdan中将の最初と最後
交代発表時→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29-1
就任時→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-05
発表時→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09-1
Winter次期F-35室長の公式経歴
→http://www.navy.mil/navydata/bios/navybio.asp?bioID=578
F-35の主要課題
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
F-3開発の悲劇と日本への提言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18