13日、約1か月前に就任したばかりの米空軍戦闘コマンド司令官James M. Holmes大将が、米空軍協会主催のイベントで、米空軍の時代に即した取り組みや軍需産業への要望事項を語っています。
まだ就任間もなく、「今週、このブリーフィングを聞いたばかりだが・・」等と状況把握段階にあることを自ら認めていますが、約36万人の米空軍の中で、10万人の規模と主要作戦機1300機を擁する戦闘コマンドの司令官です。
前任者のカーライル退役大将と同様に、今後様々な形でご紹介する人物ですので、「鳴き初め」として取り上げます
指揮所を鍛える「Blue Flag」復活と宇宙との連携
● 過去5年ほど予算と多忙さから実施できなかった、作戦レベルでの指揮中枢を鍛える「Blue Flag演習」を定期的に実施することにする。2年間で3回計画することとし、1年目に1回、2年目に2回実施する方式で繰り返していく計画だ。
●米空軍だけでなく、米軍として「multi-domain」指揮統制の新時代を目指す中、さらに我々は、統合の航空作戦計画と遂行を訓練するだけでなく、サイバーと宇宙脅威への対処を取り込み、米空軍宇宙コマンドと共に訓練を行う
●我がACCと宇宙コマンドは作戦実施上関連が深く、共に問題に対処するシナリオを準備することにした。更にその一環として、実際の演習場だけでなく、バーチャル演習場も活用する予定である
現場ニーズに迅速対処する仕組み
●従来の官僚的で鈍重な意思決定プロセスを改善するため、数か月前から空軍司令部レベルで、主要コマンドの要望事項をバーチャルな手法で承認する「Joint Requirements Oversight Council」の活用が始まっている。「face to face」の時間を削減する取り組みだ。
●この取り組みは、誕生6か月目の新設「Capability Development Council」が仕切っており、意思決定を迅速にし、新技術を兵器システムに優先的に取り込む事を促進するもので、米空軍副参謀総長がトップを務めており、一旦トップが意思決定したなら、皆がその実現に向け行動する仕組みだ
●もう一つは、分析官と作戦計画者と装備品要求担当が協力して働く「Air Force Warfighter Integration Center」で、事業の優先順位を煮詰めて努力方向を絞る役割を担う
●これにより、各組織が各予算で1年かけて要求を詰め、その後持ち寄って協議し、結局全体では1~2%の要望だけが取り上げられる時間とアイディアを浪費する仕組みと決別したい
●今週説明を受けたばかりで具体的なことはわからないが、米空軍司令部レベルで懸命の努力が行われているところである
企業へ:現場の声を聴いてほしい
●企業のリーダーの皆さんには、少しばかりお願いしたいことがある。正式な提案要求になる前の段階でも、現場のニーズや諸問題を聴いてもらいたい
●一般に企業レーダーの皆さんは部下に、正式な要求の形になる以前のアイディア段階で、サービスを提供しようとするなと指示されると思う。しかし、もっと現場の声やアイディアレベルの話を聞いてほしいのだ
●米空軍は多くの分野で能力や規模不足に苦しんでおり、対応にアイディアを必要としている。特に多様なドメインのセンサーを連接する分野に、新たなアイディアが必要なのだ。よりよくなる必要があるのだ。
●(同司令官の主要組織のリーダーはパネル討議で、)現有能力とニーズの差が記録されているwebサイトへのアクセスを、承認された企業関係者にも認めようと考えている
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Holmes新司令官は空軍司令部の作戦計画部長から現職に就いた人物で、空軍全体の状況は広く浅く把握しているのでしょうが、前線を担う部隊指揮官に就任し、現場の実態をまじかに見るにつけ、その切実な現状に苦悩は深く・・・といった感じでしょうか・・・
企業リーダーに対する「現場の声を聴いてほしい」「新たなアイディアがほしい」との叫びにも似たお願いは、そんな苦悩から絞り出されたものではないかと思います。
対領空侵犯措置だけに頭を突っ込み、脅威の変化や本質を視界から遠ざけるダチョウ症候群の我が空軍首脳部は、この米空軍大将と会話できるのでしょうか??? 話がかみ合わないでしょうね・・・。
「Holmes新ACC司令官をご紹介」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-12
「空自OBが対領空侵犯措置の効果に疑問を」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1