2月23日付で米空軍webサイトが、21年間にわたり無人攻撃機として活躍してきたMQ-1を、2018年の早い時期に引退させると発表しました。MQ-1の抜けた穴は、MQ-9が埋めるそうです。
MQ-1は、もともとISR用だった無人機RQ-1を改良し、ターゲティング装備や兵器を搭載して「攻撃機」に仕立てたモノもであることから、MQ-9と比較して兵器等搭載量が1/8程度しかないことが大きな背景で、併せて操作要領や整備手順や部品が異なるMQ-1とMQ-9を、同時に維持する事による要員の訓練や維持整備コストが問題となっているようです
現在米空軍は、MQ-1を150機、MQ-9を93機保有しており、数字から見るとMQ-1の存在が大きいのですが、MQ-9の増産も行っているようでアリ、現場は何とかなるのでしょう
2月23日付米空軍web記事によれば
●来年引退すると発表されたMQ-1は21年の運用実績があり、MQ-9は10年程度であるが、速度、高解像度のセンサー、兵器搭載量との能力で優れたMQ-9が、MQ-1に代わってより広範な任務を担うことになる
●また、今回MQ-1運用からMQ-9運用に任務が変わる部隊指揮官は、「単一の機種運用にすることで、要員訓練や兵站支援をシンプルにでき、部隊活動の柔軟性が確保でき、所属兵士のキャリア管理上のチャンスをより与えられるようになる」と効果を説明した
●現場の飛行隊長は、「2018年にMQ-1運用を終了するためには、2017年中にはMQ-1からMQ-9への移行を進めておく必要があり、今年7月1日にはMQ-1の飛行を停止し、MQ-9運用態勢の確立準備を開始し、年末までにはMQ-1だけで任務遂行できる体制を固めたい」と語った
●同飛行隊長は、科学研究の一環として始まったRQ-1運用が、偵察任務専用で前線に派遣され始め、やがてその有用性から目標照準装備や兵器搭載可能に機体改修が行われ、最前線で365日24時間休みなく活動を続けるようになった歴史を振り返りつつ、米空軍の記述進歩を体現した偉大な実例だと表現した
28日付Defense-Tech記事によれば
●MQ-9は3750ポンドの最大搭載能力を持ち、「AGM-114 Hellfire」「GBU-12 Paveway II」「GBU-38 JDAM」等を組み合わせて搭載可能だが、MQ-1は450ポンド程度しか搭載能力がない。
●現在米空軍は、無人攻撃機のCAP数を60から70個に増加させる方向で取り組んでいるが、追加の10個CAPは、米空軍の監督下で契約業者に委託運用させてまかなうこととなっている。なおCAP追加は、2018年末までに完了する計画だと、28日米空軍報道官は語った
●また米空軍は昨年9月、(無人機操縦者等の勤務環境改善のため)より環境の良い8つの新たな無人機運用基地候補を発表し、更に追加でエグリン、ティンダル、バンデンバーグ、ショー(Shaw)空軍基地の環境調査も行っている
●これらの候補基地はMQ-9航空団を受け入れる候補基地で、併せて無人機の維持整備拠点の候補地でもある。先月米空軍は、ショー基地に無人機操作部隊を配置するとのみ発表したが、まだ最終的な新たな無人機基地全体計画を決定していない
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無人偵察機や無人攻撃機の急速な普及を目の当たりにし、MQ-1が20年以上運用されてきた歴史を再確認するとき、有人戦闘機や攻撃機を操縦するパイロットへの影響(削減)を恐れ、職域防衛に走った米空軍幹部達を厳しく非難し、無人機導入を推進したゲーツ国防長官を思い出さずにはおれません。
核兵器の扱いを巡る不始末が直接の原因とされましたが、F-22計画継続への固執と無人機導入への頑なな反対姿勢を貫いてゲーツ国防長官と対立した、当時の空軍長官と空軍参謀総長を同時に「更迭」したゲーツ氏の豪腕が、今日の無人機隆盛を呼んだのです
ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録100選より:http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
●私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。しかし私は2008年、今度は国防長官として無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
未だ日本では、ゲーツ長官のような見識ある文民指導者や政治家が現れず、もちろん戦闘機操縦者が支配する世界で自衛隊内部から無人機の積極活用論が生まれるはずもなく、無人機放置プレーが続いています。本当に書籍「失敗の本質」が描く、「先の大戦」当時と状況は変わりません
同書が指摘した「失敗の本質」とは
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
●旧日本軍は、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった
●戦略志向は短期決戦型で、戦略オプションは狭くかつ統合性が欠如し、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的微修正の繰り返しで、雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、敵の出方等による修正無しだった
●本来合理的であるはずの官僚主義に、人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在。システムよりも属人的統合が支配的。人情を基本とした独自の官僚主義を昇華
●資源としての技術体系は一点豪華主義で全体のバランス欠如。
米空軍は無人機操縦者の離職者急増に苦悩中
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11