米空軍にエスコート電子戦機再び!?

EF-111A Raven.jpg21日付米空軍協会web記事が、カーライル米空軍戦闘コマンドACC司令官とのインタビューを紹介し米空軍が約20年ぶりにエスコート型(随伴型)の電子戦機導入を検討していると明らかにしました。
米空軍は、戦闘爆撃機だったFB-111を電子戦機に改良したEF-111を20年前まで運用し、敵地深くまで戦闘機等と共に行動させで電子戦面から援護する役割を担わせていましたが、その後はステルス機や精密誘導兵器によって敵防空網を無効化する手法を重視し、エスコート型電子戦機は保有しませんでした
EF-111引退後、米空軍は必要時に、米海軍のEA-6Bに空軍電子戦幹部を搭乗させてもらってエスコート電子戦を行い、現在も米海軍のEA-18Gに同様の依頼をしています。
EA-6B 2.jpgしかし、EA-6Bが4人乗りであったのに対し、EA-18Gは2人乗りであるため空軍士官を搭乗させることが容易ではなく、また敵の防空網が強化される中で、ステルス性だけで安全を確保する事が難しくなってきていることから、米空軍の動向が注目されてきました
例えば米空軍は、使い捨ての無人デコイMALDの電子戦型MALD-Jを数年前に導入してエスコート型電子戦能力を強化し、各種攻撃機の搭載電子戦機材の強化を進める方向に向かっています。
そんな中、次期制空機(PCA機:Penetrating Counter-Air:第6世代戦闘機だがそう呼称しない)を電子戦型に改良する方向で、エスコート型電子戦機を考えているようです
21日付米空軍協会web記事によれば
●カーライル司令官はAir Force Magazineとのインタビューで、EF-111引退後、約20年ぶりとなるエスコート型電子戦機を再び導入し、米海軍機からその任務を譲り受けることを検討していると語りました
Carlisle-FB3.jpg●同司令官は「PCA機だけでなく、我々には(ステルス機をエスコートも出来る)突破型の電子戦攻撃機(PEA機:Penetrating Electronic Attack)が必要だと思う」と語った
●更に同大将は「PEA機はPCA機の派生型で、PCA機より少し速度の速いモノを考えている」「無人機である可能性もある」「このように考え検討すべき事が多くある」と語った
●そして米海軍電子戦機との関係について触れ、「米海軍は、艦艇群の作戦運用方に沿い、スタンドオフ電子戦に傾きつつあるようだ」と述べ、
EA-18G F-35.jpg●海軍と空軍の関係について、「戦域レベル(theater-level)の航空戦力を担う米空軍には、突破型の(随伴可能な電子戦)アセットが必要でアリ、また私が思うに、米海軍がstandoffに集中し、米空軍が(突破能力のある)stand-inに注力することで、統合でのシナジー効果が期待できる。それにより、海空軍が結びついて最大の電子戦攻撃能力を発揮するのだ」との構想を明らかにした
●現在、米空軍全体が関係するドメインをまたぐ指揮統制機能について「Enterprise Capability Collaboration Team」がレビューしているが、そのレビュー終了後は電子戦に同チームが取り組み、電子攻撃能力の構築計画を見直す
●米空軍はまた、Work国防副長官が立ち上げた統合での戦域電子戦検討にも加わり、国防省全体での整合を図っている
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推測ですが、米海軍が「スタンドオフ電子戦に傾きつつある」のは、EA-18G電子戦攻撃機がFA-18をベースにした機体でステルス性がなく、中国沿岸等の濃密な防空エリア突入に大きなリスクが伴い、かつ、空母群自体がNIFC-CA構想により、より遠方の見通し線外から作戦を遂行する方向にあるからでしょう
背景には、中国軍の対艦弾道ミサイルや各種巡航ミサイルの発達&配備、中国潜水艦の性能アップ等々で、米空母群が第一列島線内に入りにくくなっている事があり、ゆえに「艦艇群の作戦運用方に沿い、スタンドオフ電子戦に傾きつつある」のでしょう。
MQ-25A.jpgまだまだ対中国A2AD作戦の海空軍すり合わせ途上でしょうが、予算厳しき中、電子戦分野で「standoff」と「stand-in」の分担が明確になるのは統合作戦検討の進展の証拠と理解しておきましょう。
でも、米海軍が初の空母艦載無人機を、突破型の攻撃アセットではなく、空中給油と軽攻撃アセットにする事には到底納得がいかず、この方向はWork副長官らに是非修正して頂きたいものです。
海軍と空軍の航空電子戦動向
「ステルス機VS電子戦攻撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「EA-18Gで空軍の電子戦を担う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
「空軍用に海軍電子戦機が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-09
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「緊縮耐乏の電子戦部隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
「MALDが作戦可能体制に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29-1
電子戦で劣勢な米軍の「あせり」
「副長官が国防省として検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-19
「米陸軍電子戦失われた15年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16
「米軍の電子戦の惨状と取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17-1
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02 
将来の空を制するために
「Air Superiority 2030計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「世代間リンクが鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-18-1
空母艦載の無人機について
「呼称CBARSは好きでない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1
「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

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