12月25日はソ連崩壊25周年に当たりました
26日付産経新聞朝刊は、7面に「ソ連崩壊25年 ロシアの改革難しく東欧と格差 民主化、経済成長…消えた希望」とのモスクワ特派員の執筆記事を掲載し、当時の米欧日など西側諸国が新生ロシアに抱いた民主化と市場経済化による発展という希望が消え、旧共産主義陣営の東欧諸国との国力差も鮮明な惨状と、その背景を考察しています
ロシアというと、先日の日露首脳会談に対する「空振り感」が日本に漂い、週末の世論調査の「ロシア嫌い:76%」との数字が示すように、ますます印象は悪くなるばかりですが、ここは「相手の足下」を見つめ、焦らず決して変な妥協はしないの決意を固めるべきと考えます
まぁ・・・「米国による東方拡大姿勢がロシアを変貌させた」との東京新聞社説(25日)やロシア専門家の一部の様な考え方があるとしても、稲田防衛大臣がロシアを刺激しないよう来年1月グアム島訪問時のTHAAD視察中止を検討(26日産経1面)と言われると、日本政府は大丈夫なのかしら・・と心配になることもあり、「崩壊25年」に関する産経記事を取り上げます
26日付産経新聞朝刊7面によれば
●1991年から2015年の国内総生産の伸び
(一人当たり:世界銀行調べ)
ロシア :2.6倍
チェコ :6.1倍
ポーランド:5.6倍
ハンガリー:3.7倍
●平均寿命の伸び
ロシアは68歳から70歳へ2歳伸び
他の上記3ヶ国は、7~8歳伸び
ロシア停滞の背景と今後の見通し
●東欧諸国は、WW2後に共産圏に組み込まれ、ソ連型計画経済がソ連ほど根付かず、各国民の欧州帰属意識も残っており、欧州回帰の改革がソ連崩壊後促進された
●これに対し、旧ソ連では、GDPの1/4を占めていた軍需関連を筆頭に、機械製造など多くの産業分野が国の発注や補助金で支えられていた。これらの分野は、ソ連政府崩壊で資金不足に陥ると即座に行き詰まり、業態の転換や市場への適応に向けた改革は困難かつ多大な「痛み」を伴った
●ロシアのエリツィン政権は価格自由化をはじめとする「ショック療法」で切り抜けを図ったが、多くの庶民は年間25%にも達した超インフレなどの打撃を受けた
●「欧州回帰」のような座標軸もないロシア国民の多数派は安定と秩序を求め、2000年就任のプーチン大統領が強権統治を敷くのを歓迎すらした。
●エリツィン政権が1990年代に着手した改革の成果と石油価格の高騰により、プーチン政権のロシアは2000~2008年に年平均7%経済成長を達成。
●しかしその後は、地下資源に依存する国家主導型の経済が硬直化し、頭打ちが鮮明になっている。プーチンが真剣な改革に取り組むとは考えられず、ロシア経済の長期的な停滞が予想されている。
●「1990年代のショック療法の再来」を恐れる国民多数派に、変革を求める大きな動きは出ていない。
●専門家は「今より状況の悪かった70~80年代にも、飢えるほどではないと人々は耐えた。強力な特務機関が反発の表面化を抑え、指導部内の対立もなかった。今日も、この3つの条件(国民の我慢、国家機関による監視、指導部の表面的安定)が維持される限りはプーチン体制が続くのではないか」と見ている
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稲田防衛大臣のグアム島THAAD視察断念!?
→http://www.sankei.com/politics/news/161226/plt1612260010-n1.html
東京新聞社説「ロシアばかりが悪いと言えない」
→http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122502000120.html
産経記事の指摘以外にもロシアでは、科学者等知識人の海外脱出、若者の無気力感蔓延、人口減少、アル中患者の増加などなど、悲観的な状況が広がっており、明るい兆しなど無いと言えましょう。
もちろん、北極航路の確保、天然ガス等のエネルギー資源確保、中国の牽制など、日本の国益を考える上で無視できない観点でロシアは重要な国です
でも注意すべきは、短期的な視点で成果を求められる西側指導者の、ロシアへの「すり寄り」ではないでしょうか??? あくまでもビジネスライクに、長期的な視点で国益だけを求め、相手を信じることのないように注意したいものです
ロシアを考える古い記事
「日露を直球と変化球分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-21-1
「ロシア社会の停滞と憂鬱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-15
「INF全廃条約の破棄を願う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10
兵頭部長の分析
「露は日露共同演習を目指す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-09-1
「中露関係は頭打ちで複雑化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-03