屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状

NNSA aging3.jpg10月21日付Defense-Newsが、長年に渡りメンテナンスや立て替えが先送りされ続け、実際に崩壊が始まっている米軍核関係の研究機関や開発施設の惨状を伝えています。
最近は、顧みられなかった核兵器の維持更新にやっと腰を上げ始め、ICBMや戦術核爆弾、更に戦略爆撃機の後継開発や延命措置の具体的検討が始まった様子をご紹介してきましたが、注目度が低いながら、緊急性の高いのがこの関連施設の改修です
カーター国防長官も9月27日にニューメキシコ州の関連施設で記者団に、「核兵器や核兵器運搬システムと同様に重要なのがインフラである。これらへの投資も前進させなければならない分野の一つである。核関連の研究施設や関連の支援施設がその対象だ」と訴えたところです
21日付Defense-News記事によれば
NNSA aging.jpg●ここ数年、米軍の施設建設や施設維持予算は、訓練経費や装備の近代化予算の犠牲になって不十分な状態にある。核兵器関連の施設インフラもこのカテゴリーに入っている
核兵器関連施設を管理するエネルギー省隷下のNNSA(National Nuclear Security Administration)はこの現状を深刻に捕らえており、NNSAトップのFrank Klotz氏は、延期され続けてきた施設維持に約4000億円が必要だと語り、屋根の崩壊事案が続く現状を訴え
●そしてKlotz氏は具体的に、「このポストに就任した直後、核濃縮と行っている施設の屋根が崩壊した。大きなコンクリートの固まりが落下した。幸いけが人はなく、高価な装備への被害もなかったが、被害の可能性はあった
●更に「Lawrence Livermoreの電機関連施設でも、全ての施設の換気システムでもこのような崩壊が始まっている。対策を始めなければならない状態なのだ」とワシントンDCでの9月のイベントで訴えた
核インフラ予算や対策への理解は
●NNSAの2017年度予算案では、核弾頭の近代化予算が約1兆円の一方、インフラや施設運営経費は約3000億円である。
●NNSAの兵器システム開発責任者Brad Boswell氏は記者団に対し、「NNSAはどの部分が最も切迫した問題かを極めて効率的に見極めようとしており、施設全体をバランス感覚を持って中止している」と述べつつ、「極めて厳しい状態にある」「膨れあがりつつある問題の責任者として、極めて懸念している」と訴えている
NNSA aging4.jpg●一方で、この施設やその維持経費について、米議会の理解は十分とは言えない。例えば2月の米議会の上院軍事小委員会で、Jeff Sessions小委員長は懐疑的な目でNNSA関係者に対し、「予算が厳しい状況にある中、施設経費だけに4000億円とは正気なのか?」と問いつめた
●米国防省の元高官は、NNSAの懸念は真っ当であり、政府はこの問題に真剣に取り組み必要があると語り、この問題は単に施設だけの問題ではなく、そこで働く人達の士気に直結する問題だと訴えた
●そして元高官は「水漏れがありドアが壊れたままの施設は、そこで働く人達に、君たちは重要でないとのメッセージを送ることと同じ意味を持つ」と表現した
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核兵器そのものと関連施設や研究機関の問題は、過去6年間に渡りご紹介してきた事項ですが、兵器そのものには期限切れで動きが見え始めましたが、インフラ関連には冬の時代が続いています
いつかぷっつり大きな事故がない限り、この問題が真剣に議論されることはないのでしょうか??? あわせて、中国やロシアでの状況が気になります・・・
米軍「核の傘」で内部崩壊
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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