新型の宇宙監視望遠鏡が米軍運用部隊へ

SST1.jpg18日、米国防省の国防高等研究所DARPAが、地球を周回する衛星やデブリを地上から監視観測するための望遠鏡(SST:Space Surveillance Telescope)を、設計開発段階が終わったので米空軍宇宙コマンドに管理を移管すると発表しました
現在は、ニューメキシコ州のお馴染み「White Sandsミサイル演習場」に設置して開発&試験を行っているSSTですが、今後豪州に移設して、豪州と米空軍宇宙コマンドが協力して運用していく計画です
なお、約4年前にこのSSTの話題を紹介した際には、DARPAから2014年には豪州への移設を開始し、2016年には運用を開始する計画だと発表があったのですが、現時点ではまだ移設が完了しておらず、運用開始時期も2020年に延期されているようです。理由や背景は不明です
19日付米空軍協会web記事によれば
18日DARPAは、SSTを設計&製造段階から新しい運用ステージに移行させるため、管理をDARPAから米空軍宇宙コマンドに移管すると発表した
●DARPA発表では、「従来の望遠鏡が大きな物体をストローの穴から覗くようなイメージだとすれば、新設計のSSTは自動車の運転席から広範囲にものを見る感覚だ」と説明している
SST3.jpg●開発段階のSSTは、2015年に720万個の宇宙物体を観測したが、2016年には1000万個になる見込みであり、新たに地球周回宇宙物体を3600個発見し、地球近傍に69個も発見している
●SSTの主任務は、宇宙デブリを発見追尾し、衛星との衝突防止や、地球落下の際の注意喚起をするためである
●DARPAのLindsay Millard担当責任者は、SSTの価格は約190億円であるが、地球周回軌道の全てを監視するには、更に3台のSSTが必要だと説明している
White Sandsミサイル演習場で試験が行われているSSTだが、2013年には、将来豪州西部のExmouthに所在する海軍「Communication Station Harold E. Holt」に移設することが両国間で合意されている
●SSTは分解して海上輸送され、豪州にて米空軍宇宙コマンドと豪州政府の共同で運用されることになっている。初期運用態勢確立は2020年を予期する
2013年12月の米空軍協会web記事では
SST2.jpg2013年11月に結ばれた米国と豪州間の合意に基づき、SSTは2014年に豪州に移設される予定。DARPAはまた、2016年に移設先で運用を再開すると発表している
●(当時のDARPA担当責任者の)Travis Blake中佐は、「ソフトボール大の大きさの物体を、同時に1万個観察できる」と新しいSSTの性能を語った
SSTの豪州移設に際しては、豪州政府が敷地を提供し、運用を担当する。米空軍はSSTを所有し、豪州と運用と維持整備経費を分担する。
●なお米国は、宇宙状況認識強化のため、SSTの他に、C-Bandレーダーを豪州に移設する
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このSST計画の遅れの理由は不明です。またC-Bandレーダー豪州移設については、完了したとの報道を見た記憶がありますが、現状を把握していません
Space Fence1.jpgまた、Sバンド周波数を活用する、宇宙監視レーダーシステム「Space Fence」との任務分担も良く理解していません
しかし、米国防省は2012年頃から国際的な宇宙状況把握協力を推進しており、日本の航空自衛隊レーダーやJAXAの望遠鏡にも参画を要望してきているようです
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
「空自レーダーで宇宙監視?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-17
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28
日本のこの分野での動きは寂しい限りです。戦闘機だけに投資しているからですが・・・
2015年4月に米国と「宇宙協力作業部会」設置に合意し、同年10月と2016年2月に作業部会を開催し、「政策協議の推進」「情報共有緊密化」「専門家の育成協力」「机上演習の実施」の検討を推進することになっていますが・・
平成29年度防衛省概算要求では、以下の14億円程度が実質予算
→http://www.mod.go.jp/j/yosan/2017/gaisan.pdf (4.3MB)
●宇宙状況監視に係る取組(14億円)
→米国及び国内関係機関との連携に基づく宇宙状況監視(SSA)に必要となる宇宙監視システムの整備に係る基本設計等と、運用要領の確立に向けた準備態勢のさらなる強化
●米空軍宇宙業務課程等への派遣(0.1億円)
更に姑息なのは、米国への「ごまかし説明」のためか、「概算要求説明資料」では、「宇宙関連経費1289億円」との数字を大きくアピールしている点です。
Space-2017fy.jpg実質14億円なのに衛星通信利用費(1133億円)や画像衛星&気象衛星利用費(471億円)を水増しに利用し、本当に必要で米国が努力している「宇宙情勢認識」強化のための予算が少ないことを誤魔化そうとしているのです!!!
こんな事では、「戦闘機機数維持」の組織防衛にのみ注力して「亡国のF-35」と心中し、「脅威の変化」に追随出来ない組織になってしまいます
関連の過去記事
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
「空自レーダーで宇宙監視?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-17
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「F-15から小型衛星発射試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09
東アジア戦略概観2016(宇宙ドメインも解説)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25

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