12日付海兵隊タイムズ紙は、10月初旬にISILが使用する爆弾搭載の市販無人機攻撃で、クルド人兵士が死亡して仏軍救命救助兵士が負傷し、イスラム過激派による無人機攻撃での初めての犠牲者となったと報じています
また同紙は、最近数ヶ月の間に、ISILに限らず、多くのイスラム過激派が市販無人機を兵器としての使用を試みる証拠が明らかになっているとして、米軍をはじめとする多国籍軍に危機感が高まっていると報じています
小型無人機が簡単に入手できるようになり、このような事態は数年前から予測されていたとは言え、現場の部隊にとっては厄介な課題がまた一つ加わったことになります
12日付海兵隊タイムズ紙web記事によれば
●10月2日イラクのエルビル近郊で、ISILが送り込んだ爆弾搭載の小型無人機で、2名のクルド人兵士が死亡し、2名の仏軍救命救助兵士が負傷した。
●当該兵士が撃墜した無人機の様子を確認していたところ、搭載されていた小型爆弾が爆発した模様で、対ISIL作戦の報道官であるJohn Dorrian米空軍大佐は、「トロイの木馬」攻撃だと表現した
●また同報道官は「我々はこれまでに、ISILが市販無人機を使用するとの報告を数回受けており、その中には爆弾を搭載したものも含まれている」と明らかにした
●NYT紙も、先月少なくとも2回、ISILが爆発物搭載の無人機使用を行ったと報道している。
●10月2日のクルド人兵士死亡事案では、原始的な発泡スチロール製の小型無人機にテープでプラスチック爆弾と電池が取り付けられていたと、米政府高官の話を引用してAP通信が報じている
●しかし市販無人機の使用はISILだけに止まらない。AP通信はアルカイダが撮影した映像に、シリアの兵舎で無人機を離発着させる映像が含まれていると報じている
●また別の映像には、シーア派のヒズボラがスンニ派をアレッポ近郊で攻撃するため、無人機から小型爆発物を投下する様子が記録されている。AP通信は、これら映像がイスラム過激派による無人機の攻撃使用の最初の証拠だと報じている
無人機対策への取り組み
●Dorrian報道官は、米国らの多国籍軍は敵無人機の活動に対処する方策を精力的に追求していると語り、細部に言及できない無人機撃退の「先進システム:advanced systems」のほか、無人機操縦用電波を妨害して無人機を無効化する装備「DroneDefender」を挙げた
●そして同報道官は「敵に友軍を脅かすような能力の保有を許さず、新たな脅威を放置しない」と語った
●軍事研究機関のRebecca Grant所長は、このような「敵無人機の脅威:red drone threat」対処は数年前から議論され、「多くの演習やwar gamesがなされているが、監視レーダーとレーザーの適切な活用が重要だろう」と語っている
●米海軍研究所は2014年に艦艇搭載レーザ兵器の試験を成功し、米陸軍も戦闘装甲車両に無人機対処のレーザー兵器搭載を進めようとしている
●DARPAも8月に、今後4年以内に小型無人機からの防御新技術を開発するための支援を要請している
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この事例は中東でのイスラム過激派との戦いですが、無人機の脅威は従来の兵器システムの脆弱性を突いてきます。
特に、飛行場インフラの無効化に極めて効果的でしょう。航空機そのものや滑走路だけでなく、多様で多数の脆弱なインフラが戦闘機の運用を支えており、これらへの攻撃に無人機は極めて有効です。
空中戦しか考えていない「戦闘機命派」は、相手の立場に立って脅威の変化を考えるべきでしょう・・・
悪役の考えることは世界共通ですから、すぐに拡散するのでしょう・・・・残念ながら・・・
無人機対処関連の記事
「DroneDefenderをご紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-30
無人機の群れ:Swarmで艦艇の攻撃や防御
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
2015年の「Best of What’s New」に選ばれた
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04