猛暑の毎日に「氷」に関する話題をどうぞ・・・
14日付Defense-Newsが、北極海での沿岸国の覇権争いが激しくなる中、実質僅か1隻の砕氷艦しか保有していない米国沿岸警備隊の惨状に対処するため、米下院議員を中心に米海軍の協力も得て砕氷艦を早期に導入しようとする動きを紹介しています
記事はロシアの砕氷船保有状況を説明していませんが、少なくとも原子力砕氷艦だけでも6隻保有し、通常動力砕氷船を含めると外洋で活動できる砕氷船は10隻以上と考えられ、20隻態勢に向けプーチンが大号令を掛けた状況(多分)にあります
その他、カナダ、デンマーク、ドイツ、フィンランドも複数の砕氷船を保有している世界の状況からすれば、米国の現状に危機感を感じる有志の動きは当然とも言えましょう
ただし記事は、なかなか短期間での調達やリースには課題があり、米議員の仲介で進む海軍と沿岸警備隊CGの「joint program office」もスムーズに事業を進められるかは先行き不透明です。
14日付Defense-News記事によれば
●米国沿岸警備隊は現在2隻の大型砕氷船「Polar Star」と「Polar Sea」を保有し、中型の科学調査用砕氷船「Healy」も運行しているが、「Polar Sea」は既に老朽化して乾ドックに入った状態で、現状では今後の活動は期待できない
●運用可能な「Polar Star」も年間6ヶ月の運行が精一杯で、残りの期間は修理に当てている。沿岸警備隊は、「Star」を延命させるために本格的オーバーホールを行うか、「Sea」を再び運行可能に回収するかを検討しているが、「Sea」の復活に必要な見積りを7月末までに議会に提出するよう求められている
●なお、米国の国土安全保障省の見積もりによれば、米国が年間を通じて必要な砕氷活動を行うには、3隻の大型砕氷船と3隻の中型砕氷船が必要である
●下院の海運&沿岸警備隊問題小委員会のDuncan Hunter委員長は、一刻も早く砕氷船を増強するためにここ数ヶ月間奔走しており、その結果の一つとして米海軍の予算とインフラも活用し、今後5年間で2隻の砕氷船建造を狙う、海軍と沿岸警備隊共同の検討拠点「joint program office」を立ち上げようとしている
●この検討室は、沿岸警備隊だけだと10年かかって1隻の砕氷船しか調達できないところを、米海軍の力やインフラを活用して調達を加速しようとするものである
海外からリースする選択肢もあるが
●砕氷船不足に危機感を持つHunter委員長はまた、当面の対策として、中型の砕氷船をフィンランドなどからリースする案を沿岸警備隊に提示しているが、沿岸警備隊側は消極的な姿勢を示してきた。この点に議会側は不満を持っている
●一方で沿岸警備隊は、現状の環境で必要とされる能力を備えた砕氷船が市場にないと主張し、何度も米海軍専門家とともに議会に出向いている。またリースは極めて高価で、既に予算不足に悩んでいる沿岸警備隊にとっては受け入れ難い案である。米会計検査院GAOの担当官も、一般論として購入が望ましいとコメントしている
●そして沿岸警備隊のCharles Michel副司令官は、米国に今必要とされる砕氷船の能力について、現有の「Polar Star」と「Polar Sea」のような砕氷船のイメージではなく、沿岸警備隊が運用するカッターのような航行権を主張して救命救助を行える船であり、単なる砕氷船調達ではないと語っている
●いずれにしても、海軍と沿岸警備隊の強力で調達ペースの加速を検討する「joint program office」立ち上げの覚え書き案が議論されており、同時にHunter委員長のスタッフが表現しているように「沿岸警備隊には海軍の助けが必要であり、沿岸警備隊に対しては堪忍袋の緒が切れかかっている」状態にある現状がある
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日本の沿岸警備隊である「海上保安庁」は東シナ海や尖閣諸島で大車輪の活躍ですが、中国の沿岸警備隊もどきの「海警」が強力な火砲を備えた1万トン級の軍艦並の警備艇を導入するに至っては、その装備を再検討する必要に迫られています
必要なのは普通の砕氷船じゃない・・・米沿岸警備隊幹部の声は理解できます。一方で「実質1隻」の惨状を早期に手当てしたいとの思いもまっとうなご意見です。
これも一つの「グレーゾーン」を巡るジレンマでしょうか・・・。もちろん、好き勝手に独裁的指導者が力の行使に予算を傾斜配分できる中、普通の民主国家が苦しい立場におかれる「見慣れた光景」がそこにあるわけですが・・・
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