16日付米空軍web記事によれば、15日からフィリピンのクラーク空軍基地に、米海軍の攻撃&電子戦機EA-18G Growlerが4機展開した模様です。
このローテーション派遣は、今年4月14日にフィリピンを訪問したカーター国防長官が、緊迫する南シナ海対処の一環として発表したフィリピンへの作戦機派遣です
4月に発表された第一陣は、米比合同演習「Balikatan」に参加したA-10攻撃機5機、HH-60Gヘリ3機、1機のMC-130Hがそのまま現地に残る形で構成され、4月28日に派遣を終了していました。
第一陣帰国から8週間以上が経過しましたが、今回は米海軍機が西海岸のワシントン州から派遣されました
4月にローテーション派遣が発表になった際は、国防省報道官が「F-22の派遣もある」と発言していたところですが、かなりの「空白」を置いての海軍機、しかも攻撃型電子戦機の派遣を如何に理解すべきでしょうか?
まず16日付米空軍web記事によれば
●15日、米太平洋空軍が運営するJFACC(統合航空戦力運用コマンド)司令部の諸調整と計画を受け、米海軍航空戦力の最初の部隊として、ワシントン州のWhidbey Island海軍航空基地所属のEA-18G Growlerが、フィリピンのクラーク空軍基地に派遣され到着した
●4機の航空機と約120名で構成される「Electronic Attack Squadron:VAQ-138」からの派遣部隊は、米太平洋軍JFACCが指揮する派遣部隊で、比政府の承認を受け、両国の相互運用性と安全保障強力を向上させすための施策である。
●クラーク基地には比空軍のFA-50軽攻撃機(なんと韓国製)部隊が配置されており、同じ基地で米軍機を運用することで相互に訓練を行う
●同時に派遣された4機のEA-18Gは、国際法に則り、当地域の海上及び航空ドメインへのアクセスと情勢認識を強化する定期的な作戦を支援する。
●米海軍の電子戦航空部隊VAQ-138は、これまでにもインド太平洋地域の各所にこのような形で派遣された実績があり、地域の同盟国や友好国との演習などにも複数参加した経験を有している
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EA-18G GrowlerはFA-18を改良した電子戦専門機で、EF-111以降、今や米空軍が保有していないエスコート型の電子戦機です。
その電子戦能力は高く、単なる自己防御的電子戦ではなく、戦域全体の各種電波状況を分析把握(ESM)し、作戦全般の電子戦を支える能力を保有しています。この種の期待を持たない米空軍は、そのノウハウを継承するため、米海軍に懇願して連絡幹部を同部隊に派遣「させてもらっている」状態です
そんな能力を持つEA-18Gのフィリピン派遣ですので、単に米空軍の派遣戦力捻出が困難なためではなく、積極的に「南シナ海の電波情報収集」を狙っての派遣ではないかと邪推します
南シナ海の南沙諸島には、中国軍が戦闘機配備可能な3000m級滑走路を構築するだけではなく、防空兵器やステルス機も探知可能では言われる監視レーダーを配備している模様です
そのような中国軍アセットの「威力偵察」を、機動性の高い戦闘機型電子戦機に託したとは考えられないでしょうか?
米国防省報道官が派遣を示唆していたF-22も、相当の電子戦能力を備えていると言われており、ローテーション派遣への期待も高いのでしょうが、非常にデリケートなステルスコーティングの維持整備や機体性能の保全の観点から、まずは「EA-18G Growler」にお願いしたのではないでしょうか・・・
「比への米国航空戦力のローテーション派遣発表」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
「EA-18G Growler」の解説サイト各種
→https://ja.wikipedia.org/wiki/EA-18G_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
→http://island.geocities.jp/torakyojin88/ea18g.html