9日未明、中国海軍艦艇の尖閣諸島接続水域に侵入し、同日午前2時に外務次官が駐日中国大使に抗議したそうです
参議院選が実質スタートし、日本が大きな動きをとれないと見ての動きか、単にアジア安全保障会議での対中態勢や近日実施予定の日米印海軍演習への反発か、米国の「principled」口先介入を織り込んでの南シナ海化の序章かは不明ですが、日米の「実質的に打つ手なし」または「政治的決断の意志無し」を見越しての中国側の動きでしょう
本件に関し、石破茂・元防衛大臣が10日付のブログで、中国海軍艦艇の尖閣諸島接続水域侵入について法制整備の不足を取り上げコメントしていますので、ご紹介しています。
中国に対し何も言わない沖縄知事にも一言欲しいところですが、そこは政治家としての我慢でしょう
10日付石破茂・元防衛大臣のブログによれば
●9日未明、ロシア艦に続き中国人民解放軍の軍艦が日本の「接続水域」に入ったことが、もう一度我が国の安全保障法制を考える機会になることを願います。国家主権と警察権的対応との関係は党などにおいて再度突き詰めた議論があるべきではないかと考えます。
●「接続水域」は原則的に公海であって沿岸国による強制措置は出来ません。
●しかし仮に、公船たる軍艦が領海内に入った時、警察権の行使である海上警備行動でどこまで有効に対処できるのか。国連海洋法条約との整合も含めて精緻に詰めた議論が必要です。
●領空侵犯対処措置も同様ですが、侵害されている法益が国家主権であり、侵害している主体が主権国家である場合、警察権で対応することが適当なのか、未だに私は理解できません。
●そもそも日本の自衛隊の行動を律する自衛隊法自体、その前身である警察予備隊の警察法的法制を踏襲しているため、その書き方は「~をすることができる」という「ポジティブ・リスト形式」になっており、してはならないことのみが書かれている諸外国の「ネガティブ・リスト形式」とは大きく異なっています。
●国内の治安維持を目的として創設された警察予備隊においては当然のことだったでしょうが、国家の独立維持を目的として保安隊が創設された時、なぜこれを見直さなかったのか不可解です。
●恐らく日本国憲法第9条との整合性の議論を回避したかったがためではないかと推測されますが、これで本当に抑止力が発揮されるものなのかどうか。これもかねてよりずっと訴え続けていることです
温故知新で石破茂氏の防衛省への言葉を
2016年2月17日の統合運用10周年によせて
●10周年記念式典で来賓としてスピーチをして参りました。それまで陸・海・空がそれぞれに運用を行っていたものを一元化するという、極めて当然のことが長く行われていなかったこと自体が不思議なことですが、ここまでの道のりは実に多難なものでしたし、これからもそれは続いていくものです。
●(防衛庁長官や防衛大臣当時、)「部分最適の総和は決して全体最適ではない」「『内局と制服、陸・海・空、それぞれが互いを非難し合い、防衛省・自衛隊が一致して非難する対象は政治の無知・無理解や予算査定に厳しい財務省』という責任回避体質を改めよ」などと随分と嫌われることを言いながら改革を進めていた頃のことが脳裏に甦りました。
●旧軍時代、「陸海総力を挙げて戦い、余力を持って英米に当たる」と揶揄されたこともあって、自衛隊の前身である保安隊(警察予備隊ではなく)創設時にも似たような議論はあったようですが、陸・海の制服組(空はまだ存在していなかった)、そして内局の反対により、統合運用も統合的能力整備も実現することはありませんでした
●創設時に米軍から何らのサジェッションも無かったとすればそれはそれでとても不思議なことですが。
2010年11月11日の発言
●防衛省改革というモノがどうして止まっているのか。
●つまり、陸海空の装備が、本当に統合オペレーションを頭に入れて、陸は、海は、空はとこれだけという予算の立て方をしているかというと、私は3年間防衛庁や防衛省にいたが、絶対にそうだとは思わない。
●陸は陸、海は海、空は空・・それは絶対譲らない。シェアも変わらない。運用だけ統合でやっても、防衛力整備を陸海空バラバラにやっている限り、信用がならないと思っている。
●陸海空がバラバラに内局へ行って、内局の分からず屋と言う話になって、政治が馬鹿だと言って、それでおしまい。そしてみんなが何となく天を仰いで、この国はだめだとか言っている。
●こんなことではどうにもならない。朝鮮半島、台湾有事等々、それぞれどのようなオペレーションになってどのような装備が必要か、みんなが頭をそろえて防衛力を整備しなければならないのに、そうなっていない。
●私は防衛力整備局を作って、制服も内局も入って議論して、防衛省として自衛隊としてこれがあるべき防衛力だと言えなければならない。そうでないと、結局財務省に足元を見られる。
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「~をすることができる」という「ポジティブ・リスト形式」から、してはならないことのみが書かれている諸外国の「ネガティブ・リスト形式」への移行は、日本にとって喫緊の課題です
今や「事件は現場で起きている」状態です。現場が状況に合わせ、日本の国益を最大限に追求できる最善の策を迅速に選択できるよう、政治は「ネガティブ・リスト形式」への移行を急ぐべきです!!!
一方で、中国の挑発に乗らず、延々と続く長いにらみ合いに耐えることが求めらるものの、それを利用し、対領空侵犯措置だけで自らの帝国を作り上げたい「戦闘機命派」には注意が必要です。
最近は影が薄い石破茂氏ですが、真綿に包んだ発言ながら本質を付くご指摘は流石です。
「統合10周年」や「2010年」の発言は、真実ありのまま描写ですので、率直な発言を可能にする勇気に敬意を表したいと思います
ただですねぇ・・・事件や事故が発生した際に見せた、潮を引くように姿を消し、前線部隊に背を向けるような姿勢は、関係各位の記憶から容易に消せないでしょう
天然ぼけの防衛大臣や、選挙に向け、安保問題を避けるように保育所問題発言を急増させる民主党の元防衛副大臣は、何かの役に立つのでしょうか?
時は有事の指揮官を求めているような気がします
石破茂・元防衛大臣関連の記事
「統合10周年を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-20
「防衛予算と中国脅威を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
「石破元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「2003年のクリスマスイブ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-23-1