5月26日、Welsh空軍参謀総長が米空軍協会朝食会で講演し、7月1日に退役を控え、後任者も決定した気楽さもあってか、米空軍が直面する各種課題に関して色々言及しています。
以下で取り上げる以外にも、人員不足や対ISIL作戦についても語ったようですが、本日は「将軍ポストが減らない外部要因」や「核兵器近代化は別枠予算で」や「F-22再生産も検討に値する」発言をご紹介します
将軍ポストが減らない外部要因
●米空軍は2015年、中将ポストを15個削減しようと提案したが、8個の削減に止まった。削減できなかったのは、米空軍以外からの反対があったからだ。
●米空軍全体の規模が縮小する中で、なぜ将軍ポストが減らないかについて質問を受けるのは自然なことだ。米空軍が正当性を説明できないポストは、存在すべきではない
●将軍ポストを削減するのは非常に難しい。この将軍ポストは誰々の選挙区だとか、誰々の州だ、とか言った話も理由の一つだ。
●また将軍ポストを削減することに伴い、その配下の幹部のポストが削減される波及的影響も理由になる。
空軍の核兵器近代化も別枠予算で
●米空軍は将来計画を立てているが、核兵器の近代化だけは予算確保の目途が立っていない。米国が今後30~50年を見据え、軍事的にも超大国で有り続けたいと望むのであれば、投資が必要になる
●この議論は先延ばしにすべきものではなく、今始めなければならない議論である。核の3本柱は国家安全保障の背骨であるが、あまりにも老朽化している
●米海軍も同様に(戦略原潜更新の)予算が不十分な状態にあり、議会には同潜水艦用に別枠の予算を確保すべきとの意見もある
●米空軍は公式に別枠を要求していないし、そんな提案を受けた事も無いが、その様な予算枠が設けられれば、米空軍が担当する2本柱(ICBMと爆撃機)にも適用を望む
F-22再生産も検討に値する
●F-22生産ライン再立ち上げ検討が、乱暴な意見(a wild idea)だとは思わない。F-22は、最前線で作戦運用者が望むことを全て遂行し得ることが証明済みの装備だからだ。
●米空軍が行っている「Air Dominance 2030」検討でも、限られた時間内でのオプションとしては、第6世代戦闘機の追求よりもF-22増強の方が優れているとの評価もあり得る
●議会からの要求でF-22再生産コストを再び見積もっているが、まだ結論は出ていない。しかし再生産は米空軍全体に負の波及的影響が有り、米空軍としては経費的に許容出来ない
●しかし、米空軍は戦闘機不足の問題と立ち向かうための議論を必要としており、その結論が単一の航空機(第6世代戦闘機)に落ち着くとは限らない
●米空軍は(Air Dominance 2030検討の中で)、無人の自動化された援護機、弾薬庫航空機、群れをなす無人機なども検討し、この戦闘機不足に対応しようとしている
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「将軍ポストが減らない外部要因」や「核兵器近代化は別枠予算で」との話は、軍人トップが語るには極めて機微な話だと思いますが、大らかに話している様子が窺えます。恐いものなしですね。
F-22再生産とAir Dominance 2030検討を絡めた発言は、よく分からないところがありますが、次世代の制空は単一の航空機では解決しない、また無人援護機や弾薬庫航空機や無人機の群れに関しては、これまでの空軍幹部の発言と同じ流れです
でも、核抑止を国家安全保障の重要事項としながら、米空軍内で優先順位が低いのは、単に戦闘機パイロットが、戦闘機が予算の最優先に据えられているからではないですか?
米海軍が空母や艦載機や艦艇や攻撃潜水艦を優先し、戦力原潜を優先扱いせず、別枠で予算要求するように・・・
2030年代を見据えた米空軍戦略戦術研究
「空軍研究所に検討チーム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25-1
「次期戦闘機は航続性と搭載量重視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「AFMC司令官が次世代制空検討説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-23
「小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18
「海軍も無人機の群れ:Swarm」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10