4月27日付Defense-News記事が、F-35の自動兵站情報システムALISのサーバー構成に関する米会計検査院の懸念(4月のレポートで指摘)、つまり「ALISサーバーには予備が無く、サーバーの故障でF-35は飛行できなくなる可能性がある」に関して取り上げています
ALISは、F-35を運用する部隊全てと関連企業を中央サーバーや処理装置を通して連接し、機体に発生する様々なトラブルを自動診断し、交換部品の在庫管理や発注を円滑にし、機体毎のデータや記録もしっかり管理してくれるシステムです
他の機種にはこのようなシステムは無く、世界で初めての試みとして試行錯誤が行われています
結論は、バックアップサーバーが無いのは事実で、問題も認識されており、順次予備が整備されつつある。ALISとの連接が途切れても、30日以内なら引き続きF-35は運用可能。停電の恐れや連接が困難な地域にF-35が展開する場合の懸念は存在する・・・といった具合でしょうか
4月27日付Defense-News記事によれば
●ALISの構成
世界に1台のサーバーALOU(Autonomic Logistics Operating Unit)
各国1台のサーバーCPE(Central Point of Entry)
各飛行部隊に1台のSOU(Standard Operating Unit)
●ALISシステムの各サーバーは、通常のインターネットではなく、暗号化されたネットか、衛星通信で連接される
●国防省F-35計画室長のBogdan中将は、会計検査院の「全F-35が飛行不能になる恐れ」との指摘を、「全く事実ではない」と否定した
●国防省F-35計画室はシステム重複性を構築すべく取り組んでおり、追加で2つのALOUをバックアップで調達するよう取り組み、米国のCPEを別の場所に移そうとしている
●当面の運用に問題はないと同計画室は考えており、全てのF-35は30日以内であれば、個々にデータを蓄積しておいて単独運用可能だと会計検査院に回答している。問題は在るが、それほど深刻ではないとの立場である
●各部隊のSOUは約30日間のデータを保存でき、単独で運用可能である。ALISシステムとの連接が再び確保された時に、CPEにデータをアップロードする
●本件について米空軍Materiel Command司令官は、PCをインターネットに接続しなくても使用可能なように、PC単独での使用に何の問題も生じないし、F-35の飛行に何の問題も無いと説明している
●しかし同司令官は同時に、ある時点で使用者はALISシステムに、つまりサプライチェーンに対し、様々な記録データを提供して部品交換の時間管理をシステムに行わせる必要があると強調した
海兵隊F-35部隊ではALIS好印象
●4月14日、昨年からF-35Bを運用している南部加州のBeaufort海兵隊航空基地を記者団が訪問し、整備担当者たちから、ALISにより整備作業が楽になっているとの話を聞いた
●ある整備員は、F-18と比較し10倍整備が楽だと語り、当初は問題も多かったが、ソフト等の改修により日々改善されていると語った
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海兵隊整備員たちの「好印象」には励まされますが、記者団用に準備された「桜」でないことを祈ります
記事が紹介しているALISシステムの問題は、ソフト開発の問題でシステム全体の成熟が遅れていることを示しています。幹となる部分がいつまでたっても完成しないため、システムの重複性や強靭性が後回しになっている現状を明らかにしています
記事とは別に、サイバー防御面で企業システム等との連接に問題が残っているとも言われており、突貫作業であることを伺わせます。
時間と共に解決するのかもしれませんが、F-35を購入する諸外国の習慣とか希望とかを聞く余裕は全く無い状況でしょう。聞いても返事が返ってくるのは半年後で、既に役に立たない情報で・・・なんてことになっていないか気になります
ALIS関連の記事
「ALISが唯一の障害だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-27-1
「民間団体が辛辣なF-35現状評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-20
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「整備拠点関連の話」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1