4月26日、上院軍事委員会で証言した米国防省のMichael Gilmore試験評価部長は、F-35が引き続き抱える複数の問題により、完成版F-35の評価試験開始が予定時期より少なくとも半年、恐らく1年は遅れるだろうと語りました
また国防次官やF-35計画室長は、米空軍F-35の初期運用態勢の宣言は10月1日になるだろうと語り、8月1日に宣言できない「唯一の犯人」は自動兵站情報システムALISだと同軍事委員会で証言しました
同じ国防省内でも、議会によって「お目付け役」として設置された試験評価部と、実際に事業を推進する次官や担当部署の温度差を、際立たせることになった26日の上院軍事委員会だったようです
27日付米空軍協会web記事によれば
●Gilmore試験評価部長は、完全版F-35の評価試験を遅らせる問題点として、ソフトの不安定性、電子戦の能力不足(shortfalls)、ミサイル警報装置(AESAレーダーでの受信問題)、空中給油に必要な時間(他機より2~3倍必要)、非公開システム不具合、全ての形態での機関砲問題、そして自動兵站情報システムALISの不具合を上げた
●なお、米空軍バージョンの評価試験(IOT&E)は2017年10月に予定されているが、2018年5月までに開始できそうもないとGilmore試験評価部長は語った
注・・・記事の中の「Operational, test, and evaluation of the full-up F-35」との表現が、完全版ソフト「3F」搭載の完成版F-35の試験を表現しているのか、米空軍F-35の話か、短い記事からは良く分かりません
米空軍F-35のIOCは10月1日か
●26日、ケンドール国防次官(開発技術調達担当)とBogdan国防省F-35計画室長が上院軍事委員会で証言し、米空軍F-35の初期運用態勢IOCは、当初計画の8月1日ではなく、恐らく10月1日になるだろうと語った
●Bogdan室長は、ALISを除く他のシステムや部隊の態勢は全て8月1日のIOCに間に合うが、ALISだけが間に合わないと説明した
●Bogdan室長はALISに関し、国防省が運用するシステムだが、ロッキード社やPratt & Whitney社のコンピュータシステムと連接してデータのやり取りをする必要があり、サイバー防護の観点が課題となっていると語った
●ケンドール次官は、IOC宣言の判断は米空軍が行うが、既にIOC宣言をした海兵隊と同じように、機体が快適に機能しなければ宣言はしないだろうと語った
●なお両者とも、8月のIOCは難しいが、12月の最終期限までには確実にIOC宣言ができると証言した
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Gilmore試験評価部長と、ケンドール次官とBogdan室長が別々に証言したのか、3名並んで証言したのか不明ですが、別の視点での発言内容を取り上げてはいるものの、悲観派と楽観派にくっきり分かれています。
仮にIOCを宣言しても、限定的な能力発揮しかできないことには変わりなく、Gilmore氏が指摘した問題点をどのように扱ってIOC宣言するのか興味津々です
F-35の問題点を整理
「民間団体が辛辣なF-35現状評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-20
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「整備拠点関連の話」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1