7日付Defense-Newsが、米陸軍が独自に開発中の防空ミサイル発射機MML(多用途発射機:Multi-Mission Launcher)が、巡航ミサイル迎撃試験に成功したと報じています。
MMLは、既存の多様なミサイルを防空用に活用することを目指しており、既に携帯防空ミサイルStingerや攻撃ヘリ搭載Longbow Hellfireの発射も可能となっているようです
今回の試験では、戦闘機が搭載する空対空赤外線追尾ミサイルの「AIM-9X」が使用され、MMLからの発射及び無人機と巡航ミサイル要撃能力が試験されたようです
このMMLを用いた防空システムはIFPC(Indirect Fire Protection Capability)と呼ばれ、その名「Indirect」が示すように、メインの防空システムを補完するような2次的な役割を期待されているようです
先日ご紹介したRANDの台湾防空体制への提言レポートでも、パトリオット防空ミサイルを補完するように、20~40個部隊のIFPCを配備する構想が示されていました
当該レポートでは、1個部隊が4両の移動式発射機を保有し、各発射機が15発ミサイルを搭載可能となっていました
7日付Defense-Newsによれば
●MMLから「AIM-9X」を発射試験が行われ、3月29日には無人機、4月1日には巡航ミサイルの要撃に成功した。試験は「IFPC Inc 2-I」の性能確認試験の一環として行われた
●既に3月には、「Stinger」と「Longbow Hellfire」の発射試験も行われている
●また4日には、弾頭がないが運動エネルギーでロケット弾等を要撃するMHKT(Miniature Hit-to-Kill)ミサイルの発射試験にも成功している
●他のミサイルについても、今後発射可能性を試験する予定
●米陸軍は約140億円を掛けてMMLのプロトタイプを作成し、「Sentinel radar」と指揮統制装置「Integrated Air and Missile Defense Battle Command System (IBCS)」とともに各種データ収集を行っている
●米陸軍内の研究機関で開発することで、経費を1/3に抑えられると言われており、米陸軍は更に6両MMLを開発試作し、2019年度にIFPCの初期運用体制を確立したいと計画している
イスラエル製防空ミサイルも発射成功
●14日、米陸軍が開発するIFPCのMMLから、Iron Dome防空システムのミサイルである「Tamir missile」の発射にも成功し、無人機目標を迎撃した
●ホワイトサンズ演習場で行われた試験であるが、外国のミサイルが発射試験されたのは初めて
●Iron Dome防空システムは米イスラエル共同開発で、主に短射程のロケット弾や迫撃防弾の迎撃を目的としたもので、パレスチナ過激派やヒズボラからイスラエルの都市を守る役割を果たしている
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RAND研究所は台湾に対し、戦闘機の機数を削減し、戦闘機への投資を抑制し、防空ミサイルへの投資を増やすことで、多様なレベルの紛争対処がより効率的&効果的に行えると、膨大な分析を元に提言しています
防空ミサイル強化の一環として、パトリオットシステムより安価で大量導入が可能なシステムとしてIFPC導入を台湾に推奨したわけです
前線部隊や狭いエリアの防空能力かもしれませんが、中国の強力なミサイル攻撃等を想定し、如何に抑止力を向上させるかに真摯な取り組みと言えましょう。
戦闘機命派には、目を見開いて観察して頂きたいものです
RAND研究所が台湾防空体制に提言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07