14日、Northrop Grumman社(NG社)が記者団をカリフォルニア州の研究拠点に招待し、同社が検討中の第6世代戦闘機(F-22やFA-18の後継として2030年代に導入)のコンセプトについてアピールした模様です
F-35の開発や製造がまだまだ序の口の段階にありますが、次期戦闘機に関しては米空軍が基礎的な検討を開始し、Lockheed Martinやボーイングも検討開始をアピールし始めているところです。
NG社が「旅費」等を負担する宣伝活動で、15日付Defense-Newsは正直に「申し出を受け入れた」と明示して記事をアップしています
NG社も明確にコンセプトを固めているわけではなく、同社の航空機部門副社長や開発担当副社長が様々な論点を提示して検討状況を説明しており、15日付Defense-News記事は興味深いレポートとなっていますでご紹介いたします
デジタル「白血球」でサイバー対処
●サイバーでのハッキングが横行する世界に於いて、全てのサイバー攻撃を防止する事は不可能に近いが、なんとか侵入の試みを探知して被害を防がなければならない
●人間身体も皮膚で全ての病気の感染を防ぐことは出来ないが、「白血球」の持つ免疫機能という信じがたく素晴らしいシステムで、侵入したウイルスが人体に悪影響を及ぼすのを防いでいる
●2030年代に我々が導入するシステムには、これに似た仕組みを取り入れる。次世代の制空は、サイバー攻撃被害を防止する「デジタル版白血球」によってもたらされる
速度と航続距離のトレードオフ
●速度と航続距離はトレードオフの関係にある。歴史的に戦闘機開発は速度や機動性を重視してきたが、NG社の技術開発担当副社長は、将来戦闘機は速度を犠牲にして航続性能を求めるのではと考えている
●同副社長は、将来は戦闘機運用の根拠基地確保がより困難になることから、優れた航続性能が極めて重要になると力説し、「亜音速機は超音速機より遙かに航続距離が長い」と付け加えた
●そして「結論にはまだ早いが、次期戦闘機は超音速性能は持つが、その程度は現代の最高レベルではなく、航続性能がより重要性を示すことになろう」と語った
大量の熱処理が大きな課題
●エネルギー兵器を搭載して超音速飛行を行う第6世代戦闘機の大きな課題の一つは、熱処理である。特に高出力レーザー兵器を搭載する際に、この問題が大きなものとなる
●現在考えられている対処では不十分で、「我々は多くの時間をこの問題解決に投入している状態で、発生する熱をまとめて再利用できないかの検討もその一つだ」と語った
有人機か無人機か
●これはもちろん、軍需産業や技術の問題だけでなく、国防省がどう考えるかの問題でもある。当然、単純な問題ではない。
●NG社航空機担当副社長は「物理的に人間が操縦席に座るのではなく、離れた場所から操縦するのだろう」と語り、「人間が操縦席にいて果たすべき任務があるか? それは任務は何か?」とも自問した
●技術担当副社長は、有人機と無人機の混合編隊を想定し、無人アセットが「人間のmission commander」に指示されるイメージを語った
●航空担当副社長は「ロボットは人間の頭脳の代替は出来ない」と語り、その中でも「NG社はリアルタイムの判断ができるようなソフト設計に取り組んでいる」と語った
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短節にポイントや論点がまとめられ、新年のスタートに相応しい記事だと思いご紹介しました
技術的な面では、熱処理やデジタル白血球とのプロの視点が興味深いですが、特に戦略戦術面からの視点「速度と航続距離のトレードオフ」には深く感銘を受けました
作戦基盤がますます脆弱になる中、このような視点が、日本が「亡国のF-35」を選定する際にあったのかどうか・・・。
いろいろと皆様の刺激になればと思います
次期(第6世代)戦闘機を考える記事
「kill chain全体で考えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27
「Air Dominance 2030検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-09
「海空共同で次期戦闘機検討へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-30
「将来制空機は大型機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「女性将軍が次世代制空を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-23
「海長官:F-35は最後の有人戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-17
「空軍参謀総長当面有人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-23
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22