17日付の米議会調査局CRSレポート(実質7ページ)が、老朽化が進み更新時期が重なる米空軍の各種航空機調達に関し、予算に伸びが期待出来ない中、何らかの削減や延期や予算振り回しや別枠確保をしなければ、現調達計画は破綻すると指摘し、いくつかの選択肢を提示しています
主要な作戦機近代化(更新)事業として「9つの事業」、つまりLRS-B, KC-46, F-35, C-130、各種無人機、JSTARS後継機、救難ヘリ、次期練習機T-X、大統領専用機後継を取り上げ、吟味の対象としています
「9つの事業」には規模の差があり、大きな事業に手を着ける対処案が提示されていますが、どれもそれなりの影響や実行可能性の問題を抱えており、「快刀乱麻」の案が提示されている訳ではありません。
それでも、米空軍が抱える予算問題を理解する一助とはなりますので、ご参考までに紹介します
なお、CRSレポート現物は
→http://www.fas.org/sgp/crs/weapons/R44305.pdf
18日付Defense-News記事によれば
●強制削減の完全実施が2年間猶予された事で、若干の息抜きが出来るとは言え、米空軍が現在有している野心的な航空機更新計画は遂行が困難になろう。これらには空軍が優先事業として推進してきた、LRS-B、F-35及びKC-46Aも含まれる
●結論から言えば、米空軍が何らかの予算枠増を確保出来なければ、F-35の各年度調達機数の削減か、KC-Y(KC-46の次の空中給油機計画)の延期か、次期爆撃機LRS-B予算を別枠扱いにするかを迫られるだろう
●LRS-B予算をどのように捻出するかは大きな論点である。現在は研究開発予算であるLRS-B予算は、今後5年間で3倍になる。救難ヘリや次期練習機やJSTARS後継機も、今後調達フェーズに入ることを考えれば、予算枠争いが生起するだろう
●次期爆撃機LRS-Bについては、米海軍がオハイオ級戦略原潜SSBN-X開発で認めさせた「National Sea-Based Deterrence Fund」のような、軍種予算とは別枠の予算(non-service budget)を確保する手段も考えられる。
●この戦略原潜別枠は、SSBN-X開発が戦略核抑止という国家事業で有り、海軍だけの負わせるべき任務では無いことや、米海軍の艦艇建造予算を確保する必要性から認められた経緯がある
●CRSレポートは、核任務も担うLRS-BにもSSBN-Xと同様のロジックが適応でき、「別枠」が確保できる可能性を指摘している。ただし、下院軍事委員会の小委員長であるフォーブス議員は、「戦略核抑止の7割を担うSSBN-Xは特別な存在で有り、通常戦任務も負うLRS-Bにも適応できるかは疑問がある」との見解を示している
予算の4割以上を占めるF-35について
●F-35は、今後5年間の主要事業予算の「42%」をしめる大口事業で有り、削減対象となる可能性がある事業である
●ある分析では、米空軍用F-35の調達機数を年60機から48機に削減すれば、年間約1200億円を削減できて他に振り回すことができることになっているが、この削減によってF-35の製造単価にどのような影響を受け、他軍種や同盟国のコスト負担に繋がるかは考慮されていない
●F-35の全調達機数に関しては、マケイン上院議員(上院軍事委員長)が10月に「購入機数を削減せねばならない」「現在の計画は実現できない数だ」と発言している
●これに対し米空軍のカーライル戦闘コマンド司令官は、「調達機数について決定するのは早すぎる。将来を見据え、何をすべきかを吟味し、そして調達機数を議論すべきだろう。まだ初期運用態勢も確立していない機種の購入機数を議論するのは時期尚早だ」と答えている
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CRSレポートは、予算の増額、米空軍の作戦運用経費や維持整備費からに流用、研究開発予算の抑制先送りなどを対策に上げていますが、予算の内訳グラフから見る限り、F-35とLRS-Bに手を着けずに対策を打ち出すのは困難でしょう
最初に申し上げたように本レポートは、対策案にそれほどの意味は無く、予算計画の現状を把握し、その実現不可能ぶりを把握するためのレポートと捕らえるべきでしょう
CRSレポート現物(実質7ページ)は
→http://www.fas.org/sgp/crs/weapons/R44305.pdf