未だF-35購入未定:共同開発国デンマーク

Christensen.jpg5日付Defense-Newsは、F-35の共同開発国であるデンマークが、相次ぐ政権交代や財政支出見直し、更にロシア軍の活発化を受けた国防投資検討のため、老朽化が進むF-16後継機の選定作業が停滞している状況や関連情報を紹介しています。
6月に誕生した保守系リベラル新政権は、過去2年間で3人目となるPeter Christensen国防相(若干40歳!)のもとで、来年4月末までに次期戦闘機をF-35とFA-18とタイフーンから選定するとしているところです
ただしChristensen国防相は、政府全体の財政計画やデンマーク軍全体の投資計画が煮詰まってからでないと、次期戦闘機だけを決定することは出来ないと議会国防委員会PDCで述べているようです
F-35の価格高騰と将来経費の不透明さ、ロシアの動きを踏まえた同国陸軍への投資の必要性、政府全体の予算配分再検討等々、様々な要素が絡みつつ、安定しない政権基盤を抱えつつ、当初は48機だったF-35購入計画が揺れ動いています
5日付Defense-News記事によれば
F-35 Front.jpg議会国防委員会(PDC)は、デンマークが約350億円を共同開発に投資しているF-35の遅延と現状について国防相に問いただしているが、国防相がF-35についてほとんど言及せず政府全体の財政計画やデンマーク軍全体の投資計画を待って決定すると述べていることに不満を持っている
●同国国防省は、F-16の後継機を当初は48機導入する計画だったが、予算等の成約や価格高騰も有り、現在の候補3機種には36機、30機及び24機の場合の経費見積もりを提出させて検討している
●デンマークは次期戦闘機の購入数を24機にまで抑え、浮いた経費で北極圏のデンマーク領であるグリーンランドやFaroe Islandsを含む、厳しい気象条件でも運用可能な無人機導入でカバーしようと考えているとの噂もある
●いずれにしても、デンマーク新政権は次期戦闘機選定が大きな予算事業である事から、選定に関する「完全な透明性」を約束しており、国防相も「選定に関する公のディベート等もあるだろう」と述べている。
Christensen2.jpg●だたし国防相は「結果発表は財政計画が決定されてからだ」と述べており、国全体の財政計画だけでなく、陸軍装甲車両や砲兵火力の近代化予算等を含む国防投資全体の計画を踏まえる意向を示している
●同国の軍需産業関係者は、新政権や新国防相が、装備品の選択を同国軍需産業への影響をきちんと踏まえて考えているのか心配しており、「例えばF-35の場合だと、ロッキードとの間でデンマーク国内軍需産業との協力を確保する必要が政府にはある」と訴えている
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F-35購入に悩む典型的な国の例です
猛烈な米国からの売り込みを受け、F-35共同研究や購入に一度は踏み出したものの、開発の遅れている間に各国の政権も替わり、F-35の価格高騰や種々の問題が明らかになるにつれ、議会や国民への説明の「つじつま」が会わなくなって再検討を迫られている典型例です
カナダも「ちょっと変人の野党系若手首相」の誕生により、F-35購入の再検討に向かっています。
F-35-test.jpgカナダが約60機の調達を辞めると、1機当たりのコストが1.2億円上昇するとF-35計画室長は語っていましたが、デンマークの48機(当初計画数)を失うとどうなるのでしょうか?
イタリアや日本やトルコは淡々と前進の様子ですが、財政基盤の弱いイタリア(90機を計画)など、どうなるか分かりません。
日本は単に「亡国のF-35」を追求するメディアが育っていないだけで「平穏」な状態にありますが、戦略環境や「脅威の変化」を踏まえれば、国防投資を巡る「いの一番」の大問題なのですが・・・
関連のF-35記事
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
「イタリアFACOが初号機納入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05-2

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