10月30日に中国軍webサイトが南シナ海で活動する海軍戦闘機J-11BHの写真を公開し、西側プレス(日本を除く)では「西沙諸島のWoody Island:永興島」に展開した戦闘機の活動写真だとの見方が共有されつつあります。
米国防省は本件に関し「だんまり」ですが、状況を確認しているのでしょうか? あまり聞きたくないニュースでしょうが・・・。
「西沙諸島に中国戦闘機展開?」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02-1
当然、南シナ海正面で最南端の中国軍航空基地だった海南島より、中国の航空戦力拠点が約360㎞南下したインパクトは大きいのですが、その辺りをPaul Giarra氏等が整理していますのでご紹介します
また一方で、亜熱帯の海に近接した飛行場での戦闘機の運用は、「天候や塩害等の影響もあり単純ではない」との指摘もありますので、「プロの視点」としてご紹介します
8日付Defense-News記事によれば
●「Woody Island:永興島」に新しい戦闘機の拠点ができたとすれば、EP-3電子偵察機やP-8対潜哨戒機などの米軍機の活動に障害となるだろう。2001年にEP-3と中国戦闘機が接触した事件や、2014年に中国気がP-8に嫌がらせ飛行を行ったことが示している
●CSISのBonnie Glaser南シナ海研究部長は、中国は、米国や他の周辺国、および自国民に対し自国の領域を守る意図を示そうとしている、とみている
●さらに南の「スプラトリー諸島」には、更に3か所(Subi Reef, Mischief Reef and Fiery Cross)で飛行場や港湾施設の建設が進んでおり、格納庫や燃料タンクを含む施設からすれば、少なくとも定期的に航空戦力がローテーションで派遣することが可能になる
●またPaul Giarra氏は、中国戦闘機やミサイル部隊の南シナ海展開が、台湾や米国を含むすべての関係国に負の役割を果たすとして、いくつかの視点で整理している
●まず「中国の海上行動を防御できる」、また「軍事的に中国の主張を固め、法的な他国の訴え遂行を困難にする」、「軍事作戦で中国を諸島の拠点から排除することが困難になる」、「中国本土を含めた軍事拠点のネットワーク形成拡大に貢献する」と指摘している
●更にGiarra氏は、「軍事的に軍用機の作戦可能半径を劇的に拡大し、給油や要員交替で連続的な任務遂行が可能になる」ことや、「中国によるA2AD網の拡大や海洋進出エリア拡大をサポートする」点を指摘している
一方で南海での作戦航空機運用は容易でない
●台湾の研究機関トップのAlexander Huang氏は、台湾空軍がMagong空軍基地(台湾西方50㎞の台湾海峡にある澎湖諸島:Penghu Islands)に戦闘機を展開させている経験からすれば、天候や塩害対処は最新の航空機には厳しい環境であり、実質的な軍事的影響を結論付けるのは時期尚早だと語っている
●CSISのGlaser南シナ海部長も同様の見方を持っており、「私の理解では、スプラトリー諸島には戦闘機は短期間しか展開できない。塩害で長期の滞在は機体に問題を起こす」と語っている
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「西沙諸島のWoody Island」や南の「スプラトリー諸島」は、台湾のMagong空軍基地よりはるか南にありますから、さぞや「塩害」が激しいことでしょう。
また、周りに緊急避難する「代替飛行場」も確保できない中、サメも豊富な海上で飛行するのは「しびれる」任務かも知れません。
でも、「戦略核ミサイル搭載潜水艦の聖域」を南シナ海に打ち立てたい中国軍のことですから、なんでも命じてやってしまうのでしょう・・・たぶん。時間が多少かかっても。
激動:中国軍と「航行の自由作戦」
「海上民兵:maritime militia」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-04
「西沙諸島に中国戦闘機展開?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02-1
「米海軍筋が航行の自由作戦を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-01
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30