タイが中国潜水艦購入決断で米と関係悪化

USA Thailand2.jpg12日付Defense-News記事は、タイが7月に入って中国製Type 039A Yuan級攻撃潜水艦3隻の購入を決定したことで、2014年に軍事クーデターで軍事政権が誕生して以来ギクシャクしている米タイ関係が、ますます悪化し、中国とタイが接近するのではと報じています
既に伝統ある「Cobra Gold演習」にも影を落とし、2016年の演習協議が延期される状態のようですが、米国にありがちな「民主主義」や「人権問題」に拘りすぎることで問題を複雑化し悪いパターンに陥っているように思います
12日付Defense-News記事によれば
●2014年5月にクーデターで軍事政権が誕生したことを受け、米国は毎年開催の「Cobra Gold演習」でのプレゼンスを低下させ、2016年同演習の協議も延期している
Cobra Gold2.jpgマレーシアの海洋問題研究機関の専門家は、「米国は軍事政権に冷淡な態度を取っており、Cobra Goldではその姿勢が明確だった」と述べている
●また、タイ軍事政権が起草中の新憲法案も、特定グループが勢力を得ることが出来ないよう起案されており、反民主主義的な記述だとして間違いなく米国との問題となるだろうと見ている
●「単に中国との接近なら理解出来るが、ドイツやスウェーデン製の選択肢がある中での中国潜水艦の購入は、より強い意味を持つ」と同専門家は語った
バンコクの大学の安全保障講座長は、「タイ政権から米国に対する、タイの価値観や国益を注意深く扱うべきとの警報」であり、中国潜水艦の購入決定が米タイ関係を悪化させると見ている
●また、米国の軍事政権批判がタイを中国よりに向かわせる主因だとし、「2006年と2014年のタイ軍事クーデター関係軍人を、中国が賞賛している」、「中国がタイ軍事政権側に立っていることが、タイの体面や正当性を大きく支えている」とも分析している
シンガポールの専門家も、米国がクーデターや軍事政権の存在でタイに罰を与えることが、米国に害を及ぼすことをタイは示そうとしていると分析している。米国がアジアでの同盟強化に努力する中で、タイは中国との関係強化も可能だと示そうとしていると。
タイの国防関係者も驚く
Yuan-class.jpg中国潜水艦の購入決定はタイの国防関係者をも驚かせている。タイ軍の中国装備品への懸念は広く知られており、中国との潜水艦取引は順調に進まないと考える人たちも居る。また、中国潜水艦購入が米国や西側諸国に対する戦術だと見る者も居る。
●また、タイがASEANをそれなりに重視し、南シナ海での最近の中国の行動に反対していることも事実である
●冷戦間、米タイ軍事関係は堅強で、「Cobra Gold演習」も1982年に開始されている。一方で、80年代以降のタイ海軍の艦艇調達先は世界に分散し、中国、イタリア、シンガポール、スコットランド、スペイン、米国である
90年代に入ると、中国から2隻のフリゲート艦と4隻のJianghu III級ミサイルフリゲートを購入している。しかし両艦とも、第3国装備の融合に関する技術的問題に問題を抱えている
●タイはまた、90年代にスペインから空母を調達したが、維持整備の問題で9機のハリアーは運用不能で、空母も大部分の時間はドックに係留されている
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Cobra Gold.jpgまんぐーすはアジア人なので、混乱していたタイ社会が安定したのは軍事クーデターと軍事政権のお陰だと思います
以前、タイの政治を解説した「クーデターの政治学」(著:岡崎久彦ら)との新書をご紹介し、如何にクーデターがタイ社会で機能しているかをご紹介しました。
タイのクーデターを解説した新書「クーデターの政治学」
→http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/2375656.html
今や国王の権威も低下し、タイのクーデターも昔ほどスッキリでは無いにしろ、単純に「民主主義」「人権」を基準に「治世」は評価出来ないと思います。
米国にはもっと「大人になれよ」と言いたいです
Type 039A Yuan級攻撃潜水艦について
→https://ja.wikipedia.org/wiki/039A%E5%9E%8B%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6
2006年から就航開始している潜水艦で、2000トン級。AIP機関搭載と言われている。
YJ-82潜水艦発射対艦ミサイルが運用可能とされている(中国が売るかは不明だが・・)

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