非伝統分野に焦点「中国安全保障レポート2014」

China-2014-5.jpg1ヶ月以上前のことですが、3月13日(金)に防衛省の防衛研究所が、毎年1回発表(2011年5月が初回)で第5回目となる「中国安全保障レポート2014」を公開しました。防衛研究所のwebサイトで全文を読むことができ、英語版と中国語版も同時発表する力の入れようです。
でもwebサイト上では、「コピペ」が一切出来ないPDFファイルになっています
昨年は春節休暇期間の2月1日(土)に発表され、緊張する日中関係の中、極力話題になるのを避けた発表日の選択でしたが、今年は「日中間の空気感」を反映してか、金曜日の午後遅くの発表とは言え、昨年ほどの「こそこそ感」はありません
第2回目からテーマを絞ったレポートになり、「中国海軍」、「軍は党の統制下か?」、そして昨年は「中国の危機管理」をテーマにしてきましたが、5回目の今回は「多様化するPLA(解放軍)と武装警察の役割」とのサブタイトルをつけ、非伝統的軍事分野に焦点を当てています。
レポートの構成
中央国家安全委員会の設置と背景
人民武装警察部隊の歴史と将来像
●PLAによる災害派遣活動、PKO活動、海賊対処活動
約70ページを「つまみ食い」紹介
China-2014-1.jpg●習近平が設置した「中央国家安全委員会」の実態は不明な部分も多いが、同時多発テロやSARS対処の教訓を踏まえ、戦闘以外の突発事態への対処が課題との認識が広がり、習近平の「総体的国家安全保障観」とも相まって、他の党のどの組織よりも総合的な提言や政策調整を行うものと推定される
人民武装警察部隊(武警)は、鄧小平により1983年にPLAから切り離された。PLAには軍事的任務に集中させようとの意図であったが、宇宙やサイバーを含む複雑な戦いが予想され、非伝統的軍事分野への要求も高まる中、任務を軽減したいとの現実もある。
China-2014-2.jpg武警はPLAに代わり暴動鎮圧やインフラ建設事業を果たすようになり、PLAとの棲み分けも明確になった。武警の役割は最近重要性を増しており、共産党内での地位向上も明らかになっている
PLA陸軍の大幅削減が噂される中、陸軍が地方行政組織と協力して行う災害救援活動は、軍の存在感と必要性を国内に誇示する機会となっている。PLAと地方政府間の協力は深化しており、迅速な事態対応が可能となりつつある。
●一方で、PLAは具体的な活動面で指揮系統で指揮権の独立を主張しているが、行政部門が徐々にその優位性を高めつつある
●PLAは軍が主体となる平時の国際活動を「軍事外交」と称して活発に推進している。軍事外交には、人的交流、安保対話、安保協力、教育訓練、情報発信の5分野がある
China-2014-3.jpg●中でもPKO、海賊対処、海外の災害対処支援に積極的で、国際社会における評価向上や中国に望ましい環境の醸成や、更に軍事能力の強化にも結びついている。特に国連PKOへの参加は、安保理での主権尊重や内政不干渉の原則擁護の強化の狙いを支えている
海賊対処への参加は、海洋権益擁護の考え方に沿うものであり、また「中国脅威論」を沈める狙いも持っている。また中国海軍は同活動で、ヘリ、小型船舶、特殊部隊を用いるなど様々な形式の護衛を採用しており、これを機に遠洋での部隊運用能力向上を意図していることが明白。
●その成果として、インド洋や南シナ海での各種訓練が実施され、日本周辺海域での「機動5号」などのでもその能力が活用されている
////////////////////////////////////////////////////
以上は、当該レポートの「要約」部分の概要です。
China-2014-4.jpg約70ページものレポートですので、細かなデータや史実にも言及されており、いざという時に役立つ資料とも言えるでしょう
防衛研究所は同時期に「東アジア戦略概観」を発表し、その中でも中国は重要な「概観」対象分野ですので、筆者の皆さんは「中国安全保障レポート」との棲み分けに苦心されているでしょう。
高見澤氏が所長を務めていた頃をピークに、防衛研究所の対外発信(少なくともwebサイト経由)は激減していますが、「戦略概観」と「中国安保レポート」では気を吐いています
過去の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回目:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回目:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回目:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回目:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
4月10日発表の「東アジア戦略概観2015」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15

タイトルとURLをコピーしました