新たな脅威を前に指揮統制C2を再考する

新たな脅威、つまり弾道/巡航ミサイルの拡散や、サイバーや宇宙領域での戦いの激化により、軍の通信網や情報共有システムが脆弱となる事を前提として、新たな時代の指揮統制(C2:command and control)を考えるべきだとの発言が、今回の米空軍協会総会(Sept.15-17)で相次いだようです
22日付米空軍協会web記事によれば
Deptula.jpg元米空軍のISR部長で、現在Mitchell Instituteの航空宇宙研究部長を務めるDavid Deptula退役中将は、CAOC(航空宇宙作戦センター:Combined Air and Space Operations Center)は各地域コマンドの航空作戦の命脈となる中枢だが、脅威の変化を受け、如何に部隊を指揮して指揮官の意図を現場に伝えるかを再考すべきであると語った
●Deptula部長は更に、現在のCAOCは湾岸戦争の教訓を元に1990年代の設計で出来ているが、その後のITや通信情報技術の進歩により、高度なハイレベルの指揮活動から現場の戦術作戦に至るまで、「細部にわたる管理:micromanagement」が可能になっていると述べた
●そして、しかし今や相手は、米軍の指揮統制C2が弱点だと狙いを定めており、現状の指揮統制C2再考に懸命に取り組まねばならない状況にあると訴えた
CAOC2.jpg●太平洋空軍の主力をなす第11空軍司令官のRuss Handy中将は、太平洋空軍は演習において指揮統制の分散に重点を置いて取り組んでいると述べた。しかしそこでは、より前線部隊の指揮統制が注目されるべきだと問題認識を表現した
●Handy司令官は、前線部隊と統合指揮官や、構成部隊指揮官との間に関わらず、実戦においては前線と指揮官との間の意思疎通が「曖昧」であってはならないと語った
Mitchell研究所の取り組み
Mitchell研究所は、新時代の指揮統制C2を検討する研究の第2段階を開始したと発表した。研究タイトルは「Beyond the AOC: Command and Control in the Information Age」であり、2015年春に完成する計画。
command and control.jpg研究の第1弾はこの秋にも公開されるが、そこでは指揮統制C2に関する課題を明らかにし、想定される解決策への道筋(flight plan)を示している模様
●Deptula研究部長は米空軍協会機関紙に対し、本研究の目的は指揮統制システム、その概念と組織について3つの視点、つまり新たな脅威、新技術、迅速さを増す情報の観点から検討することになると語った
●研究はMitchell研究所のほかに、米空軍やDARPA関係者、更に軍需産業や学会からの協力を得て実施される。
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中国を相手に考えるならば、被害状況下で戦うことを前提にしなければならないことが、徐々に米軍内にも浸透してきたようです。
米国より、遥かに中国に近い日本の自衛隊が、この点を全く無視していることが不思議でなりません。
本来、防衛力整備のカモフラージュだったはずの「国際貢献」や「災害対処・人道支援」が、いつも間にやら組織防衛に最大活用される日本の今日この頃
Deptula2.jpgまた、領域領空を監視維持し、あたかも平時の安定を維持することだけが軍事組織の任務であるかのように振舞う防衛省・自衛隊の先行きが心配です・・・
ところで、David Deptula退役中将は湾岸戦争で航空作戦計画立案の原動力として働き、空軍が最も華やかだった頃を中佐・大佐として支えた人物です。時代の変化に対応し、今の時代に必要な研究をリードしているご様子に敬意を表します。
Mitchell Instituteのwebサイト
→http://www.afa.org/MitchellInstitute1

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