7日、米海軍トップのグリーナート大将と米海軍の核戦力担当部隊司令官であるJohn Richardson大将が連名で、上下院議長及び両院軍事委員会の主要メンバー等宛に「直訴状」を送付し、核戦力部隊(NR)関連の予算削減が部隊の維持や後継装備の導入を危機にさらしていると訴えました
当該「直訴状」は公開されて軍事メディアを賑わせていますが、議会側は急増する同関連予算の是正をかねてから訴えており、今回の公開書簡が簡単に功を奏するとも考えられません。
また米海軍報道官は同時に、「現時点で核戦力は安全に信頼性を確保して運用されている」と強調しており、単に騒げば良い性格の問題でもありません
更に米空軍も併せた米軍核兵器運用部隊は、部隊の規律や練度の問題(点検時のカンニングや隠蔽体質)が最近頻繁に表面化し、ヘーゲル国防長官が内外複数の対策検討チームに改善策提言を求めている危機的状況にあります
9日付Defense-Newsによれば
(「直訴状」全文も掲載)
●両海軍大将は連名で「過去4年間にわたる米海軍の各部隊関連予算の削減手法では、部隊はこれ以上維持できない」と訴えたレターを上下院議長及び両院軍事委員会の主要メンバー当てに送付した
●更にレターは「NR予算の執拗な削減は、安全で信頼できる核戦力部隊の確保、次期SSBN計画の設計や試験、老朽化が進む現有関連施設や核燃料精製施設の安全かつ責任ある維持を不可能に追い込んでいる」としている
●6月20日に下院予算委員会が明らかにした2015年度予算額では、国全体の核関連予算(NNSA)が約300億円削減されて1.1兆円規模になっており、その内の約1200億円を占める米海軍NR予算が約160億円削減されている
●グリーナート大将らは更に「過去4年間で既に450億円が削減されており、追加の削減は必要な施設の建設維持、研究開発、緊急な部隊問題対処の遅延や停止を更に加速する」と記している
●一方、下院予算委員会は今年6月の報告書で、「現下の財政状況を踏まえ、実現が極めて困難なNR予算の急増を前提とした計画に深い懸念を有している」と指摘し、同委員会として海軍核運用部隊に対し、複数年度に渡る予算要求の見直しを命じていたところである
●米海軍NR報道官はコメントしていないが、米海軍報道官は「更なる予算削減は、我々の部隊維持や新たな計画推進の両立を不可能にする」、「ただし現時点では、原子力推進の潜水艦や空母は安全に運用されている」と語った
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米海軍は次期戦略原潜SSBN-Xやフォード級空母の導入、米空軍はF-35や次期爆撃機や空中給油機、更には次期練習機や救難機等々、現体制を維持しようとすれば購入を迫られる装備品が目白押しです。
しかし強制削減話が出る以前から、若干の国防予算増を前提(夢物語)としても、全ての実施は「到底不可能」が明確でした。
そして今、強制削減は避けられない状況です。仮に強制削減が回避されても、ある程度の国防費減は不可避でしょう。今後このような「直訴状」が、五月雨式に乱発されるのでしょうか?
昨年ヘーゲル長官が行った、削減額を想定したスタディー(SCMR:Strategic Choices Management Review)を基礎にした対応が取られている訳でもなく、A-10全廃だけで紛糾している「混迷」のみが存在するのが現状です。
そのような実態を全て織り込み、主要なシンクタンクが揃って提言するのが戦闘機の削減であり、F-35機数の削減です。
小野寺大臣が8日米国で、「F-35の価格が下がったら追加購入を検討」と発言したそうですが、価格低下など普通に考えてあり得ない話です
関連の過去記事
「ヘーゲル長官がSCMR結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01
「SCRMの基本的考え方」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-04
「4大シンクタンクの予算削減案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30