13日付米海軍協会webが、昨年末に米海軍が提起した「UCLASSに空中戦を補助させる事もあり得る」議論をフォローする記事を掲載しました
12月に「UCLASSの空中戦補助もあり得る」と語った米海軍航空作戦構想の担当将軍Mike Manazir少将の発言に、米空軍幹部がコメントする形の記事ですが、その中身があまりにも「空中戦命」&「パブロフの犬」的なので、驚きを超えて「哀愁」を感じてしまいました。
いま各軍の研究機関や民間シンクタンクが、つまり、非戦闘機パイロットが勇気を出して語り出している「脅威の変化」を、将来計画を立案して決定する立場にある指導層が全く認識していない、又は無視している様子が伺えますのでご紹介します
米海軍航空作戦構想の担当Manazir少将の発言
(昨年12月→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24)
●UCLASS(無人艦載ISR攻撃機)は、文字通りISRや攻撃を主に構想が進められているが、「空飛ぶミサイル発射装置」としてFA-18E/FやF-35Cの補完にも活用することが可能だろう
●可能な限りの空対空ミサイルAMRAAMをUCLASSに搭載し、意志決定者であるFA-18やF-35と共に可能な限り進出し、又はE-2Dの遠隔操作を受け、作戦を行うことが考えられる
上記発言に米空軍の無人機専門家は
(Michael Pietrucha予備役大佐:F-15パイロット)
●Manazir海軍少将の発言は決して夢物語ではない。有人戦闘機には可能だが、状況判断や優先順位決定等が無人機に出来ないことが課題だったからだ
●この課題への解決法として、海軍は有人機が自身やネットワーク情報を通じて発見・識別・追尾した目標を、無人機に引き継ぐ手法を具現化しつつある。
●データリンクを通じて空中状況を複数の空中アセットが共有するNIFC-CAと呼ばれるこの米海軍のコンセプトは、米空軍より進んでいる。
●NIFC-CAコンセプトでは、シューターは別アセットのセンサーが追尾する目標に対し攻撃を行う。有人機のミサイル運搬役である無人機に、目標を示してやるのだ
●このようなUCLASSの活用には不利な面もある。F-22やF-15CがAMRAAMを使用する際はその射程を最大限に伸ばすため、高高度を超音速で飛行して発射する事を作為する。でもUCLASSは亜音速機で高高度も飛行せず、FA-18がそうであるようにAMRAAMに最大限のエネルギーを与えられない。
●しかしこの不利点は克服不可能ではない。実世界ではAMRAAMの大半は中高度の亜音速状態から発射されているし、亜音速の無人機でも一定の条件下では有利な条件下に立つことが出来る
●また例えば、無人機を従えた有人戦闘機が敵機に対しミサイル射撃に不利な位置にあった場合には、僚機であるミサイル搭載無人機に射撃させる事も出来るし、無人機に敵機のレーダー追尾をさせて有人機が離脱することも可能となろう
●無人機は敵との空中戦に脆弱だろうが、編隊長である有人機が、厳しい状況で人命を気にせず無人機を犠牲にして生き残ることも出来るだろう。
●しかし、超音速飛行が可能な無人機を有人機と共に戦わせることはないだろう。そのような無人機は高価すぎると思うからである。特に必要な推進装置や燃料搭載量に見合う機体価格を考えれば、費用対効果に見合うか疑問である
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昨年12月に、米海軍の航空作戦構想を担当するManazir少将の発言を紹介した際も、無人機の可能性から目を背け、「戦闘機命」や「空中戦命」が伺える語りぶりに違和感を感じましたが、米軍内にはしっかり根付いているようです
中国軍は空中戦で米国や同盟国軍に挑もうとしているでしょうか? 弾道&巡航ミサイルによって地上で戦闘機を破壊するか、電子戦やサイバー戦で敵航空戦力を無効化する事を狙っているのではないでしょうか?
このような中国軍の姿は、日本の防衛白書を除く、ほぼ全ての外国研究機関やシンクタンクが大前提としているところです。→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
空中戦(air-to-air combat)の可能性が「ゼロ」とは言いませんが、敢えて大きな声で議論するに値しないと思います。巡航ミサイルの迎撃に拘っている「哀れな」戦闘機命派も存在しているようですが・・・
ロバート・ゲーツ語録
→皆に気づいて欲しい。空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手を撃墜していない
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
「UCLASSで空中戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24
「米海軍のNIFC-CAとは?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「脅威の変化を考えよう」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「UCLASSの要求性能復活?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14
「夢しぼむUCLASS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-21
あれやこれやの制約はありますが・・・
「日本の防衛力整備を考え直そう」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27