24日付Defense-techが、米海軍の次期戦略原潜SSBNの計画状況について関係者の話しを紹介しています。この春には主要な仕様や性能を含む詳細な文書を米海軍とGeneral Dynamicsがまとめるようで、概要のイメージを「Military.com」に語った模様です
現在SSBNは、1981年から就航を開始し、18隻目の最終艦が1998年に任務に就いたオハイオ級が活動していますが、内4隻は巡航ミサイル潜水艦SSGNに改修されています
もともと米海軍は2029年に次期SSBNの1番艦を就航させる計画でしたが、オバマ政権は予算不足を背景に2013年度予算審議時に、1隻5000億円とも言われるSSBN-X計画の2年先送りを決定しています。
それでも2021年には建造を開始しないと、試験や訓練期間を含めて2031年の運用開始には間に合わないそうで、600ページに及ぶ次期SSBNの細部仕様書の取り纏めが佳境に入っているようです。
ORP:Ohio Replacement Program計画について
●米海軍とGDのElectric Boat部門は、次期SSBNの細部設計と諸計画を含む600ページの文書の最終取りまとめに入っている。初期のプロトタイプ製造も企業内で始まっている
●米海軍幹部は「同文書には、技術面や設計面の細部のほかに、システム設計や乗員の養成計画等を含む総合的な計画が記載されている」と説明した
●全体には、全長560フィートの艦に16本のトライデントⅡ-D5ミサイルを格納する発射管が装備される模様。よりステルス性を備え、静粛性にも優れたものになる
●現役のオハイオ級と全長はほぼ同じだが、発射管が24本のオハイオ級に比して、発射管数が少ない。(まんぐーす注:恐らくSTARTⅡ条約でSSBN弾頭数が1750発に制限されており、これで十分)
●従来は、潜水艦の胴体を製造してから発射管用の穴を開けていたが、次期SSBNでは当初から発射管スペースを組み飲んで胴体が製造され、工期や経費を削減する予定
●また、米国と英国が共同でミサイル発射管や関連装置を購入し、価格低減効果を狙っている。米海軍は発射管16本のSSBNを12隻、英国は12本のSSBNを4隻建造予定である
●更に次期SSBNは、攻撃型原潜SSNバージニア級に使用された最新技術を多数活用して建造される。「fly-by-wire」操艦システムや舳先の最新ソナーもその一つ
●また最新SSNの通信システムやアンテナを採用し、潜望鏡は光ファイバーとカメラを使用したものとなる。これにより、潜望鏡映像を使用する指揮所の位置を柔軟に設計可能となる
●動力源となる原子炉は、オハイオ級より強力なものとなり、42年間燃料交換が不要になる。これにより燃料交換のための修理期間を短縮することが出来、稼働率が向上ため、現有14隻から12隻への削減も可能になる
現在のSSBN運用をお勉強
●SSBNは出港後、待機する海域まで航行した後はひたすら海中に身を潜め、いつでも核ミサイルの発射が出来るように待機。1回の航海は以前は60日程度だったが、オハイオ級では居住性が若干改善され90日程度まで可能とか。
●SSBNの待機場所(海域)は軍事機密であり、非公開。任務に当たる艦ですら、詳細は艦長を含めた数人しか知ることはない。ただ搭載ミサイルの射程が十分あるため、米本土に比較的近い太平洋や大西洋、北極海などで待機していると思われる
●SSBNには2組のクルーが用意されている。航海日数は乗員の忍耐が制約条件。オハイオ級でも1組が70日間の航海を終えると約1ヶ月の艦整備などを行い、その後他の組が70日間の航海に出る
●定期整備と燃料棒交換のため、約10年に1度は1年間ほどドックに入る。このため実際可稼働率は60%程度であり、現在の14隻体制では常に任務可能なのは8隻前後となる
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「$5 billion per boat以下に抑えたい」と書いてますので、5000億円で価格は間違いないです。ですから新型空母フォード級とあわせ、予算を同やりくりするかが大問題です。単純に考えて無理です
70~90日間、海の中でじっと待機を続ける「仕事」とは・・・。最近、米空軍のICBM部隊で規律の緩みや試験での不正行為が発覚し、大きな問題となっていますが、SSBN部隊は大丈夫なんでしょうか?
秘密に包まれた部隊ですので、実態がどうなのかとても気になります。
米潜水艦関連の記事
「攻撃潜水艦SSNの将来」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-28
「バージニア級SSNの内部映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10-1
「米潜水艦への女性配置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-20