26日、オバマ大統領が2014会計年度(13年10月~翌年9月)国防権限法に署名しました。この法律の中で、議会は国防省に「F-35開発の最大のリスクの一つ」といわれているソフトウェア開発の状況調査を命じているようです
大幅に開発が遅延している中にあって、「開発が順調になってきた」との報道が先行するようになってきたF-35ですが、外野から見ていると「いつ、誰が、どの軍種が調達機数削減の言いだしっぺ」になり、価格高騰→海外パートナー離れ→更なる価格高騰→更なる調達の遅れ→等々の「死のスパイラル」の引き金を引くかを固唾を呑んで見守っている感が漂っています
それはさておき、今年最後のF-35ネタとして、「ソフト開発遅延状況調査」についてご紹介します。中身はありませんが・・・
26日付Defense-Tech記事によれば
●Frank Kendall国防次官(調達取得技術担当)は、2014会計年度国防権限法に基づき、F-35戦闘機のソフトウェア開発の遅れに関する調査報告を、来年3月3日までに議会に提出するための特別調査チームの編成を命ぜられた
●F-35のソフト開発は、米会計検査院も国防省のF-35検討室長もが「その複雑さから最もリスクが高い開発分野」だとみなしてる部分である。
●F-35に必要なシフトウェアは800万行といわれており、F-16の200万行や他の4世代機の100万行と比較して圧倒的に多くて複雑である
●ロッキード社のSteve O’Bryan担当副社長は今年6月、社内の別の部署、例えば宇宙や艦艇部署等から新たに200名の技術者をかき集め、約100億円を投資して第2のソフト開発拠点を整備したと語っていた
●その新拠点では、24時間体制のシフト勤務でソフト開発と試験と修正作業が行われているらしい
●それでもソフト開発は遅れており、海兵隊と空軍は部分的な能力発揮しか出来ないソフトで、それぞれ2015年と2016年にとりあえずの運用開始を決定しており、完全なソフト完成を待つ海軍は2019年の運用開始まで待つことになる
●完全バージョンのソフトは「3F」といわれるが、F-35機体の内外に装備するJDAMやPaveway II bomb、AMRAAMやサイドワインダーを運用可能にするものである
BogdanF-35計画室長はソフトに関し、
●中間段階の「2B」や「3I」ソフトの開発にはある程度の自信を示しているが、「3F」ソフトを予定の2016年から17年に仕上げる点に関しては「less confident」
●また別の問題として、地上配備装置のソフトにも1000万行のプログラムが必要である
●「3F」ソフトでは機体に860万行のプログラムが必要だが、約30万行が未作成である。その中身からすれば、この30万行は決して容易な量ではない
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F-35以前の問題として、強制削減問題がクローズアップされた2013年後半でしたので、なんとなく「問題が快方に向かっている」との印象を持っている方もいるでしょうが、本質は何も変わっていません
むしろ、冒頭で申し上げた「死のスパイラル」への「チキンレース」が開始されたと見るべきでしょう
もっと身近に視点を向ければ、F-35の不安定さに振り回され、本質的な日本の防衛体制議論になんら有効な提言やリーダーシップを発揮できず、陸上自衛隊に増員を許してしまった我が空軍の姿が、「亡国のF-35」ぶりを良く表現していると思います
「亡国のF-35」カテゴリー記事80本以上
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1
皆様、良いお年を!