米中経済安全保障委員会の中国軍事力分析

US-China Eco and Sec Commission.jpg11日付Defense-Newsが、米中経済安全保障委員会(USCC:US-China Economic and Security Review Commission)による議会提出レポートの原案を入手し、中国軍事力に関する部分を紹介しています
USCCは米議会が2000年に設けた委員会で、上下院が指名した12名の専門家で構成されており、通年で有識者を招いた公聴会や検討会を行い、毎年議会にレポートを報告することになっています
台北発の11日付Defense-News記事は「early draft」と断りつつも、中国の潜水艦関連(SLBM、SSBN、SSGN)、巡航ミサイル搭載新型爆撃機H-6K、空母「遼寧」等関連の情報を伝えています
「early draft」に含まれる中身は・・
空母「遼寧」の動向
j15-5.jpg●中国海軍艦載機J-15(ロシアのSU-33を原型)が2012年11月に「遼寧」で初めて発着艦に成功し、今年6月には第1期生の操縦者と地上誘導員が資格を付与された。更に9月には空母甲板上での運用要領を定めた模様
●中国海軍は、2015年から16年までは短期間の出航訓練や空母での発着艦訓練を行い、中国発の空母用のJ-15飛行部隊を作戦可能状態に仕上げたいと考えている
SLBM・JL-2とJin級SSBN
●約7200kmの射程を持つと推定され、Jin級SSBNに搭載される中国初の信頼性ある本格的SLBMのJL-2が、本年末には初期運用状態(IOC)になる
●中国海軍はJin級SSBN(Type 094)を3隻就航させているが、2020年までに更に2隻が加わる見込み
新型ミサイル原潜
●中国海軍は新たに2種類の原潜を追求する模様
Type 095としてミサイル原潜SSGNを、また新たなSSBNとして「航続距離や機動性や静粛性を高めた」Type 096を導入し核抑止力を強化する計画がある
●なお、中国軍は海上発射型の対地攻撃巡航ミサイルを保有していないが、中国海軍はType-095 SSGNとLuyang-III級ミサイル駆逐艦に搭載用の同ミサイルを開発している
H-6K.jpg巡航ミサイル搭載の新型H-6K爆撃機
●今年6月、中国空軍は対地攻撃巡航ミサイル(DH-10改良型:射程約1000km)を搭載可能な新型爆撃機H-6K型を15機導入した。
●これにより中国空軍は、西太平洋地域全域の通常攻撃能力を獲得したことになる
対艦弾道ミサイルDF-21D
●中国軍はDF-21Dの射程延伸に取り組んでいる。射程約1400kmで、現在でも既に太平洋上の米海軍艦艇の脅威となっている。ちなみにグアム島までの距離は中国から約3000km
結論部分の概要
●(オバマ政権が米中関係改善に努力する中で、)中国は同地域周辺の米軍や同盟国の基地、艦艇、航空機を攻撃する能力を、急激に拡大させながら多様化させている
●このまま中国が軍拡を継続すれば、今後5年から10年で、数十年にわたり米国の優位を脅かし、アジアにおける軍事バランスを転換する事になる。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
SLBMのJL-2が本年末に運用開始になるとは初耳です。本当でしょうか?
(以下、「海国防衛ジャーナル」記事を参考にしました。図は借用)
JL-2の射程7200kmは「中途半端な」距離で、中国近海から発射した場合、アラスカをかすめる程度で米本土には到達出来ません。射程を10000kmに延伸しても、米本土の4割程度しかカバーできません。
JL-2 Range.jpgまた、JL-2が現在の性能で米国本土を射程に収めるためには、Jin級SSBNは中国近海を遠く離れ、第2列島線突破して東経160度近くまで進出しなければ西海岸の主要都市にさえ届きません
一方、渤海や黄海は中国のSSBNにとって「聖域」とするには水深が浅く、好ましい作戦海域ではありません
また、南シナ海へ配備すれば、米本土への距離が更に遠のきます。
ソ連にはバレンツ海やオホーツク海という戦略原潜の「聖域」がありましたが、中国の地理環境ではそう都合良くもいかないようです
ミサイル原潜SSGNやH-6K、DF-21D等、弾道や巡航ミサイルには引き続き注意が必要です。脅威の「真打ち」の一つですから。特に「戦闘機命派」の皆さんには声を大にして言いたいです!

タイトルとURLをコピーしました